第3話

  トアール王国の辺境領の更に奥にある所に、一般の人の立ち入りを禁じている山があった。

  その山には多くの魔物が生息しており、魔王の支配の影響は完全に無くなったとはいえ、人を襲う魔物や、凶悪な魔物は未だに数多くいる。そして、そんな魔物がゴロゴロいる山なのだから当然普通の人が立ち入れるはずないので、国指定の立ち入り禁止区域になっているのだが……


「はぁ〜!空気が美味しいです!自然がいっぱいでいい気持ちです!」


そんな山の奥深くに、何故か建てばかりと言わんばかりの綺麗な一軒家があった。その家のテラスで、勇者パーティーの一員だった聖女のクレアが気持ち良さそうに両腕を伸ばした。


「本当ねぇ……こうして見ると山での生活って悪くないって気がするわねぇ……」


そう言って自然とクレアの横に立ったのは、同じく勇者パーティーの一員だった女魔導士ローズである。


  彼女達は、トアール王国の国王様と王妃様にこの場所を教えられ、文字通りローズの魔法で飛んでここまで来たのである。

  そして、着いてすぐにクレアは山全体に浄化の魔法をかけると、山にいた魔物達は全部大人しい魔物に早変わり。クレアの浄化魔法が効かなかった魔物はローズが全部駆逐した事で、山の平穏を手に入れた2人は、ローズの錬金魔法でアッサリと家を建てたのである。


「……ごめんね。クレア」


「えっ?何がですか?」


「私がクレアと2人っきりで過ごしたいってワガママ言ったばっかりにこんな山奥まで来る事になって……本当は嫌だったりしない?」


  ローズは自分がクレアと2人で過ごしたいという我儘で、クレアに不自由な生活をしいる事になって、若干の罪悪感を抱いていたのである。


「大丈夫ですよ。ローズ。これでも私、育った場所は小さな何もない村でしたし」


ローズは元々小さな村で母親と2人、貧しいながらも逞しく生活していた経験がある。故に、山奥での生活に関して不自由を感じるという感覚は彼女にはあまりなかった。


「そ……それに……私には……ローズが側にいてくれればそれでいいですから……」


「クレアッ!!」


ローズはクレアのあまりにも愛らしい言葉にキュンときて、クレアを抱きしめる。クレアは「キャッ!?」小さな悲鳴を上げるも、ローズの抱擁を受け入れる。


  2人はしばし黙ってお互いの瞳を見つめ合う。そして、2人の唇がゆっくりと近づいて……
















「やぁ!!マイスイートハニー!!ローズ!ようやく見つけたよ!!」


もう少しで2人のお互いの唇が触れ合う寸前で、扉を開けて2人の前に、金髪のサラサラショートヘアーの美青年が入って来た。

  ローズは突然侵入してきた人物を見て驚愕の表情を浮かべたが、その表情は徐々に憤怒の表情に変化していった。


「何でこんな所にまで来て邪魔しにくるのよぉ!!?こんのぉ色ボケ勇者ぁ〜ーーーーーー!!!?」


ローズは怒りの叫びと共に超級魔法をその人物に浴びせた。


  この一見美青年にしか見えない人物こそ、セイヨウフウ世界を救ったのローラである。

  そして、彼女こそが今まで2人が恋人になっても恋人らしい事を一切出来なかった元凶である。

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