第24掘:おやすみ
おやすみ
自室、まあみんなの部屋の隣なんだがな。この旅館建てたばっかりだしな。
そこにお子様三人を連れて入る。
「さて、布団はどうする? 一人一つずつにするか?」
「…みんなで一緒に寝られない? 一人は寂しいわ」
「私たちはいままで三人一緒に寝てましたから」
ラビリスとフィーリアはそういったのだが、アスリンが何かモジモジしている。
「どうした、アスリン? どうかしたのか?」
「あ、あの、用足しってどこですればいいんですか? あの、中庭ですか?」
ああ、中世ヨーロッパって、王城でもオマルに用足しして…そのまま窓から特定の位置に投げ捨ててたらしい…。
日本でも上下水道ができたのは江戸で最古の下水道があったらしいから…それまではなかったということだ。
江戸ってとこは徳川幕府ぐらいの時か?
まあ、そこはいいか。とりあえず、この文化レベルだと、田舎では川や専用の場所(トイレではない)になるのだ。
「も、もれそう…なんです!?」
「ちょ、ちょっと待てトイレがそこにある!!」
急いでアスリンを抱えて、トイレに駆け込む。
「アスリン、この上に座るんだ。オマルってわかるか?」
「はい!!」
そのまま、こっちにお尻を向けて座り込む。
違うから!! って言っても仕方ない、使い方どころか、トイレってものがないんだからな。
「ちょっとまて、ええい!!アスリンすまん!!」
「ひあっ!!ダメですよ、ユキさん!!」
そのまま抱き上げて、こっちに顔を向かせる。
とりあえず、アスリンはもう決壊している。まあその場で回転させるから、セーフだ。
「みちゃ、ダメです!!そんなに見つめちゃだめです!!」
アスリンはこっちの顔に手を当てて視界を塞いでくる。いや、お尻向けてするのはいいのか?
ああ、面と向かうと恥ずかしいってやつか?
…もう、真面目に保護者だよな…。
「あううう…」
アスリンはトイレの後、ラビリスの後ろに隠れて恥ずかしがってる。
「…ユキ、いきなり特殊なプレイはダメよ。最初は普通に抱いてあげて」
「どういう意味ですか?」
「だぁー!!ラビリスお前はなんでそんな知識があるんだ!!フィーリアは聞いちゃいけません!!つか、見てただろ、トイレの使い方!!覚えておけよ!!俺は隣の女性陣に使い方教えてくるからな、アスリン宥めておいてくれ」
そう言って、ダッシュで部屋をでる。
あの場にいると、変態になったように感じるんだ。
俺はノーマルだ、決して特殊な性癖はない!!と思いたい。
「おーう、すまん。用足しについて説明し忘れてた」
そういって女性陣の部屋に入るとラッツがダッシュで駆け寄ってきた。
「お兄さんナイスタイミングです!!私が決壊する寸前でしたよ!!」
内またで、ピョンピョン飛び跳ねながら器用にこっちにくるラッツ。
違和感ないな、流石、兎人族か?
「ええい!!なんですか!!見たいんですか、お漏らししている私を!!ここでやっちゃいますよ!!」
「いやいや、まてまて!!こっちにこい!!」
流石にラッツも「~」みたいな間延びした喋り方してる余裕もないらしい。
「さあここで椅子に座るようにするんだ!!」
「ええい!!ツッコム余裕もないです!!こうですね!!」
「その中にするんだ!!」
「はい!!わかりましたよ、お兄さん!!」
その瞬間を見届けた俺は扉を閉じる。アスリンの二の舞はしない、俺は学習する男なのだ。
扉を閉じた直後、水が落ちる音が聞こえる。…いや、我慢してたらしいから音が聞こえるのは不可抗力だろ?
「ふわ~、天国です」
「おわったら、横にある白い紙があるだろ。それで拭いて、中に捨てて、銀色のノブ見たいのがあるだろ?それで流れていく」
「ちょ!!紙で拭くんですが!?なんて贅沢な!!」
「抵抗があるのは分かるが慣れろ。ここはそれが普通だ」
「で、流す?これですかね?おお~、流れていきます!!」
その後、ラッツが満足げな表情でトイレから出てくる。
「なんですか、この至れり尽くせりのトイレ?でしったけ?」
「それであってる。使い方はみんなに教えといてくれ」
「はい~、わかりました。いや~しかし、抱っこしてトイレに連れて行ってもらえばよかったですかね?」
それはさっきアスリンでやりました。
「エリス、布団の使い方はどうだ?問題ないか?」
「えーと、こんな感じでよいのでしょうか?」
エリスは自信なさげに、敷布団に目を向ける。
「そうそう、固いのが下な、柔らかいほうが上から被るものだ」
「あのトイレといい、なんか私、変な夢でもみてる気分です…」
「あきらめろ、そして慣れろ」
「…善処します」
「明日は色々話をするから、なんとか休んで明日に備えてくれ」
「…」
エリスは絶対心が休まらない、という感じの顔をしているが、仕方がない。
俺にとってはこれが普通だし、これからもエリス達にはこの生活を続けてもらうつもりだ。
「あ、喉乾いたら、ここの水道をさっきの、風呂場みたいに捻って水だして、このヤカンみたいなのに入れて、このボタン押すとお湯になるから。コップはここな。あとこのティーパックを入れると紅茶とかお茶になるから」
「…もう、私の常識は通じない場所なのですね」
手を額にあてて顔を振るエリス。
がんばれ、みんなへの説明を君にまかせた。
もう、寝る。決して面倒だからエリスに押し付けたのではない。
部屋にいる三人を心配して早目に戻る。そう、保護者としての義務なのだ!!
「…遅いわ。フィーリアはもう寝てるわ」
「あの、この草の床に寝ればいいんですか?」
「んにゅ」
部屋に戻ればフィーリアはもうおねむのようだ。案外早目に戻ったのは正解らしい。
「ごめんな、今日は四人で寝るか。さっさと布団敷いてしまうぞ」
そうやって二人分の布団を手早く敷く。大人一人と子供三人なんでこれで十分だろう。
「俺が中央に寝るから、二人は好きな所に寝るといい。フィーリアは何処がいいかね?」
「えーと、私と手をつないで寝る癖があるので、私の横がいいと思います」
「じゃ、アスリンの横か。変に考えて時間とるのも馬鹿らしい、今日は俺の右にラビリス、左にアスリン、その横にフィーリアな」
そう言ってフィーリアをそっと抱えて布団に寝かせる。
アスリンはフィーリアの手を握ったまま横になる。
俺も中央に横になる。
「ん?ラビリス、どうした寝ないのか?」
「…いいえ、こんな風に寝られる日が来ると思ってなかったわ。一人ぼっちの時が多かったから」
「そうか、慣れないだろうがあきらめろ。ほれっ!!」
「きゃっ!?」
布団を見つめるラビリスに近づいて、そのまま抱えて布団に投げる。
「電気…っと明かり消すぞ」
「…もっと優しく扱ってほしいわ」
明かりを消して、三人に掛布団を掛けながら俺ももぐりこむ。
「…ふわふわです」
「…そうね。つい昨日まで、ボロの布被ってみんなで身を寄せていたのが嘘みたい」
「ちょっと二人とも頭上げてくれ」
「なんですか?」
「…?」
そうやって軽く頭を浮かせた瞬間に、両腕を彼女の頭の下に潜り込ませる。
「もういいぞ、俺は寝相が悪くてな。腕振って当たるとケガするかもしれないから、悪いが頭で押えてくれ」
「わかりました」
「…そういうことにしておくわ」
さて、もういい加減俺も限界だな。
アスリンもフィーリアも寝息を立てている。疲れたんだろう。
小さな体で奴隷や、ダンジョンまで来たんだ。同然か。
そんな事を考えていると、さらに意識が遠くなってくる。
「…ねえ、ユキ。起きてる?」
「…ああ」
右腕に頭をのせているラビリスがこちらを見つめている。
けど、生返事しか返せない。
「……ありがとう。おやすみなさい」
「…おう」
そうやって、夜は更けていくのであった。
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