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当然ながら親は呆れていた。
けれど、最終的には
『おまえの人生だから、好きにしなさい』
と言われた。僕が意外と頑固なことを、わかっているからだと思う。
親以外の誰にも言わず、退学届けを提出した日。キミのアルバイトが終わるのを待った。
駅から少し離れた場所にある、オシャレな"カフェ"と言うよりは、落ち着いた"喫茶店"のような。ノスタルジックな雰囲気のお店。そこがキミのアルバイト先。
辺りも暗くなった頃、店の裏口から出てきたキミは、僕の姿を目にして嬉しそうに駆け寄った。
あの愛おしい笑顔を見せて。
キミの笑顔は何も変わっていないのに、なぜだろう。少しだけ切なくなった。
「帰ろ?」
キミは言って、僕の手を引いた。僕よりも小さいキミの手。今までも何度も触れてきた。それもあってなのか、当然のようにしっくりくる。
今思えば、その手は少しだけ震えていた気がする。
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