第1掘:ダンジョンを作ります そこ掘れワンワン

そこ掘れワンワン


光が収まって視界が戻ると、俺は草原と森の境目に立っていた。


「よし、今度はちゃんとこっちに来たみたいね」


ちなみに、先ほど空振りしたときは、ここで2時間ほど探して回ったらしい。バカの極みである。


「で、話すのか? 先にダンジョン作るのか?」


とりあえず周りは静かであるが、事前説明でここは中世ヨーロッパ並みの文明で奴隷上等、魔物さんいらっしゃーいな所である。

落ち着かねえ…。


「そうねえ、落ち着いて話する場所を先に作っちゃいましょうか。じゃ、あなたにもうスキルは付いてるはずだから「そこ掘れワンワン」って言ってみて」


「…」

「…」


沈黙が続く。


「なんで言わないのよ」

「ふざけた名前つけるなよ!!」


俺の怒りは絶対に正しい。


だがこうしてもなにも始まらない…あ、スキルつけたって言ったな。ならもしかして…


「!?」


ルナが驚いた顔をしている。それもそのはず「そこ掘れワンワン」って言ってないのに俺の目の前にウィンドウが開いている。

ちなみにタイトルは「そこ掘れワンワン ダンジョンメイカーw」腹が立つ。しかも犬が穴掘るというモーションのアニメ付きである。無駄もいいところだ。


「な、あんた無詠唱って、空気よみなさいよ!!」

「お前こそ空気よめよ!!」


やっぱり無詠唱のスキルついてやがったか、この時だけは感謝だな。


ちなみに、後で聞けば魔法やスキルは詠唱とスキル呼称で発動するらしい。

無詠唱ではわかりにくいが、定番の火の玉(ファイアーボール)などはこの前に「炎よわが魔力を糧にして…」うんたらかんたらでようやく発動するらしい。中二病真っ盛りである。

まあ簡単に詠唱スキルのランク分けをしますと…

無詠唱>略詠唱LV5段階>速詠唱LV5段階

となるわけだ。スキルは5段階制だとさ…もっとも、わかりやすくしているだけで、ルナはもっと細かい数字も出せないわけではないとか。

あれだ、人に優しい仕様だと思えばいい。

で「そこ掘れワンワン」は詠唱ありだと最低4時間はいるんだと…ふざけるな枠である。


でだ、そこ掘れワンワン…もうダンジョンメイカーでいいや、それを見るとまあなんとなく使い方というかチュートリアルもあるので苦労はしなかった。俺に合わせてくれているのか、PCの使い方そのままでイメージを吸い取って立体映像で表示してくれる仕様だ。空中投影のタッチパネルPC未来やわー…。


「つまらないわね、とりあえずこれが私からの初任給ね」


ピロリンと効果音と目の前に表示が出てきた。

【DP(ダンジョンポイント)が1500DP入りました】

初任給とか言うなよな。なんか異世界にいるのに仕事場にいる気分だ…いや、仕事とかわりないけどさ…もうちょっとな…。


ま、気を取り直してダンジョン制作に取り掛かりましたよ…ルナがいるせいか魔物とかは全く近寄ってこなかった。

でだ、このダンジョンメイカーって厄介な代物である。

なにがっていうとまず土地を掌握するためにDPを消費する。

土地を掌握ってなにかって? つまり日本でいう土地の権利購入ってやつ「一坪幾ら」って感じ。

なに、サクサク作らせる気ないだろってルナに文句言ったら。


「なにあんた。こんな管理もできないで、ダンジョン運営するつもり?」


道理ではあるが納得はできない。ちなみにこの手法は昔かららしいがダンジョンをある程度大きくしたら放置が多かったそうな、当たり前である。表計算ソフトよこせや!?

ちなみに維持費もかかる。

最終的には買い取りも可能らしいが…もう地球とかわらねーじゃん。

ま、とりあえず経費を書き出していこう。このダンジョンメイカーは、簿記機能もついてるらしい。


200DP 土地2㎢(1㎢につき100DP)尚年維持費(1㎢につき10DP)

100DP 深さ1㎞(1㎞につき100DP)尚年維持費(1㎞につき10DP)

300DP ダンジョン形成(1フロアにつき100DP)

150DP ダンジョンカスタム(1フロアにつき50DP)※カスタムは地形の変更

150DP トラップ生産(製造のみ)DPは罠によって違う

30DP  トラップカスタム(配置)一律1フロア10DP

300DP モンスター召喚 詳細はあとで

150DP 自室の家具など…通販システム


計1380DP 残120DP 維持費抜けば 残90DP


世知辛い世の中である…。引きこもっても4年でアウトとか、地球にいたときより貯蓄すくねーんじゃねーのと思うほどである。


とまあ、こんな感じでもう容赦なく作りましたとも。

あ、前提条件ね「ちゃんと全部の部屋つながってること」だってさ、俺の部屋だけ隔離してほっとこう作戦は無理だったわけだ。ま、そこもどうにかしたけどね。


あと大事なのは「ダンジョンコア」ってお約束もありました。

これを守るのがお仕事の内で、しかもこの世界で高く売れる魔力石らしく、DPを貯蓄しておけるものだと。

これを3つもらいました。

つまりこれを3つ取られると、ダンジョンを運営できなくなるわけだ。ゲームオーバーってわけじゃないけど、厳しくなるよな。

ちなみに最低10DPは入れてダンジョンに配置しとかないとダンジョンが動かないだと。

これがダンジョンの鍵とか銀行の役割を果たすらしい。

さっさと俺は10DPだけつぎ込んでのこりはほかのコアに移して貯蓄しましたよ。

なお、動いているダンジョンコアから維持費を徴収するらしいので、一年後に必要DPがないとダンジョンが足りないDPに応じて縮小するらしい。無駄に高性能ですこと。

考えようによっては複数のダンジョンの運営も可能だってことだがな。


あ、ダンジョンコアもダンジョン運営販売コーナーで売ってました。一個5000DPだと。

???の商品も多数。これにMSとかACあるんだろうな…たぶんこれだと思うが、1000万DP…。


「ねえ、できたのなら部屋に行きましょう」


退屈だったのか、ルナが不貞腐れた顔で言ってきた。

誰のせいだと思ってやがる…。


とりあえず、自室に行くついでにダンジョン内の様子を見たかったのでそのまま3階まで最短で踏破してみた。

ルナは見事にトラップに引っかかっていた。致死性のトラップも効かないとか、やっぱ神に準ずる者なんだと実感した。


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