第35話 2匹のサソリの魔物
セルレイン達は走っていた。
それは、新たな転移者が現れた事もあるが、サソリの魔物が2匹いた事もから生存率は極端に下がる事になるので、急いで現場に駆けつける必要があった。
サソリの魔物が2匹居る事から、地下遺跡に冒険者が誰も入っていない事になる。
昨日、転移者が現れたとなれば、その翌日に地下遺跡を使うなんてことは全く無いといってよい。
それは、過去に転移者が現れた翌日に、また、転移者が現れた事が無かった事で、転移者の現れた翌日に地下遺跡を好んで使うものはいない。
2匹のサソリの魔物が表に居たというなら、最初に現れる魔物を誰も処理しなかった。
放置して地下遺跡に入るとなると、出る時の周囲の確認には細心の注意が必要となるので、この地下遺跡を使うなら最初に現れているサソリの魔物は倒しておく事が、この地下遺跡を使う冒険者に取って大事な作業となるのだから、放置したまま冒険者が地下遺跡を使うことは無い。
2匹のサソリの魔物となれば、最初の魔物と新たな転移者が現れた時の魔物が居ると考えられるのだ。
そして、その条件の時に現れた転移者の生存率は低い。
いや、その可能性は、限りなくゼロに近いのだ。
ウィルザイアにより、魔物に向かって放った魔法の火球は、魔物の手前に落ちたが、魔物をセルレイン達のパーティーに向けることに成功した。
魔物の周囲の様子が、はっきりと分かっていない状況で魔法を放ってしまい、転移者に当たってしまっては意味が無い。
それなら、魔物の意識を転移者ではなく、自分達の方に向けた方が転移者の生存の可能性が上がる。
それは、魔物の性質上、自分を攻撃してきた方から優先的に攻撃してくるので、ウィルザイアは、それを狙って成功した。
ただ、いつもは、1匹しか現れないサソリの魔物を、同時に2匹を相手にした事がないセルレイン達としたら、その影響がどうなるのかが気になる。
「サソリの最大の武器は、尻尾だ! 俺とストレイライザーが、それぞれのサソリの尻尾を狙う。残りは、ハサミに気をつけて、とどめをさす」
セルレインの話を聞いて、ストレイライザーがセルレインの横に出るようにして走った。
そして、その後ろを追いかけるように3人が走る。
「俺が、セルレインをフォローするから、お前達2人がストレイライザーをフォローしてくれ」
後ろの3人もアジュレンの一言で方針は決まると、ウィルザイアは走りながら詠唱を始め、先頭の2人に敏捷性の強化魔法をかけた。
砂漠のような足場の悪い場所では、機敏に動くには足の踏ん張りが効かないので、それを補うための魔法をウィルザイアは使った。
セルレイン達とサソリの魔物の距離が詰まると、セルレインもストレイライザーも剣を構えて、サソリ尻尾による初撃に備えつつ、足元のハサミにも気をつけるように走っていた。
サソリの魔物は、思った通り尻尾で攻撃をしてきた。
その尻尾の先にある尖った剣のようになった尻尾が、体を狙ってサソリの魔物の頭の上から伸びてきたのを、剣の鎬を使って尻尾の攻撃を上がるように躱しつつ、刃を尻尾の方に向けて振り切った。
尻尾の先端は、途中から剣で切られて宙を舞った。
魔物は、大きな鳴き声をあげつつ、残ったハサミで攻撃を始めたので、直ぐに間合いをとるように下がった。
セルレインもストレイライザーも、お互いに分かっていたので、初撃の攻撃においてサソリの魔物の最大の攻撃手段を取り除いた。
後ろに下がったセルレインの後からアジュレンが、剣で、サソリの魔物の右のハサミの付け根を狙って上から斬り付けて切り落とした。
ストレイライザーの方は、メイノーマとアイカペオラが同時にサソリのハサミを切り落としていたが、セルレインの方は、2人で対応していたので、右のハサミを切り落としても左のハサミが残っている。
そのハサミを使って、アジュレンを掴もうとしたが、それを一旦後ろに戻ったセルレインが、左のハサミが魔物の頭の前に出たところに、剣で一気に切り落としながら、その勢いで頭を二つに割った。
もう一方のストレイライザー達のサソリの魔物は攻撃手段を失うと、慌てた様子で後ろに下がり始めたが、ストレイライザーが間合いを一気に詰めて剣を魔物の頭に叩き込んだ。
魔物は、どちらも動かなくなると、身体から黒い霧のような魔素が炎のように漂い始めた。
体の表面から魔素が炎のように現れたら、魔物は完全に死んでしまっているので、あとは魔物のコアを手に入れるだけだ。
「ストレイライザーとアジュレンは、魔物のコアを拾ってから岩まで来てくれ」
セルレインは、そう言うと走り出した。
それは、岩の側に現れたであろう転移者を確認するためだ。
そんなセルレインを、アイカペオラとメイノーマが追いかけていくと、後から来たウィルザイアもストレイライザーとアジュレンを通り越して3人を追いかけていった。
魔物を倒すだけでは終わらない。
岩の付近に居るであろう転移者の安否を確認するために向かったのだ。
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