落とし穴2掘:温泉の醍醐味

温泉の醍醐味


side:リエル



「よっ」

「はっ」


今、旅館の遊技場でミリー、エリス、トーリ、それと私で卓球をして遊んでいる。

お風呂上りのちょっとした娯楽だ。

いや、贅沢だよね。

普通宿屋なんてご飯食べて寝られれば上出来。

安宿なんてご飯もないし、ほこりまみれのベッドだったりするのに、この旅館は遊技場まであるんだ。

ここを使いたい放題なんて、ちゃんと後片付けはしないといけないけど。


「そこっ!!」

「うわっ!?」

「はい、エリスポイント」


審判役のラッツがそう告げる。


「あちゃー」

「リエル油断は大敵です。本日のシーザーサラダを半分いただきますよ!!」

「うわー、本気だねエリス」

「勿論です。シーザーサラダを本日リクエストして何とか押し込んだんです。その好物が本日増える可能性があるのなら、私は手加減なんてしません!!」

「お肉も好きじゃないかったけ?」

「ステーキもまたよし!! しかし、シーザーサラダには及ばず!!」


エリスがそう言って胸を張る。

プルンとサイズが大きい胸が揺れる…ちっ。


「ええい、エルフ族の癖に変に胸が大きいよね!! あの種族ペッタンコでしょ普通!!」


そう言って力を込めてサーブをする。


「べ、別に大きいのが少ないだけです。私はちゃんとエルフ族ですよ!!」

「偽物だ!! その胸は偽物に決まっている!! 私の胸がこんななのは、エリスの胸が大きくなったせいだ!!」

「む、むちゃくちゃいいますね!?」


憎しみを込めて弾を打ち返す。

そしてそれをエリスが打ち返す。

そのたびに、エリスの浴衣の中に隠れている、綺麗な膨らみが揺れる。


たゆん、たゆん。


たぷん、ぷるん。


「むきっーーーー!! そんなの脂肪なんだからね!!」

「何を逆恨みしてるんですか!?」


悔しい、僕はなんでペタンコなんだろう。

胸が不要に大きい相手が憎い!!


「なにかリエルは憎しみがこもってるね。なんでだろう?」

「あー、トーリは私の胸みてどう思う?」

「ミリーさんの胸ですか? 大きくて、柔らかそうで、女性らしいと思います」

「……えーと、そういう素直な感想ではなくて、こう…嫉妬とか憎しみ湧かない?」

「?」


横では僕達の会話をみて首を傾げるトーリ。

その答えを聞いてエリスよりも大きい胸を持ったミリーは苦笑いをしてる。

そうなんだよ。トーリってば純真すぎて私の悩みが分からないみたいなんだ。


「ラッツどう説明したもんかな?」

「んー、そうですね。トーリ、私も貴女より、胸は大きくて形がよく感度がいいと自負しております。つまり、胸が大きいというのは、女性として優れているという意味なのです」

「はぁ、そうなんですか?」

「まあ、一般的にはそうなんです。つまり、それから照らし合わせると、リエルは女性として劣っているのに、悔しく思っているわけです」

「ああ、なるほど。でも、胸が小さいと、子供が生まれた時おっぱいが出ないなんて事ないですよね?」

「……それは、おっぱいが出ないのは、別の問題ですよね」

「なら、私は体型の差でそんな事は思いませんね。きっと私を愛してくれる人は、私の全てを受け入れて好きになってくれますから。体型も含めて、その人が愛してくれるなら、私は無理に体型をかえようとは思いませんよ」


ほら、この通り。

もう、きらきらの純真。


「わかった。わかったよ!!」

「えーい、何がですか!?」


エリスは打ち返しながら聞いてくる。


「トーリがそんなに余裕があるのは、僕よりもおっぱいが大きいからだね!!」

「ええ!?」


エリスでなく、トーリが慌てた様子を見せる。


「ほとんど錯乱してますね。リエル」

「まあ、気持ちはわからないでもないけどね~」


ラッツとミリーは苦笑いしつつも止めようとはしない。

二人はなんとなく私の気持ちが分かるみたい。


「あの、リエル。私なにかまずい事でもしましたか?」


トーリは不安げだ。

ああ、あとで謝っとかないと。


「隙あり!!」

「うわっ!?」


ペチン。


そんな音を胸に当たってだして、床に転がる球。


「リエル、貴女のいいたい事はよくわかります。私もエルフの里にいた頃はよく妬まれましたから。ですが、大きくてもあまりいいモノではないのです。厭らしい男の視線が集まりますし、防具も選ばないといけない、肩もこるんですよ?」

「うるさーーい!! そんな贅沢な悩みは聞く耳ないよ!!」


僕はすべての憎しみを込めて球を打ち込む!!


「きゃっ!?」


エリスは反応できず、球はエリスの胸に直撃する。


ぽよん。


「…」

「これで、同点ね」


コロコロと、僕の足元に球が転がってくる。

君(球)僕に当たったとき、そんな音出してなかったよね…。


「えーと、リエル続きしないの?」

「うわーん!!」


僕はそう言って遊技場を飛び出した。


「リエル!?」

「…まあ、今のはエリスが悪いですね」

「…だよね。とどめさしたね」

「えと、何がいけなかったのかな?」


遊技場でそんな声が聞こえる。

おっぱいなんて、おっぱいなんて!!

とりあえず、個室で少し頭を冷やそう。



「……ん? リエルか今の?」

「…そうね」

「リエルお姉ちゃん、廊下は走っちゃあぶないよー」

「兄様それより、今日はエリス姉さまの希望でシーザーサラダつくらないと」

「ああ、そうか。今日も頑張って料理しような」

「「うん」」

「…なんとなく、リエルの事情はわかるけどね。彼女以下ってアスリンとフィーリアだから…」



その日、エリスはシーザーサラダを沢山食べて、リエルは皆からステーキを分けてもらって、また飛び出したり出さなかったりw

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