第22話 北九州ファルコンズ立花 聡太の軌跡(後)

 ――有識者から見た立花 聡太。


 ①元愛知コンドルズ監督 上野 博の場合


「まず最初に見た牽制だね。あれは上手い。あれをされたらたぶん一塁ランナーは走れないんじゃない?

 あれだけ予備動作がないままで牽制されたら間違いなくアウトになるからね。ランナーを持った状態でマウンドに上がられたらどうしようもないだろうね。

 ピッチングについては、正直わからない。少なくとも俺の経験の中でああいったピッチャーに出会った事がないからね。

 ストレートと変化球の投げ分けが完璧に出来ているのが単純に凄いと思ったかな。それにコントロールが良すぎる。

 昔のプロ野球でも何人か抜群のコントロールのピッチャーがいたけど、それとも種類が違うよね。

 普通じゃない変化球と抜群のコントロール。あれは打つのは相当苦労するだろうね」


 

 ②解説者 元東京ベアーズ投手 大箕 厚の場合


「正直なところ、わかりませんとしか言えないんですよね。

 ほら、ここを見てください。(立花投手の投球モーション スロー映像)

 ここ、ここです。球の出どころを見てもらうとわかるんですが、ストレートも変化球も全て球の握りが一緒なんです。

 みなさんご存知の通り、フォークであれば球を人差し指と中指でしっかりと挟むように握り、手首のスナップを抑えたまま投げるのが一般的です。

 そうする事によって回転数が著しく減少し、結果として大きく落ちる球になるというわけです。

 なのでフォークを多用すれば握る際の握力でボールがすっぽ抜ける場合もありますし、暴投も当然起こり得ます。

 三振などの決め球として実用的ですが、あまり多用しすぎると肘にも負担です。

 にも関わらず立花投手はフォークをどんどん投げ込むし、さらに同じ握りでカーブもシュートも投げ込む。

 しかもその落差や曲がり具合は説明のしようがないほどに大きい。

 それに立花投手の体格や身体つきを見てもらえれば分かりますが、あれほど強力なフォークボールを投げられる握力があるようにも見えません。

 解説者としては失格かもしれませんが、打てなくて当然かもしれません」


 

 ③人間工学研究者 東京〇〇大学 磯野教授の場合


「人間工学の観点から見ますに、人間じゃないと思います」


 

 ④前北九州ファルコンズ監督 駒田 洋司の場合


「いやぁ、本当にいいピッチャーですわ。あれだけビシバシ変化球を決められたら、そりゃバッターからすれば嫌なもんですよ。

 だってどの球を待てばいいのかわからないんだから。

 ストレートを待つのか? イン・アウトコースを待つのか? カーブ? シュート?

 考え始めればキリがないでしょう。しかもどの変化球も一級品でさらにまだ底が見えていないんだからね。

 特に左バッターからすれば、インコースからアウトに流れていく球は待つだけでも相当怖いからね。

 普通に考えれば当てられるコースだからそりゃ身体は避けようとするでしょ?

 でもボールは大きく右に曲がってストライクゾーンに入るんだから、もう対策のしようがないじゃない。

 あれだけのコントロールだから避けなくても大丈夫だと頭では思っていても、やっぱり身体は避けようとしちゃう。

 だって他の投手の時は絶対に当たるんだから、それ(立花投手)に慣れすぎてもダメ。ケガしちゃうからね。

 いやほんと、あと数年早く出てきてくれたらファルコンズの黄金時代だったんじゃないかと思うほどの選手ですな。

 なんで俺が監督の時に出てきてくれんかったんやろか(笑)」



 ――現役監督たちから見た立花 聡太。



 ①東北シルバーフラッグス監督 野島 慶三の場合


「ただただ良い投手。未だにどのチームも打ち崩せていないのがその証拠でしょう。

 ウチは開幕3連戦で砥峰が一本打ったけれど、あれも会心の当たりではなかったですし、何とか攻略点は見つけないといけない」



 ②金沢オリオンズ監督 野添 高雄の場合(このインタビューはファルコンズ3連戦の前日に行われました)


「とにかく打撃は抜群だったファルコンズにハマったピースだわな。明日からのファルコンズ戦で立花が出てくる前に勝負を決めてしまいたいと思っているのが本音。

 眉唾ものだと思っていたけれど、もうここまで来れば本物だし、簡単に打てる投手じゃない。

 明日の先発は柳葉が出てくるだろうから、早い回で勝負を掛けていかないと、とは思っている。

 いずれにせよ、交流戦含めてどのチームも打てていないのだから、それ相応の対策を考えないといかんとは思っている」



 ③東京ベアーズ監督 原田 樹の場合。


「実績から言っても最高峰のピッチャーと言って過言じゃないんじゃないですか?

 私が現役だった頃も含めてああいった投球をするピッチャーはいなかったですねぇ。

 交流戦でも完全に抑えられましたから、もし日本シリーズで対戦する時は機動力含めて色々と考えないといけませんね」



 ④北九州ファルコンズ監督 副島 正の場合。

「どうやってあの球を投げてるんかって? ……そんなん俺に聞かれても分からんよ。

 ただ、立花が入った事によってウチの弱点になりつつあった中継ぎに余裕が生まれたのは大きいよな」



 ――現役選手から見た立花 聡太。


 ①東北シルバーフラッグス 砥峰 雄大の場合。

「いや、唯一のホームランが俺だというだけで監督も言ってますけど何とか当たったら入ったって感じなんで。

 とりあえずアイツって何個球種持ってるんです? え? わからない? ですよねー」


 

 ②金沢オリオンズ 大島 昇太の場合。

「いや、とにかく変化球がエグいです。しかもどの球もほんとにギリギリまでどんなコースで曲がってくるのか読めないので、山を張るのも難しいんで。

 ウチが内野安打狙いでセーフティバントを仕掛けた時も、あまりにも曲がりすぎて空振っちゃってましたからね。

 ただ、フラッグスの砥峰選手が当てたようなホームランはウチではちょっと期待出来ないんで、なんとか当てて足で稼ぐか、コンパクトな打撃を心がけるしかないかな」



 ③北九州ファルコンズ 御船 大輔の場合。

「同じチームで良かったッス。ほんと当たらないんで。

 たぶんアイツ、人間じゃないんじゃないんですかね?」



 ④北九州ファルコンズ 真鍋 康介の場合。

「立花の真価はこんなもんじゃないです。アイツ自身が言っていたように、ファンのみなさんをアッと言わせるようなピッチングがこれからもどんどん出てくるはずなんで、

 是非ともみなさんには期待していてもらいたいってところですね。……球を捕ってない僕が言うのもなんですが」




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