第7話 シスター
「じゃあ、おれは工房にいってくるよ」
「ええ。わたしは孤児院にいってるわ」
市場に着き、イルアと別れた。
見えなくなるまで見送り、集まった市場組の子たちへと向いた。
「今日はなにが安いかしら?」
ニヤニヤする子供たちに構わず、にっこり尋ねた。
「六番通りで鳥肉が安かったよ」
「一番通りでアルガン工房が店を出してたよ」
女の子を茶化すなと教えてあるので、市場組の子たちは情報を教えてくれた。
「アルガン工房か。先に見ておきますか」
鍋や包丁などの生活用品を作る工房で、作ったものが溜まると市場で店を開く、ちょっと変わった工房なのよね。
一番通りへ向かい、アルガン工房のお店へときた。
「ルーミーさん、お久しぶりです」
お店にはアルガン工房のおかみさんが立っていた。
「あら、ミリア。久しぶりね。なんか買ってっておくれ」
「寸胴鍋はありますか? 以前頼んだのと同じやつ」
「あれは特注だからないよ。欲しいなら旦那に作らせるよ」
「お願いします。できたら孤児院に届けてください」
孤児院には悪いけど、第二の食器棚とさせてもらっております。孤児院って町中にありながら教会と併設してるから土地が広いのよね。物置小屋もあるし。
「あいよ。値段は前と同じでいいかい?」
「構いません。特注なんですから」
寸胴鍋は作るのにかなり技術と手間がかかるので、金貨一枚と言う破格な値段となっているのよね。
手付金として銀貨二枚を払っておく。
「あと、土鍋を頼みたいんですけど、作れますか?」
この地域で土鍋はあまり使われてない。だけど、イルアが野菜鍋は土鍋でないと味がないと力説して、アルガン工房に無理を言って作ってもらったのよね。
「土鍋ならあるよ」
「え、あるの?」
「ああ。ミリアが教えてくれたオデン、旦那がえらく気に入ってね、もっと美味いものをって作ったんだよ。それが親方連中にも伝わってね、一時期土鍋ばっかり作ってたよ」
なにが流行るかわからないものね。
「では、土鍋を一つください」
「あいよ。てか、前のは壊れたかい?」
「いえ。とうさんが温めた葡萄酒に凝っちゃって、土鍋を占領されちゃったんですよ」
「葡萄酒を温めんのかい?」
「貴族ではよく飲まれているやり方みたいですよ」
って、イルアが言ってたわ。
「また洒落たことしてるね。美味いのかい?」
「本人は香りが引き出されていいって言ってましたね。かあさんも蜂蜜入れて飲んでましたね」
わたしはまだお酒の味はわからないけど、両親が楽しく飲んでるのだから美味しいんでしょうよ。
「本当は土瓶と火鉢があるといいみたいですね」
小さな火鉢で土瓶で温めると美味しいらしい、とイルアが言ってたわ。
「それは飲みたくなる話だね。よし。旦那に言って作らせるか」
あ、おかみさんもお酒飲む人だったっけ。これは、親方に悪いことしたかもしれないわね……。
「で、できたらこちらにも回してくださいね~」
そう告げてお店をあとにした。
気持ちを切り替え、買い物を続けた。
「これとこれはうちに運んで。お昼に誰か帰ってくるはずだから渡してちょうだい」
こう言うことはよくあるので家族もわかっていてくれるので、ちゃんと対応してくれるのよ。
「残りは孤児院によろしく」
市場組にお駄賃を払い、荷物持ちの子らと孤児院へと向かった。
市場からはそんなに遠くはないのですぐに到着。荷物持ちの子らを先に孤児院に向かわせ、わたしら教会の礼拝堂へと入った。
礼拝堂は基本、出入り自由。なので、お年寄りの溜まり場となっているわ。
熱心な信者は毎日お祈りにくるけど、わたしはほどよい信者。きたときにお祈りすればいいわね、ってていどだ。
お布施箱に銅貨を五枚入れる。
いくら入れるかは決まってないし、入れる入れないかは信者の気持ち次第だけど、お布施は孤児院にも使われるので、きたら銅貨五枚を入れるようにしてるわ。
女神フレミラ様の像の前で祈りを捧げた。
ほどよい信者なのですぐに祈りは終了。孤児院にいこうとしたらラミニエラがいた。
ラミニエラはわたしと同じ十五歳。孤児院出身だけど、治癒の魔法が使えることで、十歳から教会のシスターとして治癒師として働いていた。
噂では聖女候補者として名が上がっているとか。ただ、本当はただのシスターとしていたいとかで聖女候補からは逃れているそうよ。
「ごきげんよう、ミリア」
あちらから声をかけてきた。
ラミニエラは孤児院にも顔を出しているので顔を合わせることは多い。けど、友達と言う仲ではない。会えば言葉を交わすていどだ。
「こんにちは、シスター」
そこから会話は生まれないので、一礼して去ろうとしたが、なぜかラミニエラが話を続けてしまった。
「いつも子供たちがお世話になっております。メルア様も大変喜んでおります」
メルア様とは女司祭長で、この教会の長的立場の人だ。
「いいえ。こちらこそ子供たちには助けられております。メルア様にはよろしくお伝えください」
どうにかこの場を去ろうとするけど、なぜかラミニエラは逃してくれない。
なんやかんやと世間話に持っていこうとしている。
ハァ~。止めて欲しいわ。
心の中でため息をつきながら笑顔で受け答えを続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます