第28話 誓いのキス、の日

 暑い。


 今までよりも広いベッドの上、そっと距離を置く。

 するとちーちゃんの手が私を抱き寄せようとする。

「ちーちゃん、暑いから無理」

 そう言うと、ちーちゃんは口を尖らせ、無言でエアコンのリモコンを操作した。



 新年度の4月が過ぎ、梅雨に入る前に引越しをした。

 5月なら暑くないだろうと思っていたのに、無茶苦茶暑い。

 テレビでも夏日だのなんだのとニュースになっている。


 これから、ちーちゃんと二人で暮らしていく。

 まぁ、何度もお泊りしているから、改めてどうっていうこともないし、仕事の方は相変わらず忙しいし、なにより引越しで疲れたので、早く寝ようと思っていたのだが……


「あれ、なんか寒っ」

「くっつけば暖かいよ」

「ちーちゃん、エアコン何度にしたの? 電気代高いんだからね」

「タイマーにしたから……ね、しよ?」


 いや、そんな可愛い顔で言われたらさ。

 私だって、したくないわけじゃないしさ。

 なんなら引越し準備で最近してなかったしさ。


「タイマーは何時間?」

「1時間」

「足りるかな?」

「えっ」


 自分で誘ったくせに、1時間程度で終わると思ってるわけ?

 この私を舐めんなよ。

 いや、思い切り舐めてやるよ? なんてね。





 それほど広い部屋じゃないから、冷房を付ければすぐに涼しくなる。


「ちーちゃん、寒くない?」

「ん、ちょっと寒い」

「温めてあげる」

 ガバッと抱きついて、身体をさする。

「うぅ」

 私の腕の中で小さくなっていてなんとも可愛らしい。

 頭も撫で、背中からお尻も丹念に撫で上げる。

「ひーちゃん、やらしい」

「期待してるくせに」

「してないもん」

「そっか」

 手を止めてみる。

「うぅ、いじわる」

 小さく呟いている。

「どう、暖かくなった?」

 顔を覗き込んだら、赤くなってるし。

「少しは……」なんてモジモジしてるし。

 いつもの元気はどこへやら、こういう時はアレだな。

 そっと唇を触れるキスをする。

 ほら、笑顔が出てきた。

 何度も触れては離す、を繰り返していると、どちらからともなく深い口付けへ変わっていく。

「んん……はぁ」

「暑い、脱ぐ」

「脱がせてあげる」

 こうなってくると、息もぴったりだ。

 二人で脱がせ合う。

 全裸になるとヒンヤリするが、肌を合わせればそんなことも気にならなくなる。

 ちーちゃんの首筋から耳の下へのキスを降らせる。ちーちゃんの匂いがするから、好きな場所。そして、ちーちゃんも感じる場所。

 そのまま耳たぶをなぶる。

「んん、あっ」

「耳、弱いよね」

「もう」

「ここも?」

 胸の膨らみと、真ん中の突起を指で摩りながら耳を舐める。

 感じる場所、弱い場所、好きな場所。攻めたり、焦らしたり、同時に攻めたり。

 ちーちゃんが感じれば感じる程、私も気持ち良くなっていく。

「ちーちゃん、いい顔してるよ」

「やだ、もう、見ないで」

「いい声で啼いてるし」

「うぅぅ」

「我慢しないで」


 これからは二人一緒、どちらかが我慢したり犠牲になったりしないよう、何でも言い合える関係性でいたい。


「うわ、ここ凄いことになってる」

 ちーちゃんの敏感な場所が潤っている。

「もう、そういうこと言うなぁ」


 でも、相手を傷つけないように、気遣うことも必要だ。


「ごめん、でも大丈夫、私も同じだから」

「あ、ほんとだ」


 愛しい人と愛し合い、お互いに思いやり、感じ合い。

 そして、二人で一緒にいこう。



「結局、汗だくだね」

「タイマー切れちゃったからね」

「シャワーと水分補給に行こうか」

「あ、その前に」

「ん?」

 改めて、ちーちゃんにキスをする。

「今日はキスの日なんだってよ」

「そっか、良い日に引っ越したね」

 ちーちゃんからもキスをしてくれた。


 幸せになろうね。

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