第52掘:お仕事割り振り問題

お仕事割り振り問題



side:フィーリア



私は今、妖精族の長老、ナールジアさんに一緒に鍛冶の仕方を教えてもらっています。

感激です!!

妖精族というのは、ドワーフと一緒で物作りが得意な種族です。

そして、特殊な方法で、武具に魔術を込めて、エンチャント武具が作ることができるのです。


私は残念ながら、親の事は全く覚えていません。

だから、ドワーフとしての鍛冶ができるわけではないのです。

兄様は私に期待してくれているのですが、何もできないので申し訳ないです。


ですから、ナールジアさんに鍛冶を教えてもらって、兄様の役に立つんです!!

そして、兄様の赤ちゃんを生むんです!!

アスリンちゃんは人族なので、体が小さいと子供をつくると危険ですが、ドワーフ族は比較的小柄で子供を生みます。

ですから、アスリンちゃんよりも先に、私は兄様の欲情を受け止められるのです!!

兄様は優しいですから、きっと抱きしめるように、色々してくれるに違いありません。


でも、実際は兄様は私達を性欲処理に使ってはくれません。

興味がないのかと思ったのですが、違うんです。

兄様が寝た頃にこっそり、兄様の大事な所を触ったんですが、私の手で大きくしてくれました。

そのあと、ラビリスちゃんが気が付いて、そのままだと可哀想だから鎮めないと、と言って一緒に兄様のを楽にしてあげました。

変な味でしたが、兄様のモノと思えば嬉しいです。

今度は兄様に直接、言ってもらえる日が来るといいなと思います。


だから、とても不思議でした。兄様はなんで私達に手を出さないのかって。

そしたら、ラビリスちゃんが「ユキは私達を守ることで精一杯なの、私達が少しでも成長すれば、安心して私達を愛してくれるわ」って言ってました。

なるほど、ラビリスちゃんの言う通りだと思います。

今の私達は、他のお姉ちゃん達と一緒で、兄様に大事に守られている状態です。

私達3人だけじゃなく、他の6人、そして新しく来た57人も兄様が心血注いで大事に守っているのです。

そんな忙しい状態では、兄様は私達にそんな事をしている余裕はないです。

ならば、私は今回の妖精族さんの手を借りて、兄様の負担を減らすんです!!

そして、遠慮なく私達を愛してもらうんです!!


あ、でも兄様の欲求は、ラビリスちゃん、アスリンちゃん、ラッツさんと一緒に、ほぼ毎日解消してあげています。

ラビリスちゃんに睡眠の魔術を使ってもらって、兄様がぐっすり寝たあとですけどね。

だって、そうしないと、自分で処理しちゃうって、ラビリスちゃんが言うんですよ!!

そんなのはダメです!! 兄様の赤ちゃんのモトをティッシュなんかにあげません!!

そんな風に扱うことは兄様でも許しません!! せめて、私達のお口に出すべきです!!

もういっそ、兄様のを中にと思ったのですが、ラビリスちゃんに「ユキが驚くからやめなさい」っていわれてやめてます。

そうですね。知らないうちに、赤ちゃんができましたって言われるとびっくりします。

私も気が付いたら、兄様の赤ちゃんができていたって言われると、少し不満です。

そういうのは、ちゃんと意識があるときに、兄様にしてもらいたいですし…。

でも、今日も夜は兄様のをペロペロするんです!! 楽しみです!!


「大丈夫? フィーリアちゃん」


気が付いたら、ナールジアさんが私の顔を覗き込んでいました。


「あ、すいません。大丈夫です!!」


いけない、いけない。今は鍛冶のお仕事を習っているのに。

今、兄様の予定通りに、お仕事説明のあと、軽い実習になったので、鍛冶のお仕事の皆についていってるんです。


「そう? 無理しないでね? ユキさんから、過保護かとは思いますがよろしくって言われてるから」

「もう、兄様!!」

「ふふふ…、その様子なら大丈夫ね。でも、ユキさんが言ったように、才能があるみたいね。何も知らないはずなのに、熱い鉄を打つのに躊躇いがないって、ある意味、ドワーフの血ってところかな? 普通は初めてなら、恐る恐るになるんだけどね」


ナールジアさんは、鉄を打つ私をほめてくれます。

でも、私としては普通なんでよくわかりません。

早く、兄様が出した、刀を作ってみたいです!!


「……鍛冶というのはね。作るモノに心を乗せるの。よくわからないだろうけど、私にはわかるの。多分魔力に感情がのるからかしらね? フィーリアちゃん、落ち着いて。貴女がユキさんの為に早く立派になろうという気持ちはわかるわ。でも、モノを作るからには、一つ一つ疎かにはしてはいけないわ。今振り下ろす槌には思いが心が乗っていない」

「……ごめんなさい」

「いいのよ。ちゃんと覚えていきましょう。それが、きっと、ユキさんの為になるから」

「はい!!」


それからしばらく、時間を忘れるぐらい、没頭して槌を振るいつづけて、ナールジアさんに言われてはじめて、手を止めました。


「そういえば、今日はユキさん見ないわね。フィーリアちゃん知ってる?」

「はい、兄様は今日は朝から、ルルア様の御手伝いに行ってるんです」


帰り道すがら今はいない兄様のお話になる。


「ああ、そういうことですか。それは、大変ね。どうしようかしら、明日にでも話すべきかしら」

「何かあったんですか? 大事な事なら兄様に話しかければ済むことですよ?」

「そうねー、フィーリアちゃん。ちょっとお店に行きましょうか」


私はそのままナールジアさんと一緒に、ラッツさんが本日店主を務めている「スーパーラッツ」へ移動しました。

スーパーラッツは、色々な食料品や雑貨が置いてある便利なお店です。

というか、他のお店は、訓練所の購買以外開いていません。だって、人手が足りませんから。

スーパーラッツはお店にしては、私が知りうる限り今まで見たこともない大きさです。

だって、お店って一軒家を改築したぐらいでしょ?

でも、このスーパーラッツはお兄ちゃんが言ってた通り、スーパーの名の通り凄く大きなお店です。

4・5軒の分の広さを取って、所狭しと商品を置いています。

泥棒されないかと心配しましたが、レジ? というところで、バーコード? を通して、お金を支払わず外にでると、強制パラライズになるので、盗まれる心配はありません!!


そんな事を考えていると自動ドアが開いて、店舗の中に入ると…。


「わーすごい!! これ美味しそう!!」

「ねえ、冷凍食品だって、何だろう?」

「それは、昨日言われたでしょう。部屋にあるでんしれんじでチンするのよ」

「凄いよ、この紙真っ白だ!!」

「こっちも見てよ、ペンの色が黒じゃないよ!?」


うわー、仕事時間を終えた妖精族さんがお買い物にきて、店内は溢れかえっていました。

殆どの妖精族さんが来てるような混雑です。

あ、そうそう。お買い物のお金ですが、ダンジョンに貯蓄してあった残りを出して、金銭の使い方を実感してもらおうということで、一人あたり銀貨5枚を渡しています。

ですので、お買い物は問題なくできるわけです。


「はい、会計はこちらに並んでください!!」

「ミリー、商品がないわ!! どこだっけ!?」

「チョコレートは倉庫の左手……!!」

「はい、お会計は13フォル。銀貨1枚と銅貨3枚になります」

「あわわっ!!」


みんな忙しそうです。

私が鍛冶に興味があったのはみんな知っていたので、なにも問題なく私を送り出してくれたのですが…。

今日、店舗を切り盛りしているのは、ラッツさん、エリスさん、ミリーさん、ラビリスちゃん、アスリンちゃんです。

トーリさん達は訓練所のお掃除や、晩御飯の準備、購買のお店番とそれぞれで忙しいです。


「あらら、やっぱりこうなりましたか」

「わかってたんですが?」

「うーん、薄っすらとですが。ここって外とはまるで違うでしょう?」

「はい」

「それで、初めてのお買いもの。外から来た人は、とても楽しみになるわ。このダンジョンの凄さを知れば知る程。でも、ある意味よかったわ」

「え? どうしてですか?」

「これから、ロシュール国の人が300人も連れてくるんでしょう? それでこのままだったら、ラッツさん達が倒れちゃうわ。これは仕事の選択を自由と計画してはいましたけど、しばらく安定するまでは、絶対の人員を確保する必要がありますね」

「なるほど」


ナールジアさんの言う通りです。妖精族さんのほとんどは、鍛冶やモノづくりに行きたがるはずです。

でも、それではお店や、お風呂屋さんなどを動かすための人手が全く足りません。

これでは、300人以上の人が来た時に回らなくなってしまいます。

これは大変です!! みんなが倒れちゃったらダメです!! 兄様に相談しないと!!


「さあ、私達も手伝いましょうか? フィーリアちゃん、あのレジだっけ? できる?」

「使えますけど、お金の計算ができません…自動でしてくれるのですが、それでも、自分でできる方が安全って兄様が……」

「大丈夫よ。私が計算するわ」

「わかりました!! ラッツさん!! ナールジアさんが手伝ってくれるのでもう一つレジ開けますね!!」


そうやって、声をかけて初めてラッツさんは私に気が付いたようです。


「おお、フィーリアちゃん。お帰りなさい。それとありがとうございます!! じゃそこの2番レジ開いてください!! エリス振り分けを!!」

「はい、皆さん。こちらのレジが開きますので…自分の判断でこちらのレジに移ってください!!」


私がレジを開くと沢山の妖精族さんが、カゴに沢山のお菓子を入れてやってきます。


「さあ、頑張りましょう」

「はい!!」



そして、なんとかお店を閉めて、晩御飯を食べて、兄様に今回の事を報告しました。


「あ~、やっぱ無理があったか」

「ですね~。予想以上でしたよ。お兄さんが言ったスーパーは集客率はトンデモないですが、人手が全く足りません。これが妖精族のみなさんのおかげでわかったのは、御の字ですね。300人が来た時にこの状態でしたら、もう私は御布団で寝てますね。絶対」


ラッツさんはとてもお疲れのようです。それもそのはず、あの後お店が閉まった後も、品出しとか、売り上げの確認をしていましたから。


「そういえば、言ってた方はどうだ?」

「それですね。防犯機能のおかげで泥棒はいないのですが、私達がレジを通し忘れで、被害にあった人が3人ほど。申し訳ないことをしましたよ」

「それは、本当に申し訳ないな。あとで俺からも謝っておこう」

「いえ、それには及びません。私の方から言い含めておきましたから」

「それはどうも、ありがとうございます長老」

「お会計については、今のところ、違算はありません。自動計算は間違えないからですね。あるとすれば、お会計が細かくなれば間違うかもしれませんが…」

「それは今後とも様子見だな。忙しいときや気が抜けた時に大抵、数え間違いして渡したり、貰ったりするからな」

「ええ、そこはどうしようもないですね。なるべく意識を高くしてもらうしか」


ほっ、お金に間違いはなかったようです。

ナールジアさんに手伝ってもらってよかった。


「じゃ、当面の問題は人員か~。対策として思いつくのは二つ。一つ、お店に行かせる人数を制限する。二つ、申し訳ないが、妖精族の方から、ほぼ強制で店舗の店員になって貰うかだ。どうでしょうか、長老。私としては、今人員が、妖精族にありますのでご協力願いたいのですが……」

「はい、私といたしましても、今回の御恩に報いる、いいチャンスと思っておりますので否はありません。しかし、少し条件を付けていただきたい」

「何でしょうか?」

「お恥ずかしい限りですが…、あのお店で、いただいた銀貨、及び個人所有のお金を使い果たした馬鹿者が多数いまして……今後、仕事する人には日給という形で、給金を支給してほしいのです。そちらの財政は理解しています。今回の件は私が甘く見ておりました。申し訳ない」

「…あー、ラッツ。今日の売り上げは?」

「はい、売り上げは8561フォル。白金貨8枚、金貨5枚、銀貨6枚、銅貨1枚の計算ですね」

「…確かこちらから支給した金額は…」

「そちらは、一人あたり銀貨5枚。57人分ですから、2850フォル。白金貨2枚、金貨8枚、銀貨5枚ですね。支給した金額を差し引いても、5711フォルは妖精族のみなさんが自腹を切ったということになります。一人あたり約100フォル。金貨1枚は本日使い込んでますね」

「ぶっ、そりゃ無茶苦茶だな」

「ええ、わざわざ買いにくいように、高めに金額設定したのに躊躇いなどもありませんでした。お金持ちなんですね~、妖精族って」

「はぁ~、お恥ずかしい限りですが。それで散財した馬鹿者が、いつ入るかわからない給与を待つというのは、自業自得ではありますが…」

「それは、それで不満になりますね」

「その通りです。給与が支払われないという、事実を指摘して、今後に悪い影響があるでしょう」


兄様達がなにか難しいお話をしています。

でも、今日は結構嬉しいです。

なぜかというと、私達3人の中ではあるルールがあります。

兄様の御膝の上は、3人で順番に座るようになってるのです!!

今日はその日!! 兄様はお話しながら私の頭を撫でてくれます!!

とても気持ちいいです。ですから今夜はしっかりお返しをするんです!!


「とりあえず、明日からの、給与を決めないとな…」

「でもお兄さん。基本は月給を目指しているのでしょう? 説明も行いましたし…」

「それなら、もう給与計算はしているということで、今回散財した馬鹿者は来月まで待つ方針にして…」

「……なら………で、その……」


ふぁ、なんか眠くなってきました。

兄様のお声が遠くなっていきます。

ねちゃダメなのに…。

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