第54話 その2
午後11過ぎに千秋は、壱ノ宮駅に着いた。改札には蛍が待っていた。
「ケイ、お待たせ」
「うまくいったみたいね、とりあえずおめでとう」
「まだまだ、明日の夜までは気を抜けないわ」
護衛をかねて迎えに来た蛍と一緒にクルマで、カブライジムに向かう。
「あとでハジメも来るわよ」
「じゃあそれまでにグレーゾーンの話を片付けようか」
「限りなくブラックに近いけどね」
ジムに着くと、すぐさま情報交換に入る。千秋は今日あった出来事を話した。
「ふうん、舎弟のノブと味方の一色くんは早速役に立ったのね」
「課長がキジマに連絡をとるだろうと思って、ノブに連絡したの。あのコ、盗聴ウイルスを悪戯で入れてたじゃない、それに初めて会ったときもキジマ達の会話を盗聴してたって言ってたからさ」
「盗聴癖があるとふんだのね」
「思った通りキジマ達のスマホにも、課長のスマホにも入れてたわ」
「困ったもんだけど、役に立ったわね」
「それに思わぬ切り札もいたしね」
「塚本さんだっけ、すごいコね。これだけの資料を1日というか8時間弱で作るなんて」
「これで、月曜の会議には対応できるわ」
「そっちは安心するとして、コンペの方はどうなの。あんた出れないんでしょ、一色くんはやれそうなの」
「まあ信用するしかないわ、さっきみっちり仕込んだのと、月曜の私のプレゼン見ているから大丈夫よ、あのコなら」
「どっちにしろ会社関係は出番が無いから、任せるわ。明日の事を話そうか」
昨日作成した作戦チャートを取り出し、ふたたび検討をはじめる。
蛍の作成した作戦チャートは、いわゆるロールプレイングゲームのようになっており、それぞれの状況にあわせて対応しコースを変えるように出来ている。RPGと大きく違うのは、必ずゴールがひとつに決まっているということか。
今日1日の出来事は、ほぼ予定通りのコースを通っていた。
「何が起きるか分からないから、想定出来る範囲を盛り込んだけど、今日のところは大丈夫ね」
「明日はお昼ちょっと前から行動開始ね」
ピンポーン
蛍が玄関用のモニターを見る。
「ハジメが来たわ」
2人は慌てて、見せれない資料を片付けると、訪問者を迎え入れた。
「こんばんわ」
「来てくれてありがとうね、ハジメ」
「よっ、久しぶり、千秋。めんどくさい事になったってな」
あい変わらず、心強いオーラを漂わせているなと千秋は思った。
そして金曜の夜は更けていった。
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