第8掘:情報を聞いてみよう

情報を聞いてみよう



side:エルジュ・ラウ・ロシュール


目の前の扉が閉められ、足音が遠ざかっていく。


「ダンジョンマスターですって? そんな、あり得ない」


私はそう一人呟いた。

彼は自分のことを「ダンジョンの運営をしている」と紹介してきた。

しかし状況的に彼…ユキさんは嘘を言っているとも思えない。

私が保護?されたのはダンジョンの中、そしてそこで遭遇した卑しいとされ特に女性から嫌われてるゴブリンである。

そのゴブリンが私たちに危害を加えるのでもなくここまで連れてきたのだ。


「オリエル、あなたはユキさんがダンジョンマスターだということを信じますか?」

「状況からみて嘘は言っていないとは思いますが、本当の事を言ってもいないと思います」

「それは私たちも同じですわね…」

「ええ、彼、ユキと言いましたか、まだ判断するには状況がわかりません。私がいうのもなんですがユキは一応私たちを治療して約束は今の所守られています」


オリエルは先ほどの行動を思い出して顔をしかめている。


「オリエル、あなたやっぱり…」

「はい、申し訳ございません。殺すまではなくとも制圧してこちらが主導権を握ろうと思っておりました」


気持ちはわからないでもない、相手がどのような思惑で私たちを保護したのかがわからないのだから、しかしユキさんは今の所約束を守ってくれている。

私たちが奴隷にされてから苦しんでいた痛みから解放してくれたのだ。


「これからどうなるかはわかりませんが、私たちに害がない限りはオリエル、ユキさんへの敵対行為や暴行は固く禁じます」

「はい、承知いたしました。しかし、指定保護ですか…行動そのものを封じるものみたいです。私は治されたあと殴りかかろうと思いましたが動けませんでした」

「あなたは…」


オリエルの献身には感謝しているが今回は行き過ぎている。今の所彼に何も非はないのだ。むしろ奴隷から解放に治療。普通ならば頭を下げるべきだ例えユキさんがあのダンジョンマスターだとしても。


「明日お話する機会があるみたいですし、しっかりと謝罪とお礼をしなくてはいけませんよオリエル」

「…約束はしかねます。私はエルジュ様を守ることを優先させていただきます」

「オリエル!!」


私はその後食事が届けられるまでの間オリエルにお説教をしてしまいました。



side:カズヤ・トリノ 偽名ユキ 一応主人公


まずは女性達の話だけを進めよう。男達も色々あったのだが、まあむさいので割愛。今度思い出したら話すとしよう。


結局その日は彼女達へ明日の話す事を伝え自室に戻った。

現在朝8:00。いつものように携帯のアラームで目を覚ます。

初日こそ自分が異世界に本当に飛んだのか疑ったが人間慣れるもんである。即座にMAPを開いて異常がないか確認する。まあダンジョンに異常や侵入者があれば警報が鳴るようにはしてるのだが心配なもんは心配である。


635DP


おお、思ったより増えている。昨日ダンジョン内で捕獲した男3名は指定保護をしていないのでダンジョン内にいる限りMPを一時間あたり吸収されるのである。

あのお姫様も捕獲してすぐ指定保護かけてはいないから1・2時間ではあるがMPがDPに変換されたはずだ。

軽く戦闘も寝ている間に起こったようで人ではない、対処可能と判断した場合、ダンジョンは侵入物が来ても俺を起こさないようにしている。

ま、それを差し引いて考えると、一時間あたりMPの100分の1を吸収するみたいだな。

4桁のMP持ちを捕虜にできたのはおいしいな。

これの使い道はあとで考えるか…とりあえず朝ごはん食べてさっさと彼女達にこの大陸の情報を聞いてみよう。


腹を満たしてPCは流石に混乱を招きかねないので手帳とボールペンをもって彼女達の所へと向った。

地図が「そこ掘れワンワン」で販売してはいるのだが1万DPだと。

そんな事を考えつつ彼女たちがいる場所へとたどり着く。


「おはようございます。どうですか、体に異常とかは?」

「いえ、お気遣いありがとうございます。異常もありません」

「そうですか、オリエルさん?でしたっけ、そちらは大丈夫ですか?」

「ああ問題ない…昨日は失礼した。状況が状況だったので過分に反応してしまった」


すこしオリエルが気まずそうに謝罪をしてくる。


「いえ、気にしていませんよ。で、どうでしょうか、お話…情報を聞かせていただいてよろしいでしょうか?」

「はい、構いません。しかし本当にユキさんはダンジョンマスターなのでしょうか? 疑うわけではないのですが、私たちが聞き及んでいるダンジョンマスターとは全く違うのですが」

「申し訳ないのですが私はそのエルジュさんが知っているダンジョンマスターというものがわからないのです」

「どういうことでしょうか?」

「私は…」

「ちょっとまっていただけますか、普通に喋っていただいて構いません」

「そうですか、ではお言葉に甘えて。俺は気が付いたらこのダンジョンの運営者、そっちで言うダンジョンマスターにされてたんだ…」


そこから俺は嘘八百を並べ立てる。この大陸の名前をしらない、向こうにはダンジョンはなかったこと、ダンジョンに来る前は町に住む普通の人間だったということ。

しかし、このダンジョンコアが俺とつながってる事が感覚的にわかりそれが害されると自分にも害があるということ。

戸惑いながらもしばらくこのダンジョンを守りつつ誰か話をしてくれる人を探していたということ…。


いやーよく出るわ出るわ、まあ、ある意味嘘でもないか。


「そうだったのですか、そんなことが」

「ああ信じられないと思うが、納得してくれ。こっちも最初は混乱したんだ」

「いえ、ユキさんの行動は信用できます。どう思うオリエル?」

「筋は通っています。私たちをだましてここで会話する意味もありませんし」

「よし、じゃあいろいろ聞いていいか?」

「はい構いません」


そして俺は今欲しい情報を知っているか彼女達に聞いてみた。

これからは箇条書きで質問と返答内容を記していこうと思う。


ダンジョン運営者…ダンジョンマスターと呼び、ダンジョンが出来れば即時討伐の編成やくみしやすいのなら、監視して冒険者や騎士達の身近な訓練場となるらしい。ダンジョンには危険度が存在し、ダンジョンコアだけで比較的安全なのが訓練場と適していて魔物が強ければ攻略待ちとなる。

尚、俺みたいにダンジョンマスターがいるダンジョンは、最上位の危険度設定されてるらしい、今まで記録されてるのは12ほど。そのどれもが国の近衛兵を一個中隊ほど投入してようやく攻略と討伐ができるかどうかである。その内2つは当時の魔王や有力な国を飲み込むほどの力を有していただと。


勇者…やっぱりいるらしい。スキルに「○○の勇者」とつくのが勇者の条件。記録によれば今まで幾人の勇者が生まれ死んでいったらしい、しかもその中で重宝されるのが「異世界の勇者」というスキルで、卓抜した戦闘性能を有しているらしい。ち、やっぱ異世界召喚があるのか。


魔王…こっちもお約束だった。魔族と魔物を統べる王で、こっちの定義は曖昧でこちら側は呼称してるだけとの事。まあスキル見せて我が魔王だ!!なんて証明するわきゃないよな。現在確認されている魔王はこの大陸では2名、魔王はどうやら複数いるらしい。

名前は出会ったら思い出そう。


この大陸について…この大陸の大きさは話だけではよくわからないが、今いるこの場所は現在ロシュール国という国の領地に指定されており、ここから15㎞ほど行った場所に町があるらしい。やべ!! 15㎞って近すぎね?と焦ったがこの世界、車とかはもちろんなく馬が移動手段でしかも町の外には魔物が闊歩する世界だ。なるほどいい位置とはルナの言う通りらしい。


ロシュール国に関して…国土は現在大陸にある国の中で五本の指には入り、国土に恥じない強国であるらしい。現在は他国と領土争い中らしい。若干誇張を感じる。だって目の前の人そこの王女様だし、それが奴隷ってお察しである。

国防にかかわることなので教えてくれるかわからないが、首都の人口を聞いてみたがあっさり答えてくれた。「20万もの民が支える大変繁栄し名君な国王の下、いまだ人が増えつづけております」

20万で誇れるのか…やっぱ中世ヨーロッパ並みというの間違いないらしい。いやよくやっているとみるべきか。


貨幣について…10進法になっていて大変助かった。銅貨<銀貨<金貨<白金貨で大体金貨一枚で4人の家族がひと月暮らせるらしい。

ちなみに単位は「フォル」


種族について…ルナの言う通り獣耳を付けた獣人・エルフ・人と人族だけでも多岐にわたるらしい。


とまあいろいろ聞き出したがそろそろお腹が減ってきたと思ったら12時を回っていた。


「長々とすまん。食事を用意しよう」

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