第55話 土曜は朝寝坊
土曜の朝が来ていたらしい。
久しぶりに熟睡した千秋は、ぼさぼさ頭のまま居間にやってくる。
「ぼぉふぁよお」
「あらあら、やっと起きたの。ご飯はどうするの」
「たべるぅ」
しばらくして、御飯、味噌汁、漬物そして焼魚がテーブルの上に並んだ。いつも通りの和食で、食べていると気持ちがしっかりしてきた。
お祖母ちゃんはいつも平常運転だな、味噌汁を啜りながら、台所仕事をする祖母の背中を見ながら思う。
「昨日はどうだったんだい」
「んー、なんとかうまくいったかな」
居間に戻り、テーブルをはさんで千秋の前に座り、じっと孫の顔を見る。
「どうやら今日も、のようだね」
こたえずに無言のまま、御飯を頬張る。金曜の夜は遅くまで3人で打ち合わせをした。
明日、いや今日はタイミングが命だ。綿密に打ち合わせをした、こんなことを3人でやるのは高校生以来なのだが、どうしてどうして、直ぐに合わせることができた。
「こういうのを[昔とった杵柄]っていうのかな」
「[三つ子の魂百まで]じゃない」
「2人ともばばくさい」
というハジメに
「「あんたも同い年でしょうが」」
と千秋達は言い返す。そんな昨夜の出来事を思い出したら、クスリと笑えてきた。
「そうそう、そのくらいがいいよ」
孫の食べる姿を見るのが何より楽しみ、みたいな顔をして祖母は楽しそうに話した。
週末のカブライジムは盛況である。休日の午前に運動して、一週間の運動不足を解消して午後から遊びに行こうとする会員が多いからだ。
蛍は事務として今日は働いていた、寝不足気味の様子である。
正面玄関が開き、千秋がやって来た。
「お~は~よ~」
「おはよう、って寝不足なの」
「ううん、じゅうぶん寝たわ。お祖母ちゃんに[出てる]って暗に言われたから、今、抜いてるの」
「話がみえないんだけど」
会話しながら、ジム使用の手続きをすませる。
「あ~、わかりやすく言うと、気負いすぎてるってこと。そういう状態だと、気配りや考えが足りなくなるし、自分に都合のいいように考えるから失敗しやすくなるの。だから落ち着かせているのよ」
説明されて納得した。正直そうは見えないけど、千秋のお祖母さんが言うのならそうなのだろう。
「さすが御師匠さんだね、それでどうするの」
「もちろん予定通りよ、来ているんでしょ」
蛍は千秋に目線を合わせず、書き物をしているふりをしながら小声で、ロビーに居るわよと伝える。
ロビーには、経理の彼女がスマホをいじっていた。
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