新たな人々

Cecile

第1話

ピチョポンマルと言う、薔薇に似た美しい 花があった。薔薇にも似ているが、もう少し小さくて、上から見ると花の形が綺麗に丸い。刺も無いし、色も三種類あったが、その色も通常の花とは違っていた。その色は、黄緑、金、そして銀だ。          綺麗な花だから、花屋でも人気があった。 祝い事や見舞い等でもよく利用されたり、家で飾る人も割といた。         元々は海外の、ピチョポンタン島と言う南国の花だったらしいが、明治時代以降は我が国ヘも普及した。(その形から、我が国てはピチョポンマルと名付けられた。)      最初は何も問題はなかった。だがある時から、その花を扱ったり、買ったりもらったりした人間達の大半が風邪にかかった。   最初は鼻風邪だったり、くしゃみが出たり、喉が少し痛かったりした。        そして薬を飲んでも治らないから、彼等は病院へ行って薬を処方してもらい、飲む。だが効かない。何軒の病院ヘ行っても、大きな病院ヘ行っても駄目だ。          そうこうしているうちに、いきなりドッと疲れてしまい、立っていられないから寝込む。熱は無いが、何となく気分が悪いし疲れる。そして数日すると、又は二週間位すると彼等は死んでしまう。長くもっても、せいぜい一ヶ月位だ。               それでその中々死なない人間も、彼等は恐くなり入院をする。精密検査をするが、特に異常は無い。               だが分かった事は、この状態の患者達に共通して、体内に通常よりもリンが多くあった。そして彼等は、死因が心筋梗塞で死亡する事が多かった。              最初はそれでもそこまで死亡者はいなかったが、徐々にそれは広がり、花屋が、又は花屋に勤務している人間が多く死んでいる事が分かった。                それで、何かの花や植物が原因なのではないかと言う事になり、花を色々と調べていった。                  そして、ピチョポンマルが原因だと分かった。                  花屋ではピチョポンマルを置かなくなり、 その姿は消えた。世界中で、ピチョポンマルの花や種を処分した。もうピチョポンマルは二度と生えない様にした。        だが何故食用で無いこの花の成分が人間の体内に入ったのか?それは蜂が蜜を運んで蜂蜜になった物を食したり、花を触った手で他の身体の部分を触ったり、顔を触ったりしたからだろう。兎に角微量でもうっかり鼻等を触ったりすれば、ピチョポンマルの、人間にとっては悪い毒素が体内に入り込んだ。   人間は、蜂蜜を食べるのを止めた。一切蜂蜜を使用しなくなった。          世界中でこのピチョポンマル菌を殺す薬を開発しようとしたが、何処の国でもそれは無理で、又、ピチョポンマル病の患者から健康な人間にも感染する為に、人々は普段外出する時にはマスクと、ビニールの使い捨て用の手袋をはめる様になった。         国によってはそれは任意ではなく、しないと罰金を取られた。所得に寄り各自違って、幾つかの金額に別れてはいたが。      だが、ピチョポンマル病はそれでも収まらず、数年すると世界の人口はかなり減った。そして15年後には世界の人口の3分の1が減り、その10年後には又3分の1が減った。そうして数十年すると、世界には人間はいなくなった。               そうして、ただ動物や魚、昆虫、そして植物だけとなった。そしてそれは何万年も続き、だが又猿から人間へと進化が始まった。そうして又新たに人間が誕生した!      だが、ピチョポンマルは又生えていた。 人々はまだ原始人で、狩りをして食べていた。獣や魚をとっては日々空腹を満たす。 ピチョポン島に住む人間は、ピチョポンマルの花も積んで来ては食べた。花弁を小さく割いては生肉や魚に付けて食べた。すると味が、まろやかで微かに甘辛くなったからだ。                  その食べた魚や動物のカスを海や川へも投げ捨てた。そのカスを食べた魚を、動物や鳥が捕まえて食べる。その動物や魚を又人間が狩って食べる。              だが不思議と、彼等は死ななかった。   ピチョポンマルも威力が落ちたのか?いや、そうではなく、今度の人間にはピチョポンマルにはもっと強い抗体がくり込まれた身体だったのだ。               だが、その代わに彼等にはピチョポンマルの副作用があった。            今度の新たな人々には、人間としては、成人しても知能が小学校の低学年位しかなかった。                  そしてピチョポンマルの花を口にする為に、更に、それ以上の成長は見られず、永遠に、死ぬまで、脳は発達せず、成長しなかった。彼等は言葉も音を出す位で、後は身振り手振りだった。               それと何故かこの頃には、ピチョポンマル 以外のほぼ全ての地球上の植物や果物には、人間の脳にはやはり有害で、脳の発達を止める成分が含まれていたのだ!!      つまり人間は今後一切、それ以上の進歩を絶対にしないという事になったのだ。    だから戦争も公害も差別も動物虐待も全て無い。                  動物や魚は狩ってその日に、又は数日間は、(偶然余った物を日干しになったのを食べてからはそのやり方を覚えてやる様になり)日干しにして食べていた。         火を起こすのももう少し先の話だが、それでもそこまでだ。寒い時や、食べ物を焼くのに使用する為だけだ。           こうして新たな世の中に、新たな人々が誕生したのだ!!              そしてこの人間達の何代後の子孫でも、それはずっと同じで、やはり小学校低学年位の頭脳で、同じ様に狩りをして、幾つかの群れで生活をした。              人口も前の人間達の世の中よりも遥かに遥かに少ない。新たな原始人の世界では!!  (完.)

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