第3話 風の住人
風が吹いている…
あぁ… なんて奇麗なの…
七色に輝く風なんて はじめて見るわ
踊っているのかしら…
いろいろな歌が響き合いながら…
風達が交じり合って… 楽しそうだわ…
空にも 彩とりどりの星が輝いて…
衛星… なんて大きくて、 綺麗な赤い色をしているの
あっ… くろい
黒い 渦に 風達が吸い込まれていく…
あぁぁぁぁ…… … !
蒼白い光が見える
風が 大地で渦巻いている
色々なところで渦巻いているわ
あっ、 どこへ行くの…
暗くて寂しいわ…
青い星…
そうね、 明るくて楽しそうだわ
みんなで行きましょう
あそこへ
ひ…
Buuuu nnnn!
Shaaaaa n.
< Reboot completed. >
…
…
…エレン!
「エレン!」
「い… イェーガー…」
「エレン、大丈夫か!」
「俺が分かるか!」
「ネオン、ネオンの塊は覚えているか」
「…ネオン…」
「…えぇ、覚えているわ」
「私が触れたら… 世界が広がったわ…」
意識が朦朧としながら、小さな声で応えるエレン。
「とりあえず、大丈夫そうだな」
「一応、マッチングチェックはした方がいい」
「急いで探査機に戻るぞ」
「… え ぇぇ …
「エレン! おいエレン!」
液体ネオンを内包する、鉛色の塊の表面に触れたエレンは 再び意識を失った。
…ゴォォ
小型探査機へと戻ったイェーガーは、意識を失ったエレンをクレイドルの上に乗せ、横にすると、小型探査機の主幹システム、ヘルメスに声を掛ける。
「まずいな…」
「ヘルメス、今すぐここから離脱する、急いでアルフレッド達のいる探査船に戻るぞ」
「了解しました」
「それとイェーガー」
「どうした」
「外気のネオンの濃度が上昇しています」
…ゴォォォオ
コントロールパネルの上に浮いている、フローティング・モニターがネオンの急上昇を示しながら、アラートを表示し、その数値は止まる事なく跳ね上がってゆく。
イェーガーは焦りながら外を見ると、小型探査機の周囲が鉛色の霧に包まれてゆき、その異常な状況から危険を感じたイェーガーは、急ぎこの惑星から離脱する事を決め、エレンの容態を気にしながら、ヘルメスに指示を出した。
「発進シークエンスをフェーズ30まで飛ばして離陸する 急げ!」
{ … イェーガー だめよ 行っては… }
「ヘルメス! 何言ってんだ! 今すぐ離脱しないとエレンが」
「イェーガー、私が何か言いましたか」
「…えっ」
…ゴォォォォオオオ
「イェーガー、フェーズ200まで終了、エンジン内圧安定しました。リフトオフOKです」
「よし! 発進するぞヘルメス!」
イェーガーは急ぎ、コントロールパネルにある上昇レバーを奥へ押し、小型探査機のスラスターに火が入ると、内部は一気に発光しながら圧力が高まり、機体が砂塵を巻き上げながら、急上昇し始める。
―――バァァァァァア!!!
{ … 行っては だめ… }
―――ゴォォォォォォォォォ!!
「ネオン濃度さらに上昇、大気がネオンで満たされていきます」
「おい!何だよこれ!」
惑星の表面が深い鉛色のガスで覆い尽くされていく。
ゴオオオオオオオオオオオオオオオォ!!!!
ゴォォォ… ォ ォ ン …
低音で、重苦しい
―――ゴォッツ!!
小型探査機に襲い掛かって来た。
「うわぁぁぁ!!」
「ヘルメス! フルブースト! 一気にマックススピードに上げろ!」
ゴッ!!!
―――バァァァァァァァァァァァァァァア!!!
ァァァ… ァ ァ ァ ッ
イェーガーとエレンを乗せた小型探査機はネオンの惑星を脱出し、ガスの嵐から逃れる事ができた。
{ … いかないで… }
時を同じく、マクシミリアンの探査星でも同じネオンの構造体を見つけたが、マクシミリアンは触れずに情報だけ採取し、アルフレッド達が残る探査船に戻って来た。
探査船ではヘルメスから状況を聞いた、アルフレッド達がエレンの様子を心配し、イェーガーたちが乗る小型探査機がマスター・シップに戻ると、急ぎドッキング・ベイに走り出した。
アルフレッド達がドッキング・ベイに到着すると、その扉は固く閉ざされ、その上にある赤色のランプが、周囲の壁を赤黒く染めている。
その場に集まったメンバーは、ただ静かにその扉が開くのを待ち、何も動く事の無い静まり返った通路が、永遠とも思える時の長さを感じさせている。
顔に手を当て、薄暗い扉を見つめていると、その奥から聞こえる耳鳴りのような電子音が、意識を体の奥底へと押し込み、焦りと、苛立ちを心を揺らし、不安が意識を支配してゆく。
… エレン
すると突然、赤色のランプがグリーンに変わり、空気が抜ける音と共に、隔壁の扉が開くと、エレンとイェーガーが入ってきた。
「エレン!」
「アルフレッド、すまん」
「イェーガー、まずはエレンをチェックしよう。その後に詳しく教えてくれ」
アルフレッドはエレンをマッチング・チェックする為にクレイドルの上に横にし、Ardyのチェックを開始した。
…
「イェーガー、どうしたんだ」
「突然の事で俺もよく分からないんだ」
イェーガーはあの時の映像と、データログを表示しながら会話を始める。
「この液体ネオンが入っている筒状の塊を触った瞬間だ」
エレンが倒れる映像が流れる。
「筒からは微細で複雑な
「まったく同じではありませんが、地球上で極僅かに観測されている、このサイマティクスに近いものがあります」
「それは何だ」
「遺跡や、祠です」
「大きなものには殆ど残っていませんが、原生林が残る自然豊かな場所で、民間に継承されている祠などに、極僅かですが、観測されることがあります」
「地球と関係があるのか…」
「断定はできません」
「…」
ヘルメスが探査船のモニターが何かに反応し、表示したのを確認すると、
「アルフレッド…
ゴオオオオオオオオオオ!!!!
[[[[[ ガガガガガ!! ]]]]]]
突然、探査船が揺れ出した。
「どうした!」
「ネオン濃度が急上昇しています!」
[[[[[ ガガガガガ!! ]]]]]]
…
探査船の揺れが収まる。
「ネオンの濃度がさらに上昇…」
「!」
薄暗い探査船の奥で何かが立ち上がってくる。
{ … われは 風の住人… … }
そして、その何かはゆっくりアルフレット達の方へ振り向くと、
その姿を現した。
「エ…
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