第37話 転移者同士の出会い
セルレインは、ストレイライザーが覚えていた壊れた槍を探すためアジュレンと3人で地下遺跡の中に入った。
幸い入口付近だったこともあり魔物に襲われることもなく目的の壊れた槍を見つける事ができた。
そして、それは2本用意できたので、担架に使うには丁度よかった。
3人は、念のため外に出る時も、周囲の確認を怠らなかった。
そして、セルレインは自分のマントを脱いで、2本の壊れた槍に四隅を縛り始めると、アジュレンもストレイライザーも、その様子を見て自分達もセルレインのマントの隅を持って槍に縛り付け始めた。
マントの固定が終わると、棒と棒の間が広がりすぎているのでマントを槍に丸めるようにして、クルクルと回して、左右の広がり具合を調整し少女を介抱している女子達の方に走っていった。
「どうだ! その子は助かりそうか?」
セルレインの質問に対して、ウィルザイアは心配そうな表情をした。
「止血はなんとかなったけど、それまでに流れた血の量が多すぎたみたい。このままだと、危ないかもしれない。直ぐに、ギルドの医療班に渡さないと危険な状態だわ」
その答えにセルレインも、残りの男子も苦い表情をした。
「仕方がない。急いでギルドまで行くぞ」
そう言うと、作ってきた簡易担架を少女の横に置き、少女の下に敷いていたマントの裾を全員で持った。
「じゃあ、移すぞ! 1・2・3!」
全員が、一気にマントを持ち上げると隣の担架の上に移した。
そして、メイノーマとアイカペオラが、少女の体にマントの余った部分を覆うようにして体を隠した。
「アジュレンは、先頭で魔物を探索して最適な通り道を選んでくれ。呉々も、戦闘は無い方がいい。それとウィルザイアは、戦闘になった際は、遠距離魔法で対処するから、しんがりを頼む。攻撃の初手は、お前の魔法になるのと後ろへの注意を頼む」
「「わかった」」
「残りは、全員で担架を持って走るぞ!」
「「「おお!」」」
そう言うと、セルレインは担架に乗った少女の頭側の一つに手をかけた。
その反対側には、ストレイライザーが、持つと、アイカペオラとメイノーマが足の方を持った。
「行くぞ!」
セルレインの掛け声に担架は一気に持ち上がる。
「じゃあ、俺が先導する!」
そう言って、アジュレンが走り出すと、その後ろを担架を持った4人が走り出し最後を魔法職のウィルザイアが追いかけた。
砂漠の中を走るのは脚がとられて走りにくいのだが、新たな転移者の少女の命がかかっていると思えばセルレイン達は必死になっていた。
2日続けて生きた転移者と出会えた事も幸運なのだが、それ以上に少女の命の危険を、なんとか回避したいという思いの方が6人には優っているようだ。
転移者は、生活ができるようになったら大半が冒険者になる。
冒険者が魔物に怪我を負わされたとしたら、パーティーメンバーでなくとも、助けるという暗黙のルールが存在する。
転移者だから、そのルールは適用されないなどという事はない。
未来の冒険者のためなら、そして、ギルドからの報酬を考えたら、転移者は必死で生かす方向に冒険者なら考える。
6人は、必死になって砂漠を走り抜けていた。
メイリルダは、転移者の少年と朝食を取った後ギルドから連絡を受けていた。
それは、少年の健康診断を行うから、ギルドの医務室に来るようにとのことだった。
ギルドとしては、転移者から新たな技術を得られる可能性があるので健康管理も大事な仕事である。
メイリルダが、転移者の少年を担当している事から、ギルドからの連絡はメイリルダに届く事から、食事の後ギルドの医務室へ向かった。
「久しぶりの転移者だが、いつもと同じ位の子供だな。以前の資料と大した差はないな。どこか悪いところもなさそうだし、……。うん、健康そのものだな」
医務室の医者の見解を、少年の横にいたメイリルダは聞いていた。
その様子を転移者の少年は、医者をジーッと見つめながら聞いていた。
「今の所、問題は無い。それに、今まで転移してきた少年少女達は、その後も、大した病気もせずにいるから、多分、今回も大丈夫だろう」
「あのー、どういう事なのですか?」
メイリルダは医者の説明を聞いていたが、なんとも言えない表情をした。
「ああ、転移者が、もし、別の世界から来たのなら、この世界の病原菌に対する抗体を持っていない可能性もあるはずなのでな。まあ、今までの資料には、そんな事は無かったようだが、今回も同じとは言えないから、この世界で、ちゃんと生きていけるかも含めて、健康状態は常に確認しておくんだ。だから、万一の時にも、対応が取れるようになるんだよ」
メイリルダは、医者の説明を聞いているのだが、よく理解できてないようだった。
すると、突然、医務室の扉が開いた。
「先生! また、転移者です。今回は、大怪我をしていて意識もありません! 直ぐに見てもらえませんか!」
それを聞いて、医者は慌ててその場から出て行ったので、その様子をメイリルダと少年は呆気に取られて見ていた。
そして、メイリルダは少年を見ると少年もメイリルダを見た。
「健康診断も終わったみたいだから、私達は寮に戻ろうか」
メイリルダは、少年が言葉を理解できないだろうが、言葉を話す事で少年が言葉を覚えさせるため声にして少年に話しかけた。
メイリルダは、少年の手をとって立ち上がると医務室を出ていった。
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