第21話 目が覚めたら

「ねぇ、なんか今年の冬は寒いよね」

「ほんとにね、誰だ暖冬だって言ってたのは?」

 あっためて〜と言いながら、ひーちゃんのベッドに潜り込んだ。


 年が明けてからというもの。

 新しい人が入居してきたり、体調を崩す人がいたりと仕事が忙しく。

 また、お雑煮を作って提供したり、絵馬に願い事を書いてもらって、お正月気分を感じてもらったり。

 鏡開きの日には、お汁粉を作り、お餅が無事に食べられるかドキドキしたり。

 季節毎、いろんな行事もあってーー今は節分の豆まきの準備だ。


 そんな忙しさの中の、癒しのひと時。

 明日は二人ともお休みだ!


「ふあぁ、ちーちゃん足冷たいね、冷え性?」

 欠伸をしながらも、心配してくれる優しい人。

「眠そうだね」

 ひーちゃんは、早番で朝が早かったから、今すぐにでも寝てしまいそうだ。

 眠い時に寝てしまうのが一番気持ちいいよね、このまま寝かせてあげよう。

 ヨシヨシと頭を撫でてあげれば、目を閉じて何だかモニョモニョ言っている。

 可愛い動物みたいだ。

 私はまだ眠くないハズなのに、ひーちゃんの寝顔見てたらいつの間にか寝ていたようだ。

 ようだ、と言うのも。

 なんだか変な感覚で目が覚めたからで。


 なんだ、これは?




 ひーちゃんに触られている⁉︎

 どこをって?

 私の大事な場所を、だよ。


 そりゃ、恋人同士でベッドの中だから、触られるのはおかしい事じゃないよ。

 でもね、ひーちゃん寝てるのよ。

 狸寝入りじゃなくて、ちゃんと寝てるよなぁ、これ。

 寝ながらだから、時々指が止まるんだけど、しばらくしたらまたゆっくり動き出す。これがまた、絶妙な感覚で。

「んっ」

 いつから触られてたのか、私のソコは既に濡れていた。

 この状態で起こしたら、絶対勘違いするから起こせない。手を掴んでやめさせたら起きちゃうだろうな。放っといたら止めるかな?

 それが間違いだった。

 私の眠気はすっ飛んでいて、高ぶった神経はひーちゃんの指先に向いていたため。

「うっ」

 声を我慢するのが大変なほど、感じてしまっていた。

 なにこれ、自分でするより全然イイ。

 何かの拍子に『ぬぷっ』というような音とともに、ひーちゃんの指の第一関節までが、私の中に入った。

「…っ」

 そこでも、ゆったりと動いたり、時々止まったり。

 あぁ、もう。

 気持ちいいけど、このままじゃイケない。生殺しじゃん。もう無理。

 ひーちゃん、お願い! このまま寝てて。

 そう願いながら、ひーちゃんの腕を掴んで、指を奥へと導いた。良いところに当たるように動かし、自分も動いた。

「あ、イク」

 その瞬間、ひーちゃんの目が開いた。

 バッチリと目が合って。

 うわっ、なんで。でも、もう。

「ひーちゃんお願い、目を閉じて」

 何の言葉も発せず、ひーちゃんは目を閉じて。私は高みを目指し、そしてイった。



 こんなに事後が気まずいのは初めてかも。動くに動けない。ひーちゃんの動きも止まってるーー指はまだ私の中にーー

「目、開けてもいい?」

 ひーちゃんは、律儀に目を閉じててくれていた。

「ダメ! そのまま聞いて! 違うの、勘違いしないでね。ひーちゃんが寝ながら触ってきたからこうなったの。私がひーちゃんの指使ってオナニーしてたわけじゃないからね」

 結果的には同じでも、過程が違うから。

「あぁ、私ならやりそうだね」

 ひーちゃんは、静かにそう言って目を開けた。

 その目は妖艶に光っていて、私の中の指が動き出した。

「えっ、ちょっと、まだだめ」

「ん?」

「イったばっかりだから」

「うん、知ってる」

「いや……だか…ら、だめだっ......」

 ひーちゃんは加減をしながら動かしているようで、また気持ち良くなってくる。

「ちーちゃん、顔えろいなぁ」

 見つめられて、口付けられて。

 だんだん激しくなって、再び高みへといざなわれた。


 落ち着いた後、ひーちゃんは「ごめんね」と言いながら私をきれいにしてくれた。

「我慢出来ずに襲っちゃった」と笑った。

「そんな可愛く言われても」

 それほど怒っているわけではないけれど、むっとした表情を作ってみる。

「そうだよね、ごめん。でも……」

「なに?」

「想像してみてよ! 目が覚めたら、自分の指でイク寸前の顔が目の前にあるんだよ?」

 ひーちゃんが、もし私の手を掴み、私の指で気持ちよさそうにヨガっていたら?

「それは、シちゃうね。間違いなく」

「でしょ?」

「今日、休みで良かったね」

「ん?」

「想像したら、シたくなった! 今度は私が......ね?」


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