第8話、引っ越し

「タウ。私の分は?」


「あう……?」


「お父様とお母さまだけじゃ、私が可哀そうだと思わないこと」


「ソフィア、こういうのはペアと決まっているもんだ」


「いああかたえす」


「ごめんなさい。王女様のことを知りませんでしたので、失礼いたしました」


「こうど、まてて」


「ホントね。絶対よ。約束破ったら許さないんだから!」


「あうっ」


「わがままな娘ですまんな」


「いえ、タウにこんな普通に接してくれる方はおりませんでしたので、本人も嬉しいんだと思います」


「えーっ、だってドラゴンにやられて助かったんだから、勇者じゃないですか」


「うーひゃ……」


「まあ、年も近いんだ。時々は遊び相手になってやってくれ。

ああ、それからな、ワイルズ家用の屋敷があるから、そこに入ってくれ」


突然、貴族の仲間入りをして、引っ越しが決まった。

スキルも収納と物質制御と身体制御がLv.2にあがっていた。




収納は、20cmの立方体が収納できるようになった。

2倍ではない。容量的には8倍になる。

とは言っても、8リットルは大きい……、いやラノベを考えればまだまだ小さいが、それでも槍とか問題なく収納できる。

河原で鉱石を採取するときはありがたい。


王女の分の金を確保し、加工して化粧箱に入れておく。


それと同時に、サスペンションの構造を考える。

やっぱ、4輪独立式にして、車軸の接触部分にはベアリングが必要だよな……

重量を抑えるにはやっぱりジュラルミンがいいけど、合金の比率は4.5の1.5の0.6だったよな……

それで、銅とマグネシウムとマンガンの順だったよな。あれっ、マグネシウムとマンガンが逆だったか……

ボーキサイトって、鉄分も多いから、赤いと思ったんだけど、まあ、当たって砕けろだ。


幸い、材料はそろった。

比率を考えて合成し、パーツにしてから加熱処理をする。


コイルには玉鋼を使い、ジュラルミンの車輪には、木の皮を圧縮して貼り付けてみた。

ベアリング部分には獣脂をたっぷり塗ってある。


このベースに、アルミの上物を載せて応急馬車である。

家財の多くは人手を雇って別便で運んでもらっている。


「すごく静かで揺れないわね」


「ひゃりんひ、ひのはわおつかた」


「木の皮?」


「そ・お」


「あーあ、貴族なんか性に合わないんだけどな……」


「あひひょうぶ」


「タウも手伝ってよね」


「う・ん」


屋敷につくと、メイドさんが勢ぞろいしていた。


「ええっ!こんなに大勢……」


「お帰りなさいませ。執事のベッキーでございます」


「あ、スカーレットです。よく分からないものですから、よろしくお願いしますね」


「お任せください」


「タ・ウえす」


「タウ様ですね。よろしくお願いいたします。

さあ、お部屋の方へご案内させていただきます。

お荷物はメイドたちに運ばせますから……」


居間でくつろいでいるとメイドが慌てた様子で入ってきた。


「ベ、ベッキー様、馬車が……」


「どうしました?」


「すごく軽くて、静かなんですが……」


「ああ、それタウが作ったのよ」


「!そうですか。変わったものを見かけたら、総務局に報告するように言われておりますので、連絡させていただいても……」


「どうぞ、隠すようなものもありませんから。

あっ、私の下着は秘密にしておいてね」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る