第15話 モテ期到来?
2021/06/20 登場人物の名前の間違いを修正しました
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狩人の職を追加してからニ週間ほどが経過した。このところ俺は毎日狩りと採集に出掛けており、そのおかげで新鮮なお肉が毎日食べられるようになった。
さらに
そこで毎日食事を作ってもらっているお礼として余ったものをロドニー一家にプレゼントしていたわけだが、そこはやはり狭い村だ。あっという間にそういった噂は広がり、同じ村の住人たちが自分たちにもと押しかけてくるようになった。
いくら同じ村の住人とはいえ、大して親しいわけでもないので角が立たない程度に対応しつつ適当にあしらっていたのだが……。
「あっ! ユートさぁん。今日も狩りに行くんですかぁ?」
「ユートさん♡」
村の若い女の子たちが俺のところにすり寄ってくるようになった。
まあ、この村で狩りのできる男が貴重だというのは分かる。それに俺は平民という扱いらしいので、農奴でも平民と結婚すればその子供は平民扱いになるのだそうだ。
そして、俺は独身で恋人もいない。
はぁ。
そんなわけで今俺はまったく嬉しくないモテ方をしているのだ。
いくら若い女の子とはいえ、ここまで露骨に迫ってこられるのはまるで嬉しくない。
とんでもない絶世の美女に迫られたら俺も理性がもつ自信はないが、如何せん相手は普通の村娘だ。
しかもだ。風呂にもまともに入っていないためみんな少し、というかかなり臭う。
大体、こんな狭いコミュニティなのだ。手を出したら間違いなく責任を取らされる。
そう、こんなものは役得でもなんでもない。据え膳食わぬは男の恥というが、たぶん食べたらお腹を壊すと思う。
「忙しいんでまたね」
俺はそう言って女の子たちを振り切り、そそくさと森に向かうのだった。
◆◇◆
「あっ! ユートさぁん。おかえりなさい~♡」
「げっ」
村へと戻ってきた俺を待ち構えていたかのように女の子たちが群がってきた。
「わぁ。すっごーい。おっきいですね。さすがユートさん」
「ホントだー。おっきぃ♡」
ちなみに女の子たちが言っているのは俺が獲ってきたイノシシの話だ。
「うん。今日は運が良かったから。これならおすそ分けできるよ」
「やったぁ。ユートさん大好き」
そう言って女の子の一人が俺の腕を取って胸を押し当ててきた。そしてそれを見た他の子も同じようにしてくるのだが、この状況ではピクリとしない。
鼻の下を伸ばそうにもここまで下心がまる見えだとまったく嬉しくない。
ジェシカちゃんのように純粋に慕ってくれている子がしてくれるなら嬉しいかもしれないが、そんなことになったらロドニーが血の涙を流してしまいそうだ。
「わかったから、ちょっと放してくれる? これじゃ歩けないよ」
「あっ。ごめんなさぁーい」
そう言いつつも女の子たちはまったく放してくれない。
流石に周りの少年たちの目も気になるので放してほしいのだが……。
そう思っていると、チッと大きな舌打ちが聞こえてきた。俺が振り向くと、口をへの字に結んだ村長のご子息様の姿があった。
「ほら。トーマス様がお怒りだよ」
「はぁい。ごめんなさぁーい」
女の子たちはようやく俺の腕を解放してくれてた。
「どうも」
黙っているのも悪いので挨拶をしてみたが、ご子息様は眉間に皺を寄せた。
「おい。お前ら。こんなところで油を売っていないで働け!」
「きゃっ。ご、ごめんなさいっ」
突然声を荒らげたご子息様に驚いた村の女の子たちは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
「おい」
「はい。何でしょう?」
「調子に乗るなよ?」
「は? はぁ。はい。すみませんでした」
何を怒られているのかはよく分からないが、上司に怒られたらとりあえず条件反射で謝る。それがブラック企業の社畜という生き物だ。
それで通じたのかどうかはわからないが、ご子息様は再び大きく舌打ちをするとそのまま背を向けてずかずかと歩いていった。
一体なんだったのだろうか?
まさか、あんな風に下心丸出しの女の子に迫られるのが羨ましかったとでも言うのだろうか?
いや、まさかな。そんなことはないだろう。
もしそうなら全員まとめて引き取ってほしい。
釈然としない気持ちを抱えつつも、俺はイノシシをロドニーの家へと運ぶのだった。
◆◇◆
「はっはっはっ。そうか。トーマスの野郎が。はっはっはっ」
俺がその話をするとロドニーはやたらと上機嫌になった。
「どうしたんだ?」
「だってよう。トーマスの野郎がユートに嫉妬してんだぜ?」
「嫉妬? まさか? あんなのが嬉しいのか?」
「何言ってんだよ? 男なら若い女の子に囲まれてちやほやされたいって思うのは当然だろうが?」
「いやいやいや。だって、どう考えても俺の肉目当てだろうが」
「あと皮と道具と平民籍もな」
「完全に財産目当てじゃねぇか」
俺がそうツッコミを入れるとロドニーはまたまた爆笑した。
「まあ、それでもこの村にいる若い女の子はほとんどユートに迫ってるんだぜ? でも今まではトーマスの野郎が村長の息子ってだけであのポジションだったんだ。それをぽっと出のお前にかっさらわれたんだ。嫉妬ぐらいするさ」
「はあ。今すぐにでも返したいがな」
「おう。そうしろそうしろ。まあ、だからといってジェシカはやらんがな」
「お父さん!」
ロドニーの冗談をジェシカちゃんは真に受けたらしく真っ赤になって抗議している。
「ほらほら。ロドニーお父さん。あんまり変なことを言うとジェシカちゃんに嫌われるぞ?」
「何ッ!? それは困る!」
「じゃあ、あんまりジェシカちゃんをからかわないことだな」
「あらあら。あなた。あんまりジェシカをからかいすぎたら、孫を抱っこさせてくれないかもしれないわよ?」
「なっ!? ま、孫なんてまだ!」
俺の冗談にブレンダさんが乗っかり、ロドニーは絶句する。
「ねぇ? ジェシカ?」
「え? え?」
ブレンダさんに話を振られたジェシカちゃんも顔を真っ赤にしている。
「ねぇ、ユート。なんのおはなしてるの?」
「ああ。パパとお姉ちゃんが仲良しって話かな」
「あたしとユートもね。なかよしなの!」
「うん。そうだねぇ」
「おいっ! ユート! お前ジェシカだけじゃなくアニーまで!」
「なんの話だよ!?」
ロドニーの意味不明な叫びに俺は思わずツッコミを入れる。
「えー? あたし、ユートとなかよしだもん! あとね。ママとおねえちゃんも!」
「え? ぱ、パパは?」
「えー? パパもー?」
そう言われたロドニーはショックを隠しきれない様子だ。
やれやれ。助け船を出してやるか。
「でも、アニーちゃんもパパのこと好きだよね?」
「うん! 大好きっ!」
ロドニーはあっという間に満面の笑みを浮かべると、アニーちゃんを抱き上げては頬を寄せた。
「パパもアニーのこと大好きだぞ」
「おひげいたい! パパきらい!」
再びロドニーの顔が絶望に染まったのだった。
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