第36掘:メロン&うさぎVSモモ
メロン&うさぎVSモモ
久しぶりに、と言ってもわずか20日程かね?
王都までは片道10日。この前の騒動でエルジュ偽物とセラリアは王都へ帰還、入れ替わりにモーブ達が帰ってきたわけだ。
その間に色々DPを弄って遊ばせてもらいましたとも。
ロシュールの近衛を主体とした精鋭400強。美味しくいただきました。
セラリアは特に問題ないようだ、最初の挨拶の時点で元気なのはわかった。イラっとしたがな。
俺の予想としては、もうちょっと手間取るかと思っていたが、カリスマや手腕はそれなりにあるようだ。
「報告を聞く、言ってくれ」
『…なによ。久々に顔合わせたのに冷たくないかしら?』
めんどくせえ…相変わらず。
「別に冷たくはない。そっちが忙しかったように、こっちはそっちの報告を聞いて、ダンジョンの整備しないといけないんだ。セラリア側はそれで、一息だろうが、こっちはこれからが本番なんだよ」
『それもそうね。いいわ。とりあえず、そのダンジョンへの移民の人数は奴隷のみで300人程ね。悪いけど、そちらの状況を知っているのは私だけでしょ? いきなり、難民をダンジョンに放り出すのは、議会が許さなくてね。だから、先行で奴隷を行かせることになったわ』
「その奴隷は犯罪奴隷とかじゃないだろうな? こっちが警戒しないといけないのは面倒だぞ?」
『そこは心配しなくていいわ。奴隷と言っても今回の争乱で、売られた人たちよ。難民と変わりないわ。なら、なんで奴隷としてそっちに送るのかはわかるでしょ?』
「…ガルツ国側ってことだろう?」
『その通り、ロシュール国の難民なら、ここで奴隷として売るのは極力控えられるのよ。自国の民を今回の争乱で奴隷にしましたーなんて、国のいい恥さらしよ。と、いっても今回の争乱で食い扶持を得る為に売られた人も少なくはないでしょうね。でも大半はガルツ国の出身と思われる人達よ、下手に難民として抱えこんでも争いの種になりかねないし、ユキに押し付けることで、上手くいけば、ガルツ国に我が国は誠意をもってそちらの国民を保護したといえるし、失敗したとしても争いの種がいなくなるんだから万々歳よね』
セラリアは嫌そうな顔をしつつも、事実を告げる。
こういう所はしっかりしてるんだよな。エルジュよりは個人的にセラリアの方が評価は高いのだ。
「俺に押し付けることによって、運営の人材、費用も軽減できるって踏んでるわけだよな。一々開拓してたらアレだしな。ロシュール国としちゃ、丁度いい厄介払いになったってわけだ。で、他は?」
『あとは、私がそこのダンジョンの表向きな統治者となるのは、理解してるわよね?』
「そりゃ、ロシュール国の公認が欲しかったからな。逆にセラリア以外の統治者に来られても大問題だ。これは予定通りだろう」
そう、このダンジョンにとってセラリアの存在意義はそこにある。
ロシュール国の公認。第二王女が認める。これ以上の公認はなかなかないだろう。
これによって、俺個人が「安全ですよ」と叫ぶより、この国や他国からすれば、とても安全に見えるだろう。
つまり、人が集まりやすい状況ができるのだ。
あと、セラリアの名前で下手な貴族などは介入すらできないだろう。
今後の展開に便利というわけだ。
『まあ、表向きよね。実質ユキが統治者でしょう。私は楽させてもらうわよ。と、それに加えて私の直轄部隊がそのまま、そのダンジョンの護衛、及び奴隷達の護送任務につくわ。私を介してなら、無茶ではない限り自由に使っていいわよ』
「へえ、そりゃありがたいな。いいのか俺を信用して?」
『何いってるのよ。わざわざ手加減して、ダンジョンに来た軍を追い払ったくせに。ユキが無駄な事はしないって理解してるわよ』
セラリアは決して馬鹿ではない、まあ変に戦いにポリシーみたいなの持っているみたいだが。
「他には?」
『そうねー、一応開拓と変わらないから、建前上の資金とか物資はもらっているわ。資金に関しては白金貨で約300枚程ね。多そうに見えるけど、全然開拓には足らないわよ。一般的な一軒家を建設するのに大体1枚から5枚、貴族の邸宅なら10枚から40枚。しかも、これは大工や資材が近場にあっての話ね。300人の家を建てるなんて資金不足ね、しかも資金援助はそれで終わり。物資に関しては、簡易的な家を建てるだけの資材を30家屋程ね。ぎりぎり、300人は収容できそうよ。食料にかんしては必要最低限、15日分って所ね。そっちに行くまでに10日…だけどほぼ単騎や軍での移動だったから、移民を連れての移動だから15日分はぎりぎりでしょうね。そっちについたら即座に狩りでもしないと飢えるわ。唯一の救いは5年程は徴税が発生しないということかしら』
「それはそれは、建前上は死んで来いって話だな。もうちょっと議会から引き出せたんじゃないか?」
『そうね、できなくもないでしょう。でも私は丁度いいと思ったわ。下手に支援をしてもらって、後々発展した後で口出しされるのは面白くないわ。逆にこの不利な状況を使って今後の手出しを跳ね除けられるわ。それとも何? ユキは300人と私達を養うだけの準備ができていないと?』
「いや、準備は出来てるが…まあ何とか足りるかな。そっちの援助を水増ししてもらおうかと思っていたが、セラリアの話を聞くに悪手だな。まあ、どのみち変な横やりは入るだろうが、なるべく入る要素は減らすべきだな」
エルジュの援助を強固には、こういう不利な側面もあるな。まあ、期待はしてなかったが。
『何? なにか欲しい援助でもあったの?』
「…ダンジョン内で、ある程度のお金による雇用体制を作ろうと思っている。300人全員の雇用って一月いくらぐらいかかるんだ?」
『ああ、なるほど。ダンジョンマスターの能力で飼い殺しにするつもりは無いわけね。それもそうか、ユキがずっとそこにいるわけでもないでしょう。ユキがいなくなることで機能停止するなんて場所は恐ろしくて住めないわね。最終的にはそこに住む人達で生きていく流れを作るわけね?』
「そういうこと。で、いくらぐらいだと思う?」
『ん~、参考にはならないでしょうが、私達の部隊の一月の給与が金貨3枚から5枚ね。平隊員が3枚。副隊長が4枚。隊長が5枚。エルジュから聞いてなかったっけ? 一般家庭の4人家族なら金貨1枚でこと足りるわ』
「確認のためだよ。実際間違ってたら、物価の差で酷い事になるからな」
『それも当然ね。わかったわ。一般的な給与を調べとくわ』
「そういえば、部隊の給与はちゃんと支払われるのか?」
『当然よ、そうしないといくら忠誠心が高いとはいえ、その給与で家族を養っている隊員もいるんだから。毎月ダンジョンに幾ら送ればいいか申請書がくる手筈になるわ。他の報告も含めてね。ま、ダンジョンで使うことなんて無いでしょうから、独り身じゃない限り、家族の所へ給与は回すでしょうね。食うには困らないのだから』
ふむ、あれ? これって外貨得るいいチャンスじゃね?
「ちょっと待った。部隊の皆にはある程度の資金持たせるようにしてくれ」
『どういうこと? ダンジョンに店でもあるわけでもないでしょう?』
「いや、これから作る予定だ。わかるだろ? DPがあれば大抵な事はどうにでもなる。セラリアが気に入ってたシャンプーやリンスも限定的ではあるが、ダンジョンで販売しようと思う」
『なんですって!? それは大変な事ね、私だったら大金運んでいくわ。でもそれだけじゃないんでしょう?』
「そりゃ、雇用体制作るんだ。ちゃんと消耗品とか衣類、食料も売る予定だよ」
『…そうすれば、畑を作るにしても、狩りをするにしても、それまで飢える心配はないわね。でもいいの? 下手にあのシャンプーやリンス…石鹸なんて嗜好品が広がれば、よからぬ輩が四方から集まってくるわよ?』
「すぐというわけでもないだろう。人を集めなきゃ始まらないし、特産の無い場所には誰も近寄らない。まあ、その元難民の奴隷達が慣れるまでの2・3か月はそっとしといてほしいが…」
『そのぐらいなら、下手に隠す必要もないでしょう。このコールみたいなスキルが無ければ、馬か人の足でしか情報は伝わらないわ。部隊には私から口止めをしておきましょう。完全とはいかないでしょうが、解禁する時期を決めていればそれまでは、黙っててくれるでしょう』
人間永遠に黙ってろというと、噂を広めたがる。だが逆に、この時期まで黙ってろというと案外黙っているものである。
…セラリアもしっかり上に立つものとしての資質は十分にあるみたいだな。
「あ、そうだセラリア。冒険者ギルドをこのダンジョンに立ち上げたいんだが、何が必要かわかるか?」
『自殺願望でもあるの?』
「いやいや、セラリアが一応自由にダンジョンの制御できるってことになってるだろ。だからそれの証明として訓練用ダンジョンとかをダンジョン内部に作って、それを初心者冒険者の場所として使うのはどうかってな。人集めにもなるしな」
『へえ、面白い事考えるわね。私もそのダンジョン作り混ぜなさい。ギルドに関してはこっちから必要な人材は連れていくわ。さっきの訓練用の話をいえば飛びついてくるでしょうし』
セラリアは何かダンジョンを作るのが楽しみなのか、ブツブツなにかつぶやいている。
…とりあえず、強力な魔物のごり押しMAPにならないことを祈ろう。
「色々考えているところ悪いが、こちらに来る人数を細かに伝えてくれ。住む場所を作らないといけないからな」
『ああ、ごめんなさい。ええっと…まったく羊皮紙は使いづらいわね…コピー用紙が懐かしいわ…、あったあった。325人ね。私の部隊が54人。合計で379人ね。これから増える可能性もあるけど400人は超えないと思うわ。だって物資が持たないもの』
「わかった。400人を想定して家屋は建てておく」
俺が横に目をやると、エリスやラッツはコピー用紙に俺達の会話を書き留めている。
よくできる子たちだ、現代日本でもいい人材ではないだろうか?
「じゃ、あとはセラリア達の到着をまってるよ。一応家屋の準備ができたらそちらに連絡をやる」
『そうしてくれるとありがたいわ。そっちに安全なねぐらがあるとわかるのは、心労に違いがでるわ。あと、こっちも、そっちが言った事を揃えるのにもう5日程時間がかかるわ』
「…これでようやく、はじめられるのねユキ?」
「ああ、ラビリスこれから忙しくなるぞ」
そしてセラリアと話している間で、初めてラビリスが口を挟んできた。
まあ、大体話がまとまったし、それを待ってたんだろう。
ラビリスの頭をなでていると、画面からセラリアが不思議そうに見てくる。
『ところで、その小さい女の子はどうしたの?』
「モーブ達が買ってきた子供…ああ、そうだセラリア!! 小さい子供達を奴隷を中心で集めてくれないか?」
『え? ええ別にいいけど、何? そういう趣味なわけ? 道理で私と一緒にお風呂入った時、反応しないわけね』
ラビリスが強く抱きしめてくる。何かしら力いっぱいな気がするけど気のせいだろう。
「いや、そういう趣味はないが。別にこのラビリスは好きだぞ? ほれ、可愛いだろう?」
「…ユキ、恥ずかしいわ」
ラビリスを抱えて画面の前にもっていく。
『…不自然に胸が大きいわね…。で、なんでまた子供を? 特に理由がないなら、長旅になる道のりに足手まといは極力連れていきたくないわ』
「子供のいない場所ほど先がない場所ないだろう?」
『それはね…。…なるほど、次代として育てたいわけね』
「そういうこと。ああ、なるべく女の子な」
『なんでよ?』
「男と女どっちが侮られやすい?」
『女ね。…それをトップあるいは、重役に据えて住人の差別意識を取りさろうってわけね? その子もその一環?』
「まあ、一環ではあるけど。付き合いはある意味セラリアより長いからな」
「…セラリア様。ユキの正妻、ラビリスです。よろしく。そしてユキに手をだすな」
空気が凍った。
あれ? 今の会話にセラリアの落ち度はないと思ったが。
『は?』
セラリアは言葉の意味が分からないのか茫然としている。
「ラビリスちゃんもやりますね~、では私も、お兄さんの第二夫人のラッツと申します。セラリア様お見知りおきを。あ、私は別段、お兄さんに手を出してもかまいませんよ?」
ラッツが乱入し、セラリアに怒りの感情が入り込む。
『こっちが忙しいときに随分なご身分じゃない?』
「おちつ…」
「そっちが勝手にユキを巻き込んだのでしょう? おっぱいの小さいセラリア様」
『なっ!? 大きければいいってものでもないわ!! いい、私は軍部からはモモの様な綺麗な胸と…』
「使われなくちゃ、意味はありませんよセラリア様。私達のお兄さんみたく使ってあげる人物でも?」
『…いないわよ。だって私、第二王女だし。私より強い男じゃないと認めないし…』
あ、なんかいじけはじめた。
「それは、それは戦姫といわれるセラリア様の御眼鏡に叶う人物は少ないでしょうね…もうちょっと、基準下げてみては?」
ラッツが凹んだセラリアのフォローに入る。
「…いいすぎたわ。セラリア様、ユキを大事にしてくれるなら、分けてあげるわ」
ラビリスもセラリアのフォローに入る。
…あれ、俺って分割販売できたっけ?
『本当!? ユキってば一緒のお風呂入っても反応しないのよ、自信がなくなりそうだったわ…だから今度こそって思ってたのよ!!』
「あー、それは分かりますよ。お兄さんって変に精神を制御できるって厄介ですよね~」
『あ、でもユキが好きとか、旦那に欲しいってわけじゃないのよ!!』
「…難儀な性格ね。大丈夫。私達の手伝いでユキと一緒にお風呂に入ってほしいわ」
『それなら、仕方がないわね!! 一緒に入ってあげるわ!! 楽しみにまっていなさいユキ!!』
そう言って画面が切れる。
…ん? 大事な話はまとまったけど…なんか間違ってね?
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