6

 小さな街灯がぽつりぽつり灯る、あの桜並木を歩いた。

 キミは無口だった。

 僕はなかなか言葉が出なかった。けれど、今、言わなければ。そう思った。


 深呼吸をひとつして、口を開いた。思っていた以上に、僕の口は乾いていた。喉がからからだった。もう一度深呼吸をして、唾を飲み込んだ。


 大学、辞めた。明日、発つ。


 小さな声だった。けれど、人通りのない静かな道では十分な大きさだった。

 僕の手を引くキミの小さな手に力がこもる。


「そっか」


 それから、キミは呟いた。そして、歩みを止めた。

 キミがどんな表情をしているか、僕には見えない。その後ろ姿に言葉をかける。


 ごめん。


 それしか言えなかった。

 キミは小さく息を吐いて、一拍置いてから振り返った。


「そんな気がしてた」


 キミは笑っていた。

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