第18話 ポッキーの日

「今日、何の日か知ってる?」

「あっ」

 ちーちゃんの言葉で思い出した。

 急いでメッセージを送る。


『誕生日おめでとう』と、簡潔に。

 生まれてきてくれてありがとう、という想いを込めて。


「何してるの?」

 ちーちゃんは不思議顔。

「今日、息子の誕生日だった」

「そうなの? 会わなくていいの?」

「うん、この前プレゼントは渡したし、平日だから学校あるしね」

「ふぅん、じゃ二人でお祝いしよう」

「ん?」

「ひーちゃんの出産記念日でしょ?」

「あぁ、そっか、ありがと」


「ではでは、はい、どーぞ!」

 渡されたのは、ポッキーの箱だった。

 食べちゃダメだよ、と念を押されて。


「ポッキーゲーム、やったことある?」

「ない」

「だと思った。勝負しよ」

 ニコニコ顔のちーちゃんは、まるで自分が勝つって確信しているようで。

「いいよ、やったろうじゃん」

 受けて立つ。

「なに? キスしたら勝ち?」

「違うから。折らずにたくさん食べた方が勝ちね」

「ふぅん」



「ちょっと、ひーちゃん聞いてた? キスしても勝ちじゃないって言ったよね?」

「うんうん、わかった。まだあるから全部やろ!」

「もう、ただキスしたいだけじゃん」


 なんで分かったんだ?

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