第107話 その2

 部長はなんとかしようと色々とサトウにアドバイスしたが、言われたことをやるだけというか、いやそれなりに応用はするのだが、どうしても的が外れる。


 伝言ゲームをしたら必ずサトウのせいで負けるような感じでズレてしまい部下から非難される。それを上司権限で力ずくで抑えようとするから、さらに不満がつのる。


 なかなか結果が出ないので、護邸常務はしびれを切らし、課を増設しサトウの部下で有能そうなのを課長にした。現在の企画2課長である。


 2課長は部下の意見をよく採り入れ、会社に利益をもたらす企画をいくつか立ち上げた。これにより原因がサトウであることが浮き彫りとなる。


 温情がかえって仇になる、時にはそんな場合もある。


 部長は何とかサトウを助けたくて、仕事をふりアドバイスをおくる、とにかく面倒をみる。


 サトウもその思いに応えたく頑張るのだが、ことごとく部下にうまく伝わらない、空回りばかりする。


 こういう場合は一旦離れて状況を確認して、流れをつくり直すべきなのだが、早く結果を出したいサトウには心の余裕がなく、止まらず同じやり方を力ずくで続け、部下の心を掴むどころか傷つけて、離れていき結果を出せない。


 部長の温情もむなしく、しびれを切らした護邸はさらに課を増設した。


企画3課の誕生である。


 その3課の課長にサトウがなり、1課はふたたびサトウの部下が昇進した。


1課長は2課長と同じくらいの結果を出した。


 これにより企画部はもとの姿に戻ったと護邸常務は安堵した。しかし、部長とサトウは安堵していない。このままではサトウは降格か下手すればリストラの対象となる。


 部長はサトウを何とか手柄を立てさせようと、管理職の仕事をこなしながら、自らも現場に出てサトウをサポートに使い、結果を出そうとした。


だが、出た結果は最悪のものであった。過労で部長は倒れてしまい、長期療養が必要となってしまったのである。


サトウの立場はますます悪くなった。


 サトウの歯車はさらにずれてくる、1課長、2課長からお前のせいだと睨まれ、護邸常務からも疎まれる。わずかにいた3課の部下も辞表を出して去っていった。


 ここまでくると会社もサトウを辞めてもらおうと動き始めたが、企画部長が入院前にサトウを何とかお願いしますと切々に頼まれた護邸がそれを止めた。とはいえ、このままではただの厄介者である。


 仕方なく護邸はサトウを別の役割を持たせた。ついた部下が次々と辞めた実績により、問題社員を配属させ、自発的に辞めてもらう。


 まるでどこかの刑事ドラマのような話だが、企画3課はリストラ課として存続することになったのだ。


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