落とし穴1掘:寿司くぃね!!
寿司くぃね!!
side:ユキ 本名:カズヤ・トリノ
「鮪!!」
「烏賊!!」
「貝柱!!」
「鯖!!」
「鮃!!」
「あの…たまご…」
「えーと、エビフライが乗ってるのを兄様!!」
「…私はこの、あら汁? がいいわ」
「イクラの軍艦巻!!」
「大トロ!!」
「稲荷寿司!!」
今俺は、寿司屋スタイルで我が家のひな鳥達に、寿司を握っている。
正直やっちまった。
あ、俺は今まで寿司屋でバイトしたことも、弟子入りしたこともない。
あれだ、こう、家庭で寿司パーティーなるものをやるついでに、実際に注文票を作って変に凝ってみたんだ。
そしたら、初めて寿司を食べた皆は大絶賛。
注文の嵐で、俺はひたすら寿司を握るはめになった……。
ああ、あの時の俺を殴りたい!!
数時間前
「いやー、正直毎日毎日、食事の時間が待ち遠しいですよ。お兄さん今日は何を出してくれるんですか?」
ラッツと旅館へ帰る際に合流して、晩御飯の話をしていたんだ。
「そろそろ、ネタ切れなんだがな…」
「そうですかー。ま、今まで出たものが出ても十分に美味しいですが」
「ん、ネタ切れ…。あ、ネタね!!」
そうやって俺は、とてもいいことを思いついて、頭に電球が光ったような感じがしたんだ。
だが、それは俺の首を絞めることになる。
「ラッツ、皆を宴会場に集めておいてくれ。俺はちょっと準備してくる」
「おお、何か美味しいモノでも思いつきましたか? 任されました。責任もって皆を呼んできますとも!!」
俺は、只調子に乗っていた。
だから気が付いてなかった。
俺しか寿司を知らない。つまり作れるのは、俺だけなのだ。
それなのに、わざわざDP消費してまで、刺身包丁を数本、あの寿司屋にあるネタを見せる為の展示冷蔵庫? と、専用のまな板、海苔、各種ネタを後は切るだけの状態で数多呼んだ。
電子ジャーをフル稼働にして、沢山のご飯を炊いて、お約束の酢飯も作りましたとも!!
シャリこそ寿司の命!!
あ、本場の人ごめんなさい。言ってみたかったんです。
まあ、そんな感じでノリノリで準備していったんだ。
今思えば、もう出来てるのDPで呼べばよかったじゃんと思う。
だけどあの時は、自分でやるべきだと思ったんだ。
だって、寿司は日本の心だろ!?
そして、運命の瞬間が訪れたんだ…。
宴会場に来た皆は俺の姿や、周りにある道具に目を点にしていた。
「ありゃ? まだご飯できていませんでしたか? 先ほどできたと連絡をもらった気がしたのですが?」
ラッツは俺の周りを見て首を傾げる。
ふふふ、まあ、そうだろうな。
寿司を知らないなら、この道具の数々を見てもすぐに食べられるとは思うまい。
少し練習した成果を見せてやろう!!
「いや、準備は出来ている。これを見よ!!」
なんとなく、シャリを上に放り投げて掴んで、切ってあった鮪を上に載せる。
そして、準備しておいた、セットに置く。
他の皆の分はもう出来てます。
そうやって、寿司を皆の前に置く。
まずは基本、鮪、鯛、鮭、烏賊、大トロ、鮃、たまごを各種一個ずつ載せてある。
「えーと、魚の切り身をご飯の上に載せてるだけですよね?」
「甘い!!」
「ひゃ!?」
「目の前に置いてある小皿に醤油を入れ、それに寿司…その切り身が載せてあるご飯を食べるといい!!」
ラッツを筆頭に恐る恐る、醤油につけて寿司を口に運ぶ。
「「「!!?」」」
ふっ、まずは七貫あっという間になくなった。
直ぐに食べ終えた皆は、これで終わりなのかとこちらを見て気が付く。
そう、展示冷蔵庫の中にはまだ、切り身が沢山あるのに…。
「お、お兄さん。も、もしや…」
「これがメニューだ。食べたいものを頼むといい。その場で握ってやろう!!」
「「「!!?」」」
全員が、メニューへと視線を向ける。
まあ、一応多めに握ってあるから、俺が実際に握る分はそんなに多くはないだろう。
そんなこんなで序盤はこちらの圧倒的勝利だった。
まずはお約束の茶碗蒸し、貝汁、そして熱い緑茶!!
個別に好きそうなものを先に渡したり…。
「こ、これは!?」
「稲荷寿司という、カヤが好きなお揚げと寿司のコラボレーションだ!!」
「あ、ああ」
「大丈夫だ沢山ある。心配しなくていい沢山食え!!」
カヤに至っては稲荷寿司を山ほど食べていた。
が、現在ストックは切れ、俺が握るハメになってしまった。
「はいよ!!」
「烏賊!!」
「ほれ!!」
「たまごー」
「はいはい!!」
畜生、俺が食う分残るのか?
俺は寿司を握りながら、もう絶対に自分で寿司は握らないと心に誓った。
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