第17掘:いろんな意味でNDK?

いろんな意味でNDK?



side:セラリア・ノウ・ロシュール



まさか私が演劇の舞台に立つことになるとは思わなかったわ。

茶番劇というのが気に入らないけど、エルジュの為なら問題ない。

私の妹は、私の宝物なのだから。

そして、もうすぐ私の出番がくるモニターは私の目の前に三つ、一つはクソ親父、一つはダンジョン内の兵士達、そして最後の一つが…。


『ロワール様!! き、緊急事態です!! お城へお戻りを!! 王が、王女が暗殺されました!! 今や城内は大混乱であります!!』

『な、なんだと!! 王が…!? 王女もか!? 分かった、すぐに兵をまとめて戻る!! すまぬが、そなたはロワールはすぐに王都へ戻ると伝令を頼みたい!!』

『お任せください、では失礼いたします!!』


そう、最後の一つはダンジョンの外で待機しているロワールなのだ。

ユキが小動物を指定保護し、偵察させていたのだ…なんという、狡猾。

私とはまったく違う方向の強者なのだと思い知らされる。

だか、ユキの策は更に続く。この映像をダンジョン内にいる兵士にわざと見せているのだ。


そんなことも知らずにロワールは本陣でその伝令を見送ったあとほくそ笑む。


『ロワール様、これでもうロシュールは我が手に落ちたも同然ですな』

『うむ、リテア聖国としてはエルジュ王女を始末すればよかっただけだが、だたそれだけでは芸がない。協力する私にも多大な恩恵がないとな!! この国という褒美がな!!』

『しかし、ダンジョン内に取り残された兵士はどういたしましょうか?』

『捨て置け、このままほっとけば死ぬだろう。万が一ダンジョンのエルジュ王女と手を組もうが、もうどうにもならんよ。王都までぬけぬけと来れば、そのまま捕らえて処刑すればいい』

『ダンジョンマスターに魅入られた愚かな兵士としてですか?』

『うむ、お前もよくわかっておるではないか!! ま、手を組んだとしても、王女が王都までたどり着くわけ無いのだがな』

『ほう、それはどのような?』

『フフフ、まあそれは後でのお楽しみだよ。さ、予定通り私達にとっての吉報が届いたのだ。これから忙しくなるぞ、王都に残った者共は王が暗殺されるのを見逃したのだ。そしてその場に、多大な犠牲を払いながらも、颯爽と王の為にダンジョンを制圧して帰ってくるこのロワール!!』

『兵が犠牲になるのも予定済みだったわけですな。これで王都に戻ればロワール様の地位は確実なものですな』

『そういうことよ、何事も織り込み済みというわけじゃな!!』


…バカだ、ここまで堂々と暴露してくれるとは思わなかったわ。

しかし、ある意味この場所こそ堂々と喋られる場所でもあるのだから。

どうせ残ってる500名前後の兵士は、ロワールの息がかかっているのでしょうから。


「…ロシュール王さ、ねえ、今どんな気持ち?」

『…言うてくれるな…』

「ま、セラリア達が戻ってくるまでにメンタル戻しとけよ。じゃ、あとはエルジュとセラリアに任せた」


そういってユキはエルジュと私を見つめる。

頷き返す私達。


さあ、本番だ。


「聞いたか、ロシュールの兵よ!! これが真実である!! 諸君らはロワールの策略に踊らされていただけである!! 今までのことは私は罪には問わぬ。寧ろその忠義に感謝をしよう!! そして、私。セラリア・ノウ・ロシュールと…」

「このエルジュ・ラウ・ロシュールの言葉を信じてくださるのでしたら剣を掲げてください!!」


モニターの向こう側は静まり返っているが一人の兵士が進み出て、剣を掲げる。…私の直轄部隊の隊長…クアルだ。


『私の忠義はロシュールとセラリア様にあり!!』


『『『うおぉぉぉおおおおお!!』』』


そして、その声に反応するように兵士達が声を上げ剣を掲げる。


「クアル、私達はその場に向かいます。そしてそのまま王都へ進撃。ロワールの首を取る!!」

『はっ!! 了解いたしました!!』


そして、私とエルジュは兵士達の場所へとたどり着くと、そこには近衛隊隊長…アレス・レスターが剣をクアルに預けこちらに跪いていた。


「クアル、これは?」

「はっ、アレス近衛隊長は、此度のロワールの暗躍を止められなかったを悔いて処罰を求めております」

「…アレス」

「はっ、いかような処罰でもお受けいたしましょう。父君、姉君を守るべきはずの私が殺す手伝いをしたようなものです。この場で首を落とされても構いませぬ」

「斬らぬ」

「…なぜ…」

「先ほどのロワールの話は聞いていよう。確かに私の父と姉…王と王女は亡くなったのだろう。だがまだ国が終わったわけではない!! アレス…お前はなぜその剣を取った!! 王を守るためだけの剣だったのか!!」

「それは…」

「民の為であろう。国を守るということは、王を守るということは、民の為でもあるのだ。その思いが残っているのであれば再び剣をとれアレス!!」

「はっ、この剣。今度こそ国の、王女の、民の為に振るうと誓います!!」


ふう、なんとか押し切れたか。苦手よ、クソ親父の代わりに演説なんて。


『へー、やっぱり戦場にでてるだけあるな。かっこいいわ』

『ほう、セラリアはここまで成長しておるか』

『ふふふ、私の代わりに女王になってみる?』


くっ、いざという時の為に、声だけ聞こえるようにしてたけど鬱陶しいわ!!




side:アーリア・ラス・ロシュール



「さて、次は我らの番か」

「ええ、お父様」


セラリアからの行軍報告と、例の事件が起こった報告も届きました。

残るはロワールの対処だけです。

そう、暗殺は防いだのですがそれではロワールに逃げられたり、言い訳をされる可能性があると言われ、ある提案を受けました。


「まさか、私たちの死を偽るとはな」

「しかし、効果的な策だと思いますよ。ここでロワールを捕らえねば、色々禍根を残すこととなりましょう。捕らえればロワール本人が吐かなくとも、如何ような罪状でもつけて処刑でもすればよいのですから」


そうやって話していると一人の兵士が報告に来ます。


「ロワール大臣が見えられました!! 予定通り周りの配置は済んでおります。しかし、王自ら死体役などされなくても…」


彼は報告をすると心配げな表情で父にそう告げます。


「心配するな。年をとっても剣の腕は健在よ。ロワール如き我一人で十分よ!! して、どうだろうか、死んでるような化粧に見えるか?」

「あ、はい!! 立派な死に顔であります!!」

「ふふふ…立派な死に顔ですってよ。お父様?」

「す、すみません!! 失礼をしました!!」

「ふん、アーリアも似たようなモノだろう。さて私達はこれから死体を演じる、あとは頼んだぞ」

「はっ!! お任せください!!」


そういって兵士は出ていく、彼はきっと大きくなるでしょう。私達の冗談に付き合えたのだから。


「しかし、お前と一緒に寝るとはな…いつ以来だろうか」

「さあ、お父様は昔からお忙しくされていましたから」

「ある意味、この策を考えたユキに感謝せねばならんな」

「ええ」


そして、廊下から足音が響いて、扉が遠慮もなく開け放たれる。


「王様!! アーリア王女様!!」

「お、落ち着いてください!! ロワール大臣!!」

「ええい!! 落ち着いていられるか!!…嘘だ、王が、このようなことで…」


そう叫んで私達へと歩みよるロワール。

目をつぶっててわからないのだけれど、一体どんな面で私達の前に顔を出せたものかしら?


「…すまぬ。出て行ってくれぬか。最後に王と話がしたい…」

「…はやまった事をなされぬよう」


そしてロワール付きの従者が姿を消す。彼はここから離れたあとすぐに捕らえられるだろう。

しばらく静寂が部屋を包みこむ。そして押し殺すような笑い声が聞こえてくる。


「…くくっ、なあロシュール王よ。結局最後まで私の予定通りに動いてくれたな。これでリテア聖国との契約は完了。エルジュとかいう偽聖女は死んだし、ロシュールの王族は全員死亡。万が一エルジュとセラリアが戻ってきても、こっちでどうにでもしてやる。仲良くあの世に行ってるがいいわ!!」


…こうもあっさり喋ってくれると他の臣に説明もいらないわね。

ここの隣の部屋に控えてる重臣達の顔をみたいものだわ。


「…ふう、我も年をとったかな。お前のような奴をここで殺さないのはなあ、ロワール」

「は? ロ、ロシュール王!?」


私が目を開けた時には、もうお父様がお気に入りの剣を振るったあとでした。


ボトリと絨毯にロワールの腕が落ちます。


「うぎゃぁぁっぁぁああ!! な、なんで!?」

「わざわざお前みたいに説明してやる義理はない。さっさと連れて行け!!死なぬ程度に治療はしてやれ」

「はっ!!」


そうやってロワールはあっさり連れていかれた。


「私の出番はありませんでしたね」


私はそういって体を起こす。


「心配するな、むしろこの次が大本命だろう」


お父様がそう声をかけた瞬間また扉が開かれる。

そこには先ほどの兵士が「本当に焦った」顔を浮かべていた。


「も、申し上げます!! セラリア様が説得した軍の中にロワールの手の者がいたもよう!!」

「ふむ、当然じゃな。何をそんなに焦っておる?」

「そ、それが、行軍中にセラリア様、エルジュ様に対して剣を抜き、セラリア様は事なきを得ましたが…」

「…まさか!?」


「エ、エルジュ様は剣で貫かれ…亡くなられました!!」


さあ、最後の仕上げですね。

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