転移者の少年が現れた翌日

第33話 翌日のセルレイン達


 セルレイン達は、転移者の少年をギルドに連れて行った事で多額の報酬を得た。

 その夜は深酒をしてしまい、全員がいつもの時間に起きることはできなかった。

(まあ、一生に一度でも転移者に出会えただけでも、幸運だったのだから、こんな日が有ってもいいだろう)

 セルレインは、目を覚ますとベットに腰掛けてメンバーの男子達が目を覚ますのを待っていたが、2段ベットの上に寝ている2人とも起きる気配が無かったので仕方なく立ち上がり窓の方に歩いて行った。

 確認するまでもなく、太陽は南に差し掛かろうとしていたのは、窓から差し込む光の角度で分かっていた。

 だが、セルレインは日差しを浴びたいと思った様子で窓に向かった。

 そして、窓の外の太陽の位置を確認しつつ外の景色を見た。

 外は、僅かに緑が有るだけだが、その緑を見ることと窓越しの日差しを浴びることで安らぎを覚えているようだった。

 そんな事をしていると、セルレインの動きに残りの2人が気がついたように目を覚ました。

 2人は、眠い目を擦りつつセルレインを見た。

「おはよう、セルレイン」

 寝ぼけたような声でアジュレンが声を掛けると、セルレインは自分の上のベットを見た。

「おはよう、セルレイン。今日はどうする」

 ストレイライザーは、アジュレンのように眠そうでは無かったので、目は覚ましていたようだが、周りが誰も目を覚さなかったこともあり横になっていたようだ。

「おはよう。もう、今日もそろそろ半分終わりそうだな」

 セルレインの言葉に、ストレイライザーは仕方なさそうな表情をしただけで答える様子は無かった。

「ふーん。昨日は飲み過ぎたからな」

 メンバー達は、高額な報酬でいつもより多めの酒を飲んでいた。

 ただ、誰も頭が痛そうな様子も具合が悪そうな様子も無い。

「だが、二日酔いになっていないのは良かったな」

「ああ、流石に二日酔いになるほど飲むのは卒業だ。心地よい程度が一番だよ」

 アジュレンが答えた。

「それじゃあ、女子達を誘って食事でもするか」

 セルレインの言葉に、アジュレンもストレイライザーも着替えるために動き出した。


 3人が部屋を出て女子部屋に誘いに行こうとするとドアの前にメンバーの女子達がいた。

「あ!」

 ドアを開けると、ノックをしようとしていたウィルザイアが声を上げた。

「おお、お前達のところに行く予定だったんだ。どうだ、これから食事にしないか?」

「ええ、こっちもそのつもりよ。昼には少し早いけど、朝食も食べてないから、今すぐに何か食べておきたいと思って呼びに来たのよ」

 セルレインは、ウィルザイアの言葉を聞いて、お互いに考えていることは同じだと表情に出した。

「そうだな。今日の、これからの事も有るから食べながら話そう」

 そう言うと全員で食事のため外出したが、時間的に入れる店は限られており食べるものも決まってくる。

 6人は、黙って歩き出すが、誰もが何処の食堂に行くかを聞くことは無かった。

 こんな昼近くの時間は、昼用の仕込みをしている最中なので、店を開けている食堂は少ない。

 食べられる場所は限られていたので、誰も何処で食べるとも言わず歩き出していた。


 食事をしていると、アイカペオラが話をした。

「ねえ、もう、こんな時間だし今からギルドに行っても、美味しい依頼なんて無くなっているよ。午後だけしか狩りをする時間も無いなら、また、あそこの地下遺跡に行ってみない?」

 アイカペオラの話は午後の予定だった。

「そうだな」

 セルレインは、気のない返事をした。

「昨日、転移者が現れたって話は、もうギルドを使う冒険者は聞いているはずだから、地下遺跡に向かう連中は居ないだろうな。あそこを使った時、運が良ければ転移者に出会えるかもしれないが、昨日現れて今日も現れる可能性はゼロに近い」

 アジュレンが、アイカペオラの話から状況を話した。

「ああ、そうね。今まで二日続けて転移者が現れたなんて話はないわ」

「だったら、今日は地下遺跡を使う冒険者は誰も居ないなわ」

「きっと、居ないだろうな」

「ああ、危険度の割に稼ぎが悪いから、転移者が現れた翌日なんて誰も行かないだろうな」

 セルレインは、全員が今日も狩りに行こうとしていることが意外に思ったようだ。

 昨日、高額な報酬を得たのに、今日も出るのが昼近くなっても、また、狩りに行こうとしている。

「お前達は、根っこから冒険者だな」

 セルレインは、ボヤくように言うが、その表情は嬉しそうだった。

 てっきり、今日は狩りは行かず休みにしないかと言い出すだろうと思っていたのだが、その思惑が良い方向に外れたと思えたからだ。

 そして、セルレインも今日の地下遺跡は誰も行かないだろうと思っていたので、短時間で入口付近だけでも、それなりの数の魔物のコアを手に入れられると踏んでた。

 6人で囲んでいるテーブルで、5人がセルレインを見ていた。

 それは、リーダーのセルレインに、食事の後地下遺跡で狩りをすることを決定させようと思って見ていた。

 そんなメンバー達の様子を見て、セルレインは心地よく思ったようだ。

「そうだな。じゃあ、食べたら準備して直ぐに出よう」

 その決定を聞いて全員が嬉しそうにした。

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