第7話 王国の勇者たち
2021/06/17 誤字を修正しました
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「勇者の皆様にはこれからお召し替えをしていただきます。そして、わたくしの父にお会いしていただきます」
悠人の退場を見送った四人はその声に従い歩き始めた。紗耶香を除く三人はやや不安そうな表情を浮かべながら歩いていたが、彼女だけは至って平常心な様子だ。
「王女様。先ほどの男性はどうなるんですか?」
紗耶香の問いにローズマリーは笑顔のまま穏やかな口調で答える。
「はい。ユート様の職業は村人でした。村人とは村を発展させることにもっとも才能を発揮する職業です。ですので、我が国の将来を担う大切な村の発展にお力をお借りするつもりです」
「……先ほど、お付きの人が無能などと言っていましたよね?」
「申し訳ございません。彼は戦闘能力のことを申し上げておりました。我が国は、魔族と手を組んだ邪悪な帝国より大陸をお救いくださる勇者様を求めておりました。それが勢いあまってあのような無礼な態度になってしまったのでしょう」
「それにしても、あの言い方はないのではありませんか?」
「仰るとおりです。サヤカ様がご不審がられるのも無理はございません。ですが、誓ってユート様に理不尽な扱いは致しません。勇者様が使命を果たして頂けたならば、きっとユート様も一緒にお帰り頂けるはずです」
「そうですか。わかりました」
紗耶香は不承不承といった様子ではあるものの、そこで追及の手を止めた。
「それでは、ここからは彼女たちが皆様のお世話をさせていただきます。ご準備が整いましたら、わたくしがお迎えにあがりますので、いったん失礼させて頂きますわ」
そう言ってメイドたちを紹介したローズマリーは優雅に礼を執ると、彼女たちを残して立ち去っていった。
◆◇◆
「お父さま。ゴミが一匹交ざっていましたが、勇者召喚は成功いたしました」
「よくやったぞ。ローズマリー。ふむ。ゴミは開拓村にでも捨て置けばよかろう」
「ええ。すでに囚人用の馬車でガスター開拓村に移送しております」
「うむ。して召喚されたのは……勇者に武王。ほう、聖女と賢者もか。豊作じゃな。それでどうじゃ? 使えそうか?」
「賢者の小娘はやや不信感を持っているようですが、それ以外は御しやすいかと」
「そうか。その小娘はどうやって手懐けるつもりじゃ?」
「はい。個人的な友人という形をとります。あとはそのままなし崩しに」
「……そうじゃな。じゃが、もし難しいようなら」
「はい。その時は秘密裏に」
ローズマリーはニヤリと黒い笑みを浮かべたのだった。
◆◇◆
やがて正装に着替えた四宮たちは国王の待つ謁見の間へとやってきた。
「四人の勇者たちよ。よくぞ我らが召喚に応えてくれた。我が娘ローズマリーから話は聞き及んでいるであろうが、我がサルデリア王国とランデール大陸は魔族と手を結んだ悪辣なるフロンツ帝国によって危機に晒されておる」
国王はよく通る声でそう演説を打つ。
「フランツ帝国は町を焼き、畑を焼き、人々をとらえては奴隷として扱っておるのだ。我が国の民も少なくない被害を被っておる。国境沿いではいくつもの集落が焼かれ、男も女も奴隷として連れていかれてしまったのじゃ。勇者たちよ。そなたたちの力で力無き
「ああ。任せてくれよ。王様。褒美はたっぷり貰えんだよな?」
「もちろんじゃ。望みの褒美をくれてやろう」
「マジか? ならオレは超美人が良い」
「なんじゃ。そんなことで良いのか。勇者ショウ殿。そなた好みの美女を必ずや、紹介しよう。もし娼婦や女奴隷でもよいならば、いくらでも買い与えようではないか」
「マジ? 奴隷?」
「うむ。戦いが一段落したら奴隷市場にでも行ってみるがよい」
「うおっ! 奴隷市場? すげぇ。超楽しみじゃん。ギャハハハハ」
翔はそう言って下品な笑い声を上げ、それを見た周りの者たちは眉を
「勇者レオよ。そなたはどのような褒美が欲しいのじゃ?」
「え? ぼ、僕は……」
「すぐには決まらぬか。じゃが、それも良かろう。じっくりと考えるがよい」
「はい……」
そう言葉を濁したものの、四宮の顔はニヤケている。
「他に欲しい褒美の決まっている勇者はおらぬか?」
国王がそう呼びかけると、紗耶香が手を挙げた。
「うむ。申してみよ」
「私たちは元の世界に帰れるのでしょうか?」
「可能じゃ。じゃが、今は必要なものが足りないためできぬ」
「必要なもの、ですか?」
「うむ。フランツ帝国が魔族と契約する際に使用する天魔の王笏と呼ばれる道具が必要なのじゃ。それを砕いた時に解放される魔力を利用すれば、そなたたちを元居た世界に帰してやることは可能じゃ」
「……」
これまでずっと無表情だった紗耶香はそれを聞いて眉を
「えっ? じゃ、じゃあ。ホントに戦わないと帰れないんですか……」
不安そうな表情で横山は尋ねた。
「うむ。じゃが、そなたたちであれば必ずや成し遂げられるであろう。聖女モモカ殿。皆がそなたを期待しておるのじゃ」
「そ、そうですか?」
横山はそうおだてられてまんざらでもない表情を浮かべる。
そんな彼女たちを紗耶香は呆れた様子で眺めていたのだった。
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