第3話

そして三日おいてようやくお爺さんは姿を見せました。

懐かしいお爺さんの姿を丘の柵の所に見つけた時、どんなに嬉しかったでしょう。ターミーはいっぱいに手を振って「お爺さーん。」と呼びました。

でもお爺さんは手を振る事もなく、ゆっくりゆっくり杖をつきながら歩いてくるのでした。

ようやっとという様子で、浅い小川の石を伝って来るのも大変そうでした。

お爺さんはターミーの前に来ると弱々しく笑って一番先にムーンの所に歩いて行きました。

そしてムーンの首を抱きしめて何やらムーンに話しかけているようでした。

それはいつもより長く、ターミーはその様子を見ていて何だか悲しくなりました。

友達同士がいつまでも辛い別れを惜しんでいるように見えたからです。

ムーンもお爺さんも別れがたいようでした。

やがてお爺さんはターミーとママンの所に来ました。顔は涙で濡れてした。


「儂ももう年だ。いつ何があってもおかしくない年寄りだ。ムーンを看取ってからでないと死なないと思っていたが、どうもそうもいかなくなったようだヨ。三日前に家で倒れてネ。本当は医者から寝ていなけりゃいけないと言われておるんじゃ。だがムーンがどんなに心配して心細くしているかとずっと気になっておったんじゃ。そして息子達の目を盗んで、こっそり出掛けて来たんじゃヨ。これから儂が来れなくなったらムーンも心配するだろうし、お嬢ちゃん達も心配するだろう。中途半端な別れは後を引くからネ。今、ムーンにはしっかり話して来た。お嬢ちゃんもよくお聞き。人間も動物も生まれて死ぬまではいろんな出会いがある。出会いは楽しい。じゃが、出会いがあれば必ず別れがやって来るものなんじゃ。別れは辛い、悲しい、苦しい。特に心の友達同士になった者は悲しくて淋しいものだ。だが嬢ちゃん、別れは必ずやって来るんだヨ。嬢ちゃんもお母さんとお別れしたからそれはよく解るネ。誰もがその悲しみに耐えて生きて行かなきゃならないんだヨ。儂もここに来るのはこれが最後になるだろう。家の者がこの体で出歩くのを許さんからナ。医者も絶対安静と言っていた。どっちにしても長くない命だ。皆の目を盗んでやっとお別れを言いに来たんだヨ。でも来て良かった。ムーンにもよくよく言い聞かせた。ムーンは頭の良い子だ。解ってくれただろう。嬢ちゃん、儂が来れなくなっても時々ムーンの所へ行って話しかけてやってくれ。ムーンは情けのある牛だ。特に別れに辛さは売られて行く仲間の牛達を見ていて人間以上に知っているかも知れん。嬢ちゃん、ムーンの友達になってやっておくれ。あれは手のかからない牛だ。そして万が一ムーンが死んだら、何も驚く事はない。牛としては悔いのない大往生じゃからナ。ムーンの上の葉や草をかけてやっておくれ。儂が先かムーンが先か解らないが。儂とムーンはいずれきっとあの世にいってまた会える。今、そう言い聞かせてムーンと約束して来たからナ。儂はそろそろ帰る。家の者が皆で探しているだろう。」

お爺さんの頬の髭、鼻の下の髭には涙や鼻汁が光っていた。

そしてお爺さんは帰って行った。

「お爺さんありがとう!ムーンの事は心配しないで!元気になってネ!また会いましょう!」ターミーは思いつく限り叫んだ。

けれどお爺さんは振り向かないで行ってしまった。

もう振り向く元気も残っていなかったのかも知れない。



あれから毎日、ターミーと白猫のママンは小川の所に行って、もしや元気になったお爺さんがニコニコ手を振ってやって来るかも知れないと思って待ちました。

でも何日待っても、お爺さんの姿は現れませんでした。

そして天気の良い空が青く晴れ渡った日、遠くの教会の鐘がカランカランと鳴りました。いかにも悲し気にカランカランと鳴りました。ターミーは急に悲しい気持ちになりました。ターミーのお母さんのデイジーが亡くなった時も聞こえていた音でした。

猫のママンが、「お爺さんはとうとう天に召されたようだネ。」と言いました。

あの優しかったお爺さんは本当に無くなってしまったのでしょうか。

もう二度とあの笑顔に会えないのでしょうか。もうムーンの所に来て話しかける事はないのでしょうか?

この事をまだムーンは知らずにいる筈です。ターミーとママンはムーンの所に行きました。そしてムーンに、「ムーン、お爺さんは病気で来れないけれど、私達がいるヨ。私達が毎日着て傍にいるから安心して長生きしてネ。」そう言って背中を撫でてあげましたが、牛のムーンはお爺さんの亡くなったのが解るのでしょうか。上を向いて悲し気に「モーッ」と長く鳴きました。その目は涙で潤んでいるように見えました。

夕方家に帰ると、農家のおばさん達が来て、やっぱり牧場のお爺さんが亡くなって葬式に行って来た話をしていました。

お爺さんは本当に亡くなってもう帰って来ないのだと解ると、ターミーは夕食も喉が通らない程淋しくて、自分の部屋に行ってベッドに入ると布団を被って泣きました。

あのお爺さんともう会えないのだと思って泣きました。

残されたムーンがどんなに淋しいかと思って泣きました。

何でこんなに悲しい事ばっかりなのかと思って泣きました。

でも次の朝になるとターミーは、いつものように家の中を掃除してケセラとセラを抱きしめてキスをすると外に出掛けました。

悲しいのはターミーや猫のママンよりもきっとムーンの筈だから。ムーンを慰めてやらなければなりません。白猫のママンはいつもの所で待っていました。

抱き上げて頬ずりするとママンはゴロゴロしながら、「ターミー、生きていると悲しい事は付きものなのサ。皆、誰でもそれに耐えて生きているんだヨ。神様はいつも見ていて下さるからネ。それを信じて生きて行くしかないネ。」


ママンはそう言ってくれるけれど、お爺さんは猫のママンの他にはようやく心の通じ合える大切な友達だったのです。ターミーの小さな冷えた心と体をちゃんと解ってくれて優しくしてくれた人だったのです。


「神様は本当に見てくれているの?神様は本当に優しい人なの?本当に優しい人ならお母さんのデイジーやお爺さんを連れて行かないでしょう?本当に神様は優しくて私の事をちゃんと見ていてくれるの?」

ターミーは泣き声でママンに訴えました。


「そうだねー、小さいターミーにとっては悲しい事が多かったからネ。そう思うのは無理もないけれどネ。神様はちゃんと見ていて下さるんだヨ。そして思わぬ形で奇跡を起こしてくれるんだ。悲しくて辛い事があってもそれを信じて生きて行かなきゃいけなヨ。神様も大変だろうネ。だってこの世の中、悲しい苦しい人だらけだからネ。」

猫のママンはそう言ったっきり黙ってしまいました。


まだ小さいターミーにとっては納得できる事じゃなかったけれど、だからといって天に向かって神様に文句を言う訳にもいきませんでした。

ターミーとママンはムーンのいる所に行きました。

ムーンのいつもいる辺りに行くと、ムーンの姿は見えません。

「ムーン!ムーン!」と呼びました。

呼ぶといつもここにいるよというようにモーッと返事をする筈のムーンがいくら呼んでも返事をしませんでした。

草をかき分けていつもムーンのいる所に行くと、ムーンは横になっていました。

「ムーンどうしたの?具合が悪いの?寝ているの?」

ターミーが近づいて行ってその体に触ると、ムーンはすっかり冷たくなっていました。

ムーンはお爺さんに会えなくなってまた、お爺さんが会いに来ないのは死んでしまった事を知ったのかも知れません。そして急に力尽きて死んだのに違いありませんでした。

昨日、最後に上を向いてモーッと長く鳴いたあのムーンの鳴き声は、あれは悲しいヨー、とっても悲しいヨー、生きていたって仕方がないヨー。そう言って鳴いたに違いないと思いました。また、ターミーとママンに向かって、長い間ありがとうとお別れを言ったのかも知れませんでした。

ターミーは冷たくなった牛のムーンの体にすがって声を出して泣きました。

ムーンの為にも、お爺さんの為にも泣きました。

デイジーが死んだ時にさえ我慢していたのに独りぼっちになった自分の為にも泣きました。

いつまでもいつまでも泣きました。

ママンは何も言わずに側にいてくれました。


ターミーは泣き疲れると立ち上がって、近くの草や木の葉を摘んではムーンの体にかけてやりました。

「ムーン、これでやっとまたお爺さんに会えるネ。天国へ行ってずっとお爺さんと一緒にいられるネ。」

そう話しかけてはまた、涙が溢れるのでした。涙は次から次へとポロポロ落ちました。

冷たい風が吹いて来ました。

空が曇って暗い色の空は何だかもっともっと悲しい事がターミーを襲ってくるような、そんな不安な空でした。

ターミーを支えていた友達のムーンがまたいなくなったのです。

「ママン、こんなに悲しい事があっても神様は見ているだけなの?助けてはくれないの?我慢して頑張って行かなければならないの?」

ターミーが聞くと、「世の中にはネ、もっともっと苦しんでいる人が沢山いるんだヨ。神様も忙しくってなかなかこちらまでは目が届かないのかネ。」と猫のママンは困ったように言いました。


まだそんな時間じゃないのに、日の暮れたような暗い空になっていました。

ターミーと猫のママンはムーンの傍を離れて暗い悲しい心のまま家の方へ歩いて行きました。

このまま帰るのが辛い夕暮れでした。

ママンと別れて家の方へ向かうと、家の周りは何人かの人達が忙しそうに行ったり来たりしていました。

何かあったんだろうか?悲しい事が続いたターミーはもうそれだけで悪い予感がして胸が苦しくなりました。

家の前まで行くと農家のおばさんが、ターミーを見つけて走り寄って来ました。

そしてターミーを思いっきり抱きしめて、「可哀想に、可哀想に。」と言いました。

それを聞いただけでターミーの胸はつぶれそうに不安になりました。

どうしたのかと聞けないうちに、「お父さんが事故で亡くなったんだヨ。大きな事故があってネ。大勢の人が亡くなっ

てネ。その中にお父さんがいたんだヨ。ターミーちゃん、しっかりして。何て事だろう。何て事だろうネ。モーリーは気が違ったようになってネ。すっかり狂っちまってるヨ。この先どうなるのかネ。ターミーちゃん、この先どうなるのかネー。」


ターミーはおばさんの手を振りほどくと、思いっきり元来た方に走り出しました。

今のターミーを慰めてくれるのはママンしかいません。猫のママンだけがターミーを救ってくれるのです。ターミーはママンを求めて走りました。

すっかり暗くなった中をママンの元に走りました。

「ママン!ママン!どこにいるの?」一生懸命、森に向かって叫びました。

「ママン!ママン!私を助けて!私はどうしたらいいの?ママン、私もう我慢出来ない!もう頑張れない!神様なんて本当にいるの?いても私の事なんかちっとも気にかけてくれてないの?もう駄目、私はもう頑張れない!私も死んでしまいたい。」ターミーはその場につっぷして泣きました。

ワーワー泣きました。お母さんとお父さんの所に行きたい。もう何もかもターミーの大切なものがどんどん黒い嵐に飲み込まれて行って無くなって、この世の終わりが来たような気持ちでした。

だけどどんなに呼んでもママンの姿は現れませんでした。

いつもすぐにターミーの所に来てくれるママンまでもがもう消えてしまったのだと思いました。

ターミーは不安で悲しくて泣いて泣いてこのままいっそ死んでしまいたいと思いました。

そして暗い泥沼の底に落ちて行くような心持ちがして気を失ってしまいました。






チチチチ、チチチチ、

小鳥のさえずりで目を覚ますとターミーはいつもの自分のベッドに眠っていました。

でも数々の悲しい出来事が思い出されて胸が新たに痛みました。

もう皆、死んじゃった。皆、行ってしまった。お父さんも死んじゃった。泣いて泣いてこのまま死んでしまいたいと思って泣いた事を思い出しました。

でもターミーは死んではいませんでした。静かな部屋の中には暖かい朝の陽ざしがさしていました。ターミーは恐る恐る階段を降りて行きました。

誰の姿もありません。

すると、「ターミー?」と優しく呼ぶ声が聞こえます。

とても懐かしくて優しい声です。

「ターミー?起きたの?お顔を見せて。」ターミーが泣きたい程聞きたかった声がしました。ターミーが恐る恐る声のする方へ行くと、ベッドに横たわった女の人がこっちを見て微笑んでいます。

えっ?えっ?

その懐かしい優しい声は「少し体具合が悪いのヨ。風邪を引いたみたい。明日がパパが帰って来るというのにネ。」そう言いました。

ああ何という事でしょう!

その人は本当のお母さんのデイジーではありませんか。

デイジーが生きていて笑っているのです。

ターミーはこれは夢ではないかと思いました。

でも夢でもいい。夢の中だってかまやしない。

思いっきり走って行ってデイジーの胸に飛び込みました。

デイジーのあのいい匂いがしました。

「お母さん!生きているのネ。お母さん本当に生きているのネ。」ターミーは繰り返し叫びました。


「まあ、ターミーどうしたの?何か悪い夢でも見たのネ。」デイジーは笑っていました。


その時、ターミーはあの悲しい事は全部夢を見たのだと思いました。

良かった!本当に良かった。恐い悲しい夢だった。そう思っているとデイジーが、

「少しこうして体を休ませていたら元気になるからあんまり心配しなくていいのヨ。ターミーに心配かけちゃったわネ。ごめんなさいネ。」

そう言っている所に農家のおばさんがやって来ました。

「まあ、風邪かしら?お医者様を呼ぼうネ。」と言います。

するとデイジーが、「大した事ないんです。体を休めていればじき治るでしょう。」そう言いました。

その時ターミーが叫ぶように、「駄目!お医者様に診て貰わなくっちゃ駄目!」そう言って、ヒステリーを起こしたようにワーワー泣きました。

泣いても泣いても涙は止まりませんでした。

その様子にデイジーも農家のおばさんも笑っておばさんが、

「大事をとるに越した事はないからネ。子供をこんなに悲しませるのは可哀想だヨ。今、私がお医者様を呼んで来るから。ターミーちゃん、お母さんをベッドに縛りつけておくんですヨ。大切な大切なお母様ですからネ。」そう言って出て行きました。

ターミーは泣きながらも温かい生きているデイジーの膝に顔を埋めて幸せでした。

やがてお医者様が来てくださって診察してくださいました。

そして帰る時、「肺炎を起こしかけていました。大事にしないと駄目ですヨ。」と言って帰って行きました。

それからターミーはつきっきりで傍を離れようとはしませんでした。

次の日お父さんのサムが街から帰って来ました。

デイジーはサムの仕事の大変さを気遣って、もう大丈夫だから街へ帰ってもいいと言いましたが、ターミーはその時も狂ったように激しく泣いてお父さんのサムを止めました。

「お母さんが死んじゃう、お母さんが死んじゃう。」と言って泣きました。

普段ききわけの良いターミーがこんなに泣くのを見たのは初めてでした。

サムは、「仕事も大事だけれどデイジーはもっと大事だからネ。」と言ってすぐに帰るのを止めて、デイジーがすっかり良くなるまで街には戻りませんでした。

それでもターミーは不安で不安でたまりませんでした。

いつ大事なお母さんが死んでしまうか心配でデイジーの枕元から離れませんでした。

農家のおばさんも顔を出してみんなの食事の世話をしてくれました。

結局デイジーがすっかり健康を取り戻すまでの一週間、サムは街に戻らずにいてくれました。

それで心配しながらもターミーは両親と一緒に温かい時間を過ごす事が出来たのです。

お父さんが街に帰った後も、ターミーはお母さんを守るのは自分だと増々思うようになりました。

そしてお母さんの体の調子や顔色をいつも注意深く見守る子になって行きました。

ある日、デイジーと農家のおばさんが話しているのが聞こえました。


「ターミーは本当に母親想いの子だネ。まだこんなに小さいのにしっかりしていて自分がお母さんを守るんだって顔をしているヨ。」

するとデイジーも笑いながら、「何だか急にしっかりしたみたい。きっと悲しい悪い夢でも見たのかしら?」と笑っていました。

でもターミーはいつの間にか悲しい夢はぼんやりとして消えてゆき、いつか忘れてしまっているのでした。

ただお母さんが死んだら大変!という強い思いだけが深く胸に残っていました。


それからまた暫らくして、ターミーに弟が出来ました。

しかもいっぺんに二人もです。

デイジーが双子の男の子を生んだのです。

その頃には家の中は急に賑やかになってお母さんが忙しくて大変なので、ターミーは子守をしたりいろいろなお手伝いをしたりしてお母さんを助けました。

双子の弟達はどっちも可愛くてターミーは二人が大好きで夢中になりました。

一日いっぱい傍にいてお世話をしても飽きないのです。

双子もターミーを大好きなのがよく解りました。

父親のサムは街から帰って来る時ターミーにも双子にも、お土産を買って来ました。

「ターミーはよくお母さんを手伝ってくれるんだってネ、ありがとう。」優しい両親と可愛い弟達がいる。

ターミーはとっても幸せでした。

そしてターミーが小学校から中学校に入る頃、一家は揃って街の家に引っ越しました。

それまで住んでいた家は農家のおばさんに管理をお願いしたのです。


その頃には戦争の後の復興も進み、街はまた元のようにきれいな街になっていました。

そしてサムの靴工場も今では順調に売れ行きを伸ばし、工場も大きくし、その工場のすぐ隣にサムは立派な家を建てました。

毎週、街と田舎の家を往復するのは大変な事だったでしょう。

でもこれからはいつも家族が一緒にいられるのです。

ターミーは田舎にいた時もお母さんのお手伝いをしながら勉強もがんばりましたが、街の家に引っ越してからも絶えず家族の一人一人の健康には気を遣い、何かあるとすぐにあれこれ世話を焼くので家族の皆からターミーは心配症だと笑われて

いました。

勉強も物凄く頑張りました。

だから中学校も高校も大学も、とても優秀な成績を修めて卒業しました。

お父さんもお母さんもターミーに、「自分の好きな事をしていいヨ。」と言ってくれるのに、ターミーは何故か家の事が心配でたまりません。

そして大学を卒業後は、弟達が大学を卒業するまでお父さんの会社を手伝うと宣言しました。家にいてお母さん、お父さんの健康を管理し、弟達が成長するのを見守るそういう日が何年か続いてめでたくこの春、二人の弟達は大学を卒業しお父さんの会社を手伝う事になりました。

何もかも順調に行ってこれで良いのかと思う程幸せな日が続きました。

これは一重にターミーがいつもいつも家族一人一人を気を抜く事なく気遣いサポートしてくれたお陰だと誰もが知っていました。

弟達も会社の仕事に慣れたある日夕食のテーブルについた時、お父さんのサムが言いました。

「ターミー、長い間お疲れ様。もう家族の事ばかり考えないで今度は自分の事を考えて幸せになって貰いたい。」そう言いました。

お母さんのデイジーも、「ターミー、本当に長い間お疲れ様。貴女はとっても頑張って来たわネ。貴女がどれだけ一生懸命だったか皆、知っているのヨ。お陰で私はどれだけ助かったか知れやしない。本当に感謝しているのヨ。今度は貴女が貴女自身の事だけを考える晩よ。ケセラもセラも大学を卒業して立派にお父さんの会社を手伝うようになりました。もう、何も心配する事はないのヨ。気持ちをのんびり伸ばしてこれからの自分の事を考えて欲しいのヨ。」

いつの間にか、ターミーが名付けたニックネームのケセラとセラの弟達も、「姉さん、いつも気を張りつめていい加減疲れないかい?姉さんを見ているとあんまりにも必死で俺達可哀想で見ていられない気がしているんだ。のんびりしろヨ。そうそう、ゆっくりのんびり人生を楽しめヨ。」口々にそれぞれそう言いました。

家族皆にそう労われた夜、ターミーはつくづく考えてしまいました。

皆が言う通り、私はどういう訳か昔っからとっても心配性だった。

いつも何だか心配で心細くて、油断してはならないぞ!ちょっと気を抜いたらとんでもない事になるぞ!という気持ちがあった。

そればが何故なのか、生まれつきの心配性なのか。だからいつもいつも心配で気を張って家族の事を見て来たと思う。

でも皆が言う通り少しのんびりした方が良いのかも知れない。


「ターミーには夢はないの?ターミーは何かしたい事はないの?まだ若いのだから何でも挑戦してみたら?」そう皆に言われた。


子供の頃から本を読むのが好きだった。おとぎ話の物語が好きだった。

最後は幸せになる物語が好きだった。そういう物語を読むと、いつも心配で張りつめていた心がホッと温かくなった。

そして自分もそんなお話の書ける人になりたいと思った事がある。

暫らくぶりに一人になってのんびり過ごすのも良いかも知れない。

その上で先の事を考えよう。

それにはうってつけの場所を思い出した。

小学生の時まで暮らした大叔母様の家、あそこだ!

両親も弟達も賛成してくれた。


あの時以来、そのうち遊びに行きましょうと思いながら、十四・五年も来る事のなかった田舎の家にターミーは休暇の為に戻って来ました。

家はあの後も農家のおばさんが管理していてくれて、父親は会社の寮として年に一・二回は使う事があると言っていたけれどどうなっているのだろう。



それでターミーは久しぶりに幼い頃を過ごしたあの庭のある屋敷に帰って来たのでした。

汽車を降りた久しぶりの故郷は草の匂いと言うのだろうか、懐かしい匂いがしました。

この土地が持つ匂いだろうか?

それを嗅いだ時、突然物悲しい思いが胸をしめつけるようでもありました。


ここにいたのはほんの子供時代で、特別何も悲しい事等無かった筈なのに。

ターミーはそう思いました。

駅からほんの少しの距離をトランク一つ持ってのんびり歩いていると、笑いながら走り寄って来る人がありました。

あの人懐っこい笑顔は農家のおばさんです。見た目はすっかり年老いていましたが、まだ元気な調子で、「ターミーようこそ。本当に久しぶりですネ。すっかり立派なお嬢さんになられて見違えそうでしたヨ。でも、こっちに向かって来るのはターミーに違いないと思いましたからネ。」

前もって連絡を貰っていたおばさんはそう言いました。

ターミーは昔から変わらないこのおばさんの笑顔にたちまち気安さを覚えて嬉しくなりました。

ターミー達が住む街は大きな建物がどんどん建って、人口も急激に増え、様子もすっかり変わりましたがこの田舎は少しも前と変わらずのんびりとしています。

おばさんと他愛のないおしゃべりをしながら歩いていると、すぐに見覚えのある並木が見えて来ました。

「ああ、ここだワ。ここヨ。」

道路から家に続く道も道の脇に広がる芝生の庭も昔のままでした。

長い間留守にしていたとは思えない程、きれいに手入れが行き届いていました。

館も優し気にターミーを迎えるようでした。

「おばさん、ありがとう。少しも変っていないワ。」

ターミーは嬉しくて館の方へ走って行きました。

館の周りも色とりどりの花が植えられています。少しも荒れた様子はありません。

「おばさん大変だったでしょう?こうして手入れをするのは。」とターミーが言うと、

「いえね、私一人だけではないんですヨ。手伝ってくれる人がいましたからネ。」そう言って玄関の扉を開けて中に入るように促しました。

ターミーは胸いっぱいに深呼吸して扉を開きました。

家の中は昔のままです。頭の中で思い出していたのと少しも変っていませんでした。

あちこちの窓からお日様の光が射しこんで暖かくて優しい空気がターミーを迎えてくれました。

掃除も行き届いて清潔な雰囲気です。

「おばさん、本当にありがとう。もうあれから十五年も経ってしまったんですもの。すっかり古くなって変わっていると思っていました。いつも掃除をして空気を入れ替えていてくれたんですネ。嬉しいワ。私、家族からものんびりしていいって言われて来たんです。暫らくここにいようと思うんです。いろいろお世話になります。よろしくお願いします。」

「はい、はい。私の方こそ首を長くして楽しみに待っていたんですヨ。私はいったん家に帰って、夕食時に何か作って来ましょうネ。」

おばさんはそう言って帰って行きました。


ターミーは一人になって改めて家の中を見て回りました。

いちいち、ああそうだった、ここだったと思い返しました。

ここの暖炉のある居間でお父さん、お母さん弟達が皆集まって過ごしたんだった。

お誕生日も、クリスマスも皆で楽しく過ごした日々が昨日の事のように思い出されます。

二階の部屋も階下のキッチンもグルリと見て回りながら最後には階段のあるホールに戻りました。

濃い緑色の絨毯が敷かれたホールです。そこから階段を見上げる、その感じをターミーは幾度となく思い出したものでした。

階段の途中の右の壁には大きな絵が掛けられています。

その絵はターミーが生まれる以前からあった物でしょう。物心ついた頃には当然のようにそこにあったので子供だったターミーはじっくりと見る事もなく育ちました。

今ターミーは、改めてその大きな絵を仰ぎ見ました。

等身大の女の人の絵は大層美しく立派で、しかも大変古い物だと解りました。

今のターミーの目から見ると自分とさほど、年の変わらない若い女の人に見えます。

濃い紫のドレスを着たその人は微笑んでいるようでもあり、どこか悲し気なようにも見えます。

そのドレスの裾のあたりに描かれた白い物にターミーは今、初めて気が付きました。

よくよく見るとそれは猫の後姿に違いありません。

白い猫が女の人を見上げているのでした。

その白猫を見た途端、ターミーは突然いいようのない想いに襲われました。

私、この猫を知っている。私、この猫とどこかで会った事がある。いつだったかしら?どこで会ったのかしら?絵の中の猫は女の人を見上げているので正面を向いている訳ではありません。従って顔も見えません。

見えたとしても猫は大抵似ているものです。ターミーは自分でもおかしい程、その猫に懐かしさを感じてしまいました。

その後ろ姿、その横顔、その耳の感じには覚えがありました。

暫らく暫らく思い出そうとしましたが、ターミーの記憶の中にはどうしても白い猫との出会いを思い出す事は出来ませんでした。


私、子供の頃、この絵を見ていてだから会ったような気持ちになったのかも知れない。その時はそう自分を納得させて農家のおばさんが作って持って来てくれた温かいシチューを食べて寝ました。

その夜ターミーは、私今までなぜここに来る事なく十五年以上も過ごしたのだろう?と思いました。

両親や、弟達が何度かは来たようだったが、ターミーだけは何やかやと用事や忙しさにまぎれて理由をつけてこの家に帰る事を避けていたような気がする。何故だろうか?そんな事を考えて眠りました。

次の日の朝、何か悲しい夢を見たような後味を感じながら目を覚ましました。

目覚めた瞬間に夢は消えていて、どんな夢だったか少しも覚えていないのでした。

でも何かとても悲しい心細い夢だったのは確かで、その悲しみが辺りに残っていてターミーは少しボーッとしていました。


私って馬鹿ネ。久しぶりに家族と離れて一人になったからホームシックになって悲しい夢を見たのだワ。自分ではすっかり大人のつもりでもまだまだネと自分で自分を笑ってベッドを降りました。

当分はここでのんびり出来るけれど、この先自分が何をしたいのか考えなくっちゃ。

今まではとにかく家族の事、家の事を考えて自分自身の事は二の次だった。

急に全てから解放されて自分の事を考えなさいと言われて戸惑っている。

私は本当は何をしたかったのだろう。

トランクの中に読みたい本を何冊か持って来たけれど…。


下に降りて顔を洗い髪をとかしている時も、大事な何かをフッと思い出しそうになりました。

“髪をとかす”という簡単な事に何か気持ちが引っかかるのです。

私ったらどうしちゃったのかしら?

外に出るととても良いお天気です。玄関から向こうの道路に続く小道の、その道端にしゃがんで草花の手入れをしている人の後姿がありました。

あら?おばさんかしら?今日もこんなに朝早く来てくれて。

ターミーがその後ろ姿に声を掛けようと近づくと、その女の人は振り返ってターミーを見ました。

ターミーを見て軽く会釈をするとまた、俯いて仕事を続けてしまいました。

その様子は何故か話しかけられるのを拒否するように見えたので、ターミーは話しかけるのを止めました。

そして、そのままブラブラと広い庭の芝生の上を歩いて森の方へ歩いて行きました。

芝生はきれいに刈り込まれていて昔、双子の弟達と遊んだ事を思い出しました。

「ターミー、おはよう!」おばさんが来て呼んでいます。

ターミーは急いで家の方へ引き返しました。

おばさんはさっきの女の人と二言三言話をした後、家の方へ来て、

「朝ごはん、まだだと思って。簡単なものを持って来たんですヨ。」そう言ってバスケットを示しました。

「おばさん、これからはもう気を遣わないで下さい。私、自分の食事ぐらい作れますから。食材を買いに行くとき、一度一緒に行って下さいませんか?こちらの勝手が解らないものですから。」

おばさんはターミーの朝食が済むと、近くのお店に一緒について行ってくれました。

その時、ターミーが朝見かけた女の人の事を聞くと、「ああ、あの娘はネ。まあ娘といっても年は四十を過ぎているんだけど、私の親戚の娘で“モーリー”と言うんだヨ。」

“モーリー”

その名前を耳にした時、ターミーは胸のどこかがズキンと痛むような気がしました。

それに構わず、おばさんは話を続けます。

「あの娘はネ、若い頃に街へ働きに行っていたんだが、あの戦争で街が滅茶苦茶にやられて帰って来たんだヨ。どういう訳か、余程辛い事があったんだろうネ。気鬱の病になってしまってネ。昔は明るくて気立てのいい娘だったんだが、それ以来親の仕事を手伝って嫁にも行かずに年をとってしまったんだヨ。もったいない話なのサ。今はこの家の管理をする私を助けて時々ああして家の周りをきれいにしたり、家の中を掃除してくれたりするんで私は大助かりなんだヨ。」

おばさんは呑気にそう言いましたが、ターミーは“モーリー”という名前の響きが頭にこびりついて離れませんでした。

モーリー、モーリー。どこかで記憶にある名前だ。自分に関わりのある名前だ。

だけど、いくら思い出そうとしても、ターミーの記憶の中の友人、知人または学校の先生の中にもモーリーという人の名前は浮かんで来ませんでした。

そして気になり出すとその事が頭から離れなくなってしまいました。

私はどうしてしまったのだろう?

久々に一人になった途端、変な事ばかり考えている。

あの絵の中の猫といい、モーリーという名前といい。

何の関係もない人や物に変にこだわっている。そう言えば家族が皆で、


「ターミーはいつも神経を張りつめて一生懸命だったから、少しのんびりして来た方がいい。」とやたらに私を保養させようとしたっけ。私ははたから見たら、随分張りつめた顔をして生活していたのだろうか。

自分では気が付かなかったけれど、これが神経症なのかも知れない。


そんな事を考えて家の中をブラブラしながら、いつも最後には階段の右上の方の壁に掛けられた大きな絵の下に来るのでした。

その女の人の事を自分はずっと大叔母様の若い頃の絵だとばかり思っていたけれど、本当にそうかしら?

大叔母様の若い頃にこんな立派な絵を、絵師を招いて描かせた事があったのかしら?

ターミーの本当のお祖母さんの頃は大変な時代だった筈なのに…と思いながら見ると、その絵は随分古い時代のものに思われて来るのです。

もしかしたら、この絵は最、最、昔の物で、大叔母様の時代より古い物かも知れない。

急にそう思い始めると、ターミーはこの絵の事が知りたくなりました。

絵の近くに行って、その絵を注意深く観察しました。

大きな絵ですからそれを一人で外して裏を見る訳にはいきません。

外して裏を見たら何かが解る筈。

いつ描かれて誰を誰が描いたのかが解る筈だと思いました。

そう思い始めると気になり、矢も楯も堪らなくなって来るのでした。

自分はもしかしたら神経症なのかも知れないけれど、さりとてじっとしていると尚更おかしくなりそうな気がするのでした。

何かが解りそうで解らない。

何かが思い出せそうで、思い出せない。それは苦しい事です。

例えば声が喉元まで出そうなのに出て来ないというのはこういう気持ちなのかも知れません。

こんな気持ちは今のように切羽つまったものでは無かったが、昔から漠然とターミーの背中に張り付いていたような気がします。

いつも不安で心配で、しかし何故そうなのか。その理由がつかめそうで解らずにいつもいつもただ、その心配がやたらと家族の事を心配し世話を焼く事になっていたのでした。

でも弟達も立派に大人になり、両親も元気でいる今、皆から少しのんびりするように言われてターミーはこの家の骨休めに来た筈でした。

それなのにその思いは弱まるどころか増々強くなって来ているのです。

わたしはやっぱり心の病なのかも知れない。

もしそうだとしても、いつかもっともっと、重症になるかも知れないとしてもその前に確かめておきたい。何が私をそういう気持ちにさせるのかを…。

ターミーはその夜、日記に記しました。

自分のこの不安や心配はどこから来るのか?幼い頃から持ち続ける不安を拭い去る事は出来ないものなのか?

そして最後に決心しました。この絵を掃除すると言って外して貰おう。

そして裏を見てみるのだ。

全てはその後だ。


翌朝、前の決心が鈍らないように例の絵をもう一度明るい陽の光の元で見てみた。

女の人が誰なのかはべつとして、その足元に佇んで女主人を見上げる後姿の白い猫が気になって仕方がない。

何故だろう?

こんな事をはなしたら笑われるだろう。


そんな事を考えている所におばさんが陽気に顔を出しました。

「ターミー、おはよう。」

「おばさん、おはようございます。こちらから伺おうと思っていたんですヨ。」

「あら?何か用事?」

「ええ、私この階段の絵を外して一度きれいにしたいなと思うんですけれど、誰か手伝って下さる方はいないですか?力のある男の方二人程いると助かるのですが。」

おばさんは少し考えてから、

「思い当たる人達がいるから少し待ってネ。その方達の仕事の手が空いた時でいい?頼んでみますから。」

おばさんはそう言って帰って行きました。

ターミーは午前中、本を読んだりブラブラしたりしながら時間を過ごしました。

窓から庭の方を見ると、おばさんの親戚のあのモーリーという女の人が来て、一心に家の前の花壇の手入れをしているのが見えます。

あの人も神経症か気鬱の病になったと言っていた。

でもあの人の事も何故か気になる。私も神経症なのだろうか?


やがてお昼を少し過ぎた頃に、おばさんが男の人を二人連れてやって来ました。

男の人達は脚立のような物も用意して来ました。

家の中に入って来ると、おばさんはその人達をターミーに紹介しました。

「そこの牧場をしている人達ですヨ。三人兄弟が何百頭もの牛を飼っているんですヨ。こちらは二番目と三番目の息子さん。」

ターミーは、「お世話をかけて申し訳ありません。」と言いました。

二人はターミーを見て、「いや、いいんです。亡くなったおやじやおふくろが、以前と言っても遠い昔ですがこちらの奥様にお世話になった事は聞いていました。」と言ってニッコリ笑いました。

二人共、とても優しそうな人たちでその笑顔がまた誰かに似ているようで気になりました。とても懐かしい思いさえします。

でも、その思いがまたターミーを不安にしました。

誰を見ても何か引っかかるものがあるのはやはり、私はどこか変なのかしら?

そしてその大きな絵は二人の男の人達の手で会談の上の壁から無事外されました。

「ありがとうございます。掃除をした後、またここに掛ける時にお願いして良いですか?」と言うと、「ああ、いいヨ。いいヨ。簡単な事だ。」

そう言って男の人達は帰って行きました。

おばさんも一緒に帰って行きながら外で仕事をしていたモーリーと四人で立ち話をしています。

何だか楽しそうに話しているのが見えました。近所なので顔見知りなのでしょう。

ターミーは急いで壁に立てかけた絵の裏を見てみました。

長い年月を経て来た様子の裏板を、用意してあったタオルを水で絞って拭くと、下の方に何か書いてあるのが見えました。

これを書いた人のイニシャルでしょうか?

“Y・K”とあります。その上に“ターミーとママン”と書いてあるのが読めました。

ターミー? ママン?

ターミーは心臓が止まる程驚きました。

自分と同じ名前です。

この女の人もターミーというのだろうか?それではやっぱり大叔母様?

年月日が一番下の方に書いてありました。

それは今から二百年近くも前の月日です。

やはりこの服装はかなり昔の物に違いありません。それならこの“ターミー”は大叔母さんでは無い事になります。それにママンというのは、この後姿の猫の名前なのでしょうか?

ママン? ママン?

聞いた事のある懐かしい名前。

ママン? ママン?

何だか思い出せそうな気がして思い出せません。

ターミーはその絵をきれいにきれいに拭きました。

絵の中の女の人も頬も紫色のドレスも鮮やかになりました。

後姿の白い猫もホワッとした毛並みまでが解るようです。

ターミーとママン。

ターミーとママン。


その夜はママンという名前を幾度も幾度も繰り返しながら眠りました。

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