第2話 GW気分

「ねぇ、ちーちゃん。ゴールデンウィークだね」

「そうですねぇ、でも普通に出勤ですよ?」

「だよね」


 付き合うことになった私たち。


「今日、来る?」

「今日、行ってもいいですか?」

 という感じで


 会える時は、たいてい私の部屋でくつろいでいる。

 大したことはしていない。

 テレビを見たり。

 DVDを見たり。

 お喋りしたり。


 最初に

 勢いでキスをしてしまったけれど。

 それ以降は、特に何もない。

 ちーちゃんも何も言わないし。


 小説の中では、たまにはアレコレしてしまうけど

 実際は、こんなもんだよねぇ。

 わからないけど...



 そんなこんなで世間はゴールデンウィークに突入だ。


「じゃあ今日、仕事終わったらデートしません?」

「いいねぇ。GW気分を味わうために、たまには外でご飯食べようか」

 幸い今日のシフトは一時間差だ。

「休憩室で待ってるね」

「はい」




 日中は晴れていて、利用者さんの洗濯物もよく乾いた。

 うちのも干してくれば良かったなあと思ってたんだけど。


「曇ってきたね〜」

「そうですね、降らなきゃいいけど」

「大丈夫そうじゃない?」

「じゃ、行きましょうか」


 ゴールデンウィーク最終日ということもあって、そこそこ混雑していたけれど

 カジュアルなダイニングバーに入った。

 二人ともそれほど強くはないので、食事中心だけれど

 最初の一杯はアルコールにした。

「「乾杯」」


「おつかれさま」

「働きましたねぇ」

「私は明日休みだけど、ちーちゃんは明日も出勤だよね」

「でも、遅出だから朝はゆっくり出来ますよ」

「そうだね」

「あ、今日はここ、私が出しますね!いつもご飯食べさせてもらってるので」

「え、いいよいいよ。年下に奢ってもらうわけにはいかないよ」

そう言うと、ちーちゃんはちょっとムッとして

「職場では私の方が先輩ですよ?」

 と言う。

「それはそうだけど。じゃ、割り勘にしよ」

 そう言えば、さらにムムムとなってる。

「私、奢られるのはもちろん好きですけど、奢るのも好きなんですよ。幸せな気持ちになるから。でも割り勘はちょっと嫌かも。」

 好きな人とは特に。と付け加えて言う

「わかった、じゃ今日はご馳走になるね」

 そう言えば、ニッコリと笑う。


 あれこれ話をしながらご飯を食べて

 同じ職場だと話が尽きないけれど

 そろそろ帰ろうかとお店を出れば

 小雨がパラついていた。

「このくらいなら大丈夫そう」

「酷くなったら途中で傘買おう」

 とか言いながら歩き出したのが間違いだったか

 家まであと少しのところで突然土砂降りになり

 おまけに雷も鳴り出した。


 ダッシュで部屋へ駆け込んだけど

 2人共びしょ濡れだ。


「タオルタオル!ダメだ追いつかない。ちーちゃん、シャワー使って!」

 体が冷え切ってる。

「え、でも。ひーちゃんも濡れてるよ」

「私は大丈夫だから」

「じゃ、一緒に」

「・・・いやいや、2人じゃ狭すぎるから」

 問答無用で押し込んだ

 危ない危ない。


 とりあえず自分は着替えて

 タオルと部屋着と新品の下着あったっけ?

 あった、良かった。


「ありがとうございました」と言って

 ちーちゃんが髪を拭きながらリビングに来た。

「ちゃんと温まった?」と聞いた時

 ちょうどピカっと光ってドーン!と大きな音と共に雷が落ちた。

「わっ」

 驚いたと同時に、ちーちゃんが抱きついていた。

「ん、温まったね、良かった」

「ひーちゃん、なんでそんなに優しいの?」

「だって、ちーちゃんは大事な・・・恋人でしょ?」

 そう言った途端、すっと身体を離し

「ひーちゃんもシャワーで温まってきて!」と言う。

「あ、うん」

 なにか気に障ること言ったかな?

 首を傾げつつお風呂場へ。

 先に、さっき着替えた濡れた服を、ちーちゃんの服と一緒に洗濯機へ入れ回す。

 それを見てたら、胸がキュッとなった。

 なんだろこれ?


 シャワーを済ませ

 キッチンで飲み物を準備して持っていく。

 スマホをいじっているちーちゃんの隣に座ると

 待ってましたとばかりにしなだれかかってくる。

 あ、まただ。

 胸が締め付けられる感じ。

「もうすぐ洗濯終わるけど、うち乾燥機ないんだ。すぐ近くにコインランドリーあるから…「土砂降りですよ?」

 冷たく突っ込まれた。

「そうだね、止まないかなぁ」


 体を起こしたちーちゃんが少し強めに

「ひーちゃん」と言うから

 思わず「はい」と返事をする。

「泊めてくれないの?」

「えっと…お布団一組しかないし…」

「いいですよ、床で寝ます」

「いや、そういうわけには」

「じゃ、一緒に寝ましょ」

 キュッ

 この胸の圧迫感は、まさか狭心症?

 違うだろ!

 私の1人ツッコミをよそに

「ダメですか?」

 そんな可愛く言われたら

「ダメじゃない…」




「ゴールデンウィーク終わっちゃいますね」早かったな。という感想付きだ

「仕事してたもんね。今度、休み合わせてどこか行こうか」

「はい」

 嬉しそうに笑う。


 お昼にも同じような会話してたなぁ。

 あの時は、今のようなーー同じベッドで並んで寝ているーー状況になるなんて思いもせずに。


 お試しで始めた恋だけど

 いつの間にか夢中になってた。

 意識して自制していたけれど

 それももう無理だろうな。


「狭くない?ベッドから落ちないでよ」

「大丈夫です、ひーちゃんこそ、お布団かかってないじゃないですかぁ」

 掛け布団を肩まで上げてくれながら

 上から見おろされる形になっていることに気付く。

 あっ

 と思った時には既にキスをされていて

 あまりの早技に驚いて目が合えば

 少し不安げだったので

 今度は私からキスをした。

 何度か唇を重ねるうちに深いキスへと変わる。

 舌を絡め合い息が激しくなっていく。

 ちーちゃんが私のパジャマのボタンに手をかける。

「ちょっと待って」

「ごめんなさい、嫌ですか?嫌だったら…」

「そうじゃなくて…恥ずかしい」

 乙女の恥じらい…ではなく

 これから衰えていくばかりの身体への恥じらいだ。

 ちーちゃんに幻滅されたくはない。

「…電気消します?」

「うん」

 リモコンで保安灯を消せば真っ暗になった。


 真っ暗な中でもちーちゃんの手は、的確に私の胸を捉えてた。

 優しく揉みしだくーー強すぎず弱すぎず。

 首筋にキスを落としながら。

「あっ…」思わず吐息が漏れる。

 あぁ、やっぱり女の子は気持ちいいなぁ。

 匂いだとか柔らかさだとか可愛らしさとか。

 愛撫を受けながら、私もちーちゃんの背中を撫で回す。

 ちーちゃんの手はパジャマの裾から入ってきて素肌に触る。

「ねぇ、ちーちゃん」

「今度はなんですか?」

「あ、ごめん」

「怒ってるわけじゃないですよ」

「ちーちゃんは、する方とかされる方とか…そういうの、あるの?」

「え…私はどちらでもオッケーですけど」

「じゃ、私がしてもいい?」

「へ?」

 驚いている隙に態勢を入れ替える。

 もう目も慣れてきて、ぼんやりと輪郭は分かる。

 返事を待たず

 頬に手を添え唇を奪う。

 すんなりと受け入れられる。

「少しでも嫌だったら言ってね」

「ひーちゃんになら何されても構わない」

「そんな可愛いこと言われたら…」

 どうにかなりそうだ

 いや、もうなってるか。




 小説の中で濡れ場も書くけれど

 実際の場面ではそういう知識は必要なく。

 ただ愛しい人に触れたい

 一つになりたい

 溶け合いたい

 そんな気持ちで体が動いた。


 唇から首すじ、うなじ、耳へとキスを降らし

「耳、弱いの?」

 反応の大きかった耳を重点的に舐める。

「うぐっ」

「声、我慢しないで」

「あんっ」


 やっぱりそうだ

 責める方がしっくりくる。


 部屋着の下へ手を滑り込ませて直に乳房に触れる。

 張りのある弾力が若さを主張する。


「わがまま言っていい?」

「なんですか?」

「ちーちゃんの裸が見たい」

 自分のは見せたくないのに

「ほんとわがまま」

 そう言いながらもリモコンを手に取った。


「自分で脱いで」

「どこまでわがままなんですか?」

 そう言って起き上がり、脱ぎ始めた。

「言いなり?」

「惚れた弱みです」


「綺麗…」呟いて、胸に顔を埋めた。

 片方を手で愛撫しながら、もう片方は口に含む。

 可愛い喘ぎを聞きながら、舐めたり甘噛みしたり。

「肌もスベスベ」

 脇腹から太ももへと手を滑らせる。

 内側を触れば、既にソコは充分湿っていて

 濡らした指で尖を擦れば腰が浮いた。

「ココがいい?」と聞くと、コクリと頷く。

 優しく触ってみたり、強めに押してみたり

 表情の変化を見ながら好みを探る。

「…っや、見ないで…」

「可愛い」

 愛撫を続けながら唇を舐める。

 半開きの口から舌を挿れれば、すぐに絡め合う。

 息継ぎのために唇を離せば、恍惚とした表情で

 もっと淫らなちーちゃんを見たいと思ってしまう。

 体を下にずらし、脚を開いて割って入る。

「え、ひーちゃん?」

 僅かな抵抗だったので構わずに

 今まで弄んでいた場所に口づける。

 入口の蜜を掬い上げ、尖ったソレも舌で転がす。

「ぁあ‥」

 喘ぎが大きくなる。

「ぃや‥」

「嫌?」

 顔を上げて聞くと、首を横に振る。

「っやじゃない」

「正直で、いい子だね。どうして欲しい?」

自分にSっ気があるなんて知らなかったな。

「続けて欲しい」

 舌と指での愛撫を続ける。


「ん..ダメ....」

 動きを止めると

「..じゃない」

 可愛い


「ぅう..ぁあ..イク...」

 可愛く達した


「ほんと狡い」

 私の部屋のシングルベッドで、ちーちゃんを抱きしめている。

「ごめん」

「怒ってるわけじゃないけど」

「けど?」

「ひーちゃん、初めてじゃないよね?」

「ん?」

「女の子抱くの...」

「…そんなに良かった?まだ挿れてないのに?」

「な、何言って..」

 恥ずかしそうに顔を埋めた。


 しばらくそうしていたら

 スースーと寝息が聞こえてきた。

 狡くてごめん

 小さく呟いた。

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