第7話、羽ペン


 俺たちの声は大声援と拍手でかき消された。、

 俺と母さんは、案内の人に指示されるまま礼をして別室に通された。

 やがて、王様とお妃さま、王女様に続いて、偉そうなオジサンたちがゾロゾロと入ってきた。


「ああ、座ったままでいいぞ。急で驚いたであろう」

「まあ、王様はこういうお方ですの。ごめんなさいね」

「あはは。だが、タウを取り込んで色々な発明を見てみたいと言ったのは妃だぞ」

「確かに言いましたわ」

「それに、厚生部長の座が空位なのはまずかろう。適任ではないか」

「はい。私ども総務局としても歓迎いたしますぞ」

「は、はあ……」

「詳しい話は総務大臣に任せる。

で、それは何だ」

「あっ、陛下にお使いいただければと、息子タウが作りました。

よろしければお納めください」

「開けてよいのか」

「はい」

 ひょいと、王様はフタを開けた。

 こういうのって、側近とかが開けるんじゃないのかよ。毒針とか仕掛けてあったらどうするんだ。

 いや、暗殺なんかしないけど……


「「「!」」」

「こ、これをタウが作ったと申すのか……」

「あう」

「この輝きは金だよな……」

「はい、近くの川で砂金を集めて作ったようです」

「二本という事は、妃と俺が使ってよいのか」

「しかも、金の墨入れまで二つございます」

「おい、叙爵の承認書がまだ未決状態だったよな。

サインするから書類と墨を持ってこい」

「はい」

「うむ、金の羽を象った造形も見事」

「墨入れの飾り花も素晴らしいですわ」

「その手でどうやって造ったのだ。いや、先の楽しみにとっておこう。

さあ、サインするぞ……」


スラスラスラ


「……、なんという書きやすさだ。ペン先が紙の上を滑るようだぞ。

おい、次の決裁書類を持ってこい!」


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