第32話 ギルドの寮に戻った2人
メイリルダは、少年を連れてエリスリーンの執務室を出るとギルドの寮に戻り、自分の荷物の整理を行おうと思い与えられた部屋に入った。
部屋に入り自身のバックを見ると少年の物が無い事に気がついた。
少年は、砂漠で助けられて気絶したままギルドに運ばれてきた。
それをメイリルダが、下着を含めて衣服を着させたのだから、少年の持ち物は、今、着ているものだけとなる。
メイリルダは、少年の顔を見つつ考えたが、仕方無さそうに自身のバックの中身をタンスに収納し始めた。
(どうしようか? 後で管理人さんに聞いて、この子の着る物とか聞いてみようかしら)
自分の持ってきたバックから、自分の衣類をタンスにしまうと、どうしようかと思った様子で少年を見ていると入り口のドアがノックされた。
「メイリルダ、荷物が届いたわよ」
扉の向こうから管理人の声がしたので、メイリルダは返事をしつつドアを開けに向かった。
荷物と言われて、メイリルダは何の荷物なのかと思ったようだが、それより相手が寮の管理人だったことで、自分の考えよりドアを開けることを優先した。
ドアの向こうには管理人が立っており、ドアの横には木箱が置いてあった。
「これ、さっきギルド支部から届いたわ。転移者は何一つ身に付けないで現れるからね。ギルドとしても分かっているから予め用意はされているみたいよ。これから後の予定も、色々、考えられているはずよ」
メイリルダは、納得したような表情をした。
(転移者は、今までも居たのだから対処方法もギルドとして確立しているのね)
メイリルダは、持ってきてもらった木箱を見てから管理人を見た。
「ありがとうございます。自分の物を整理していたら、この子の着替えをどうしようかと思ってたんです」
「それじゃあ、よろしくね。後、夕食までには1時間位有るから、それまでに片付けておくんだよ。それと木箱は使わないなら下に持ってきておくれ」
そう言うと管理人は階段の方に行ったので、メイリルダは木箱を持ち上げようとするが意外に重かったようだ。
(結構、重い。管理人さんって、とても力持ちなのかしら)
メイリルダは、仕方なさそうにドアの横に置いてある木箱を引きずって部屋の中に入れてからドアを閉めた。
「多分、入っているのは衣類だと思うけど沢山有ると重いのよね」
メイリルダは独り言のように言うと、木箱を引き摺るように持って行こうとすると、木箱の後ろを少年が押すようにしてくれた。
(あら、この子、私のしようと思う事が分かるのね)
メイリルダは、嬉しそうに少年がしてくれている事を見つつ木箱をタンスの前に運び、上蓋を横にズラしてから外すと中を確認した。
そこには、子供用の下着や上着が何着か入っていた。
(言われた通りの衣類か。それにしても、こんなに沢山入っているなんて何だか手厚いわね。……。あら、これって季節毎の衣類まで揃っているんだわ。だから、ここまで重かったのね)
メイリルダは、黙って木箱の中から衣類を出してはタンスに収納すると、何かを思いついたようだ。
(そうよね。転移者が現れるのって全く規則性が無いなら、どの季節に現れるかなんて事も決まってないなら、暑い時期も寒い時期も関係ないとなったら、それに合わせて用意するより、一つの箱で全部の季節用に対応しておいた方が面倒がないって事なのかもしれないね)
メイリルダは、納得したような表情をしつつ少年用の衣類を整理していった。
4人部屋なので2人分では、収納スペースに余裕が有った事から、メイリルダは種類毎に使うタンスを分けて収納していった。
収納する際も、メイリルダは少年に衣類の名前を教える事は忘れてなかった。
管理人に言われた時間に、夕食を寮の食堂でとるため2人は部屋を出た。
食堂はギルドの職員用の場所なので、一般客は居ない事からメイリルダは周囲を気にする事なく楽しそうに少年と食事をしていた。
2人は、主に声をかけるのはメイリルダで、少年は言われたことを繰り返すだけだったが、その発音についてメイリルダには初めての時より数段上がっていることに喜んでいた。
周りから見ても、綺麗な発音をしているように聞こえていたので、知らない職員からは少年が転移者とは思わなかったようだ。
メイリルダが転移者の少年の担当になった事を知らなかった職員達は、メイリルダの親戚が、この国に来て言葉を教えているのかと思ったようだが、転移者の少年をメイリルダが担当した事を知ってる職員が教えると、食事をしている職員達の興味は少年に向いた。
しかし、少年とメイリルダに声を掛ける事はせずに、遠巻きで見ているだけだった。
セルレイン達が、早めに魔物の狩を切り上げた事によって、転移者の少年を助けギルドに戻った時間が、ギルド支部が一番閑散としている時間帯だった事もあり休憩して詳しい話を知らない職員もいた。
新たな転移者が現れたたとしても、数日は医務室で様子を見られていると誰もが思っており、直ぐにギルドの寮に移動しているとは思っていなかった事から、知っている職員に言われるまで周囲は、その少年が誰も転移者だと気がつくまでに時間が掛かった。
初めて転移者の世話することになった、メイリルダには余計な事を横から話しかけられる事もなく、ただ、変な親戚を連れてきたな程度に思われていた事から、変な気を回さないで済んだ環境がありがたかったようだ。
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