第8話 決定事項
「ちょ、ちーちゃん! そこはダメ、無理、あっ、やばっ......っ」
どうして、こんな状況になってるんだろう。
普通に仕事の話をしていたハズなのに。
「ひーちゃん、爪切るの好きなの?よく切ってるよね?」
自分の爪じゃなく、利用者さんの爪だ。確かに、仕事中、手が空いた時には爪を切ってるかも。
「好きっていうか、気になるんだよね?お風呂介助の時とか特に。足の爪が伸びてる人が多くてさぁ」
「お風呂介助、多いもんね。この時期は暑くて大変じゃない?」
「そうでもないよ、私、シャンプーするの得意なんだぁ」
ちょっとだけ自慢してみる。
「そうなの?じゃ、今度洗って?」
「いいよー」
「やった!」
ちーちゃんがニヤニヤしていたので。
「念のため言っとくけど、一緒には入らないよ」と言うと。
「は?なんで?じゃ、どうやって洗うの?」と不思議顔。
「Tシャツと短パン。いつものお風呂介助の格好じゃん」
「えぇー、一緒に入ろうよ!」
「嫌! ちーちゃん変なことするもん」
「しないよ」
「絶対?」
「変なことはしない。変じゃないことはするかも」
「変じゃないことって何だ?」
「さぁ?」
顔を見合わせ、二人でクスクスと笑った。
うん、ここまでは良かったんだ。私があんな事を言わなければ。
「シャンプーは得意なんだけどさぁ。お風呂介助で苦手なことがあってさぁ」
「なに?一応、私の方が先輩だから、言ってごらん」
お、急に先輩風を吹かせる、ちーちゃん。
「靴下を履かせるの」
「ん?」
「なんか、いつもモタモタしちゃって。上手く履かせるコツってある?」
「コツって言われてもなぁ......あ、実践してみよう」
そう言うと、ベッドを降りて引き出しから靴下を持ってきて、「ほい!」と渡された。
向かい合って、ちーちゃんの足に靴下を履かせる。
うーん、やっぱりモタつくなぁ。
「ひーちゃん、もしかして不器用? 貸して! 足出して!」
「はい」
今度は履かせてもらう。
スッと履けた。なんで? も一回やって? とお願いしたら、何度かやってくれて、そのうちに......
「ちょ、ちーちゃん! なんで足舐めてるの? そこはダメ、無理、あっ、やばっ......っ」
「ほんとにダメ?気持ち良くない?」
「気持ち......いい...のかな」
ちーちゃんは満足気に笑って、また足趾に舌を這わす。
「はぁ......んっ」
いつもと違う快感を、シーツを掴んで必死に逃す。
どれだけそうしていたんだろ。
頭がボーっとしてきた。
「ちーちゃん、もう......おかしくなりそ」
「どうして欲しい?」
「来て.........抱いて」
「素直でいいね」
服を脱がされ、触られ。
「凄っ、もうこんなに濡れて? そんなに感じたの?」
ちーちゃんは、宝物を見つけたようなキラキラした目をした。
「変......だよね、軽くイっちゃったの」
「変じゃないよ、嬉しい」と、ほんとに嬉しそうに笑うから、「続き、していい?」と聞かれて、頷いた。
「ひーちゃん、今日はとっても素直だったね! 声もいっぱい出てたし」
「うっ」
攻められ続け、ようやく解放されてーーでも充実感に満たされていた時に、そんな事を言われて赤面した。
ただ、思い当たる節もあったから。
「いつもは素直じゃない?」と聞いた。
「受けの時は抵抗が強いもん」
照れ屋さんなんだよね? そんなところもそそられるんだけどーーなんて余裕の笑顔だ。
「むむっ」
少しだけ悔しくて、ぶーたれていたら。
「ひーちゃん、愛し合ってる者同士が触れ合いたいと思うのは変なことじゃないんだよ。触れ合って気持ち良くなるのも、おかしなことじゃない」
「うん、そうだね」
「だから...お風呂で触れ合うことは、変なことじゃないよね?今度一緒に入ろうね!」
満面の笑みで言われた。
どうやら、決定事項らしい。
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