オマケ~セキュリティ~

 あっ、今須います阿佐比あさひです。

 なんだろう……なんで僕が悪者にされなくちゃいけないんだ?


 まあ、骨折した一夜先輩をからかったのは……少し反省しています。

 さすがに泣かれると……


 とはいっても、元々はあの変な指輪の所為だ。

 しかし、ホントに、大手通販サイトマングローブでそんなものを売っているのだろうか?


 何か特種なルートや、『魔女』のアカウントでなければ買えない代物じゃないのか?


 そこで、僕はスマホのマングローブを開いた。マングローブは世界最大の通販サイトだ。アプリぐらい入っている。

 半信半疑で、商品検索をした。


『人狼け』

『銀の指輪』


 あの明細に書かれていたキーワードを入力。ポチッと検索ボタンを押すと――


「なんだこれ!?」


 ズラリと商品が出てくる。画面をスライドさせると、『人狼避け』以外にも、他種族向けの商品なんてものもある。その他、広告に『絶対成功するお呪いおまじないの本』なんてものもあったが、見なかったことにしよう。

 ともかく、興味本位で検索したが、ホントに商品として登録されている。

 そして、先輩が買った『お徳用』というものも……


 タップして商品の詳細を確認した。

 どうやら、和菓子屋の久助のような商品のようだ。

 特定の種族向けに作ったが、効果が薄い、または種族が特定できていないランダムと、失敗作を安く売っているらしい。それでも特種な銀の合金と、よく分からない工房――その筋では有名なのか――の名が記載されている。


「お得って……2,980円もするの?」


 ちゃんとした製品も、関連商品に出ているが……3倍近い値段なので確かにお得なんだろう。


 なんとなく僕は興味本位で、『カートに入れる』というボタンを押した。

 するとどうだ。


『貴方は、ホモ・サピエンスですか?』


 と、ポップアップが現れて、『はい』と『いいえ』のボタンがある。


 ――ホモ? ホモ・サピエンス? ああ、人間のことか……


 一瞬、戸惑った。

 聞き慣れない言葉だ。確か……教科書に現生げんせい人類が属する種の学名だと、いうことを思い出した。

 とはいっても、『ホモ・サピエンスですか?』と問われると、応えるのが微妙だ。

 僕は聞いた分では、吸血族の血が4分の3入っている。厳密には、現生人類ホモ・サピエンスではないことになる。

 では、何者なのか?

 それもよく分からない……吸血族の学名なんて知らない。ということは、僕はホモ・サピエンスではない事になる。


 ――『いいえ』を押すべきか?


 いや、これはセキュリティかもしれない。

 魔女とか向けの商品……つまり、現生人類の特殊な人向け。ここで『いいえ』を押すと、商品が手に入らないのかもしれない。


 ――では『はい』を押さないと!


 と、指を持って行ったが、何か引っかかることがある。すると、よく見ると、ポップアップ画面の左下。そこで点滅している丸があった。

 赤く点滅が早い。


 ――さっきまで黄色だったような……


 すると、パッと画面がフラッシュした。一瞬のことだったが、目がくらんだ。

 そして、視界が戻ってくると、いつものマングローブのTOP画面に戻っている。


 ――なんだったんだ、さっきの?


 あんな機能を付けられているのは、ユーザーとしてはたまったものではない。目がくらむような光を出すなんて。


 ――えっと、何か買うんだった?


 僕はマングローブのアプリを立ち上げているのだから、何か買おうとしていたのだろう。だが、何を買おうとしていたのか思い出せない。

 中を見ていけば思い出せるだろうと、画面をスライドさせた。と、いつも買っているコミックの特装版が出るそうだ。


 ――なんだよ。これか……しかし、何か忘れているような?


 ともかく、僕は2,980円もするOVA付きの特装版コミックをカートに入れた。

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見知らぬ指輪~銀の指輪とおまじない~ 大月クマ @smurakam1978

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