ブラック企業で勤める社畜の俺は限界を迎えるが、突然幼馴染JDに養われることになり、甘やかされ生活が始まった!
第25話 目の前で戦が始まった。しかし俺には止める術はない。どうやっても二人の戦いを止めることはできなさそうだ。こんな時はどうすればいいの? 答えは見つからないまま、物置となって傍観するだけであった。
第25話 目の前で戦が始まった。しかし俺には止める術はない。どうやっても二人の戦いを止めることはできなさそうだ。こんな時はどうすればいいの? 答えは見つからないまま、物置となって傍観するだけであった。
一尺八寸は俺に色々と相談をするようになった。
この間のちょっと相談してみた、そんなレベルではない。
心の内を全てさらけ出すような、そんな相談の仕方だ。
今も夜のファミレスで、彼女の相談を受けていた。
「私どうしたらいいかな? 今の仕事」
「嫌なら辞めた方がいいと思うけど。無理に嫌な仕事を続ける必要はないだろ?」
「そうだよね……でもお母さん、今仕事してないからなぁ。私が面倒を見なきゃいけないの」
「それも大変だよな……うーん、どうすればいいんだろう」
「とりあえず、直くんと会うのをやめらたいいんじゃないかな?」
「…………」
賑わう店内。
テーブル席に座る俺たち。
俺の背中側のテーブル席から、それはそれは可愛い声で、可愛らしくないこと言葉が飛んでくる。
凛だ。
凛が俺たちの会話を盗み聞きし、口を挟んできた。
「凛……今大事な話をしてるんだ。彼女の人生に関わるような問題なんだよ」
「でも彼女の人生と直くんの人生は関係ないじゃない」
凛はさも当然のように、俺の隣に座る。
ニコニコ笑顔を浮かべているが、その瞳の奥にはどす黒い炎が揺らめいていた。
ちょっと怖いからどっか行ってくれませんかな?
「あなたは誰かしら?」
「直くんの保護者かな?」
「……保護者?」
「直くんの生活を面倒見ているの。凛と一緒に生活してるんだよ」
「っ!?」
一尺八寸は信じられないといった表情で目を見開く。
俺は心臓がバクバクしていた。
せっかくできた友人なのに、女子大生のヒモをしてるなんて知られたらどう思われるだろうか……
これは不安で仕方ない。
「み、見たところによると年下みたいだけど……凄いお金持ちのようね」
「うん。凛、お金持ちだよ。これから一生、直くんの面倒見切れるぐらいは余裕でお金あるから」
「そうなんだ……ねえ木更津くん」
「な、なんでしょう?」
ドキドキしながら一尺八寸の言葉を聞く俺。
何言われるか分かったもんじゃない。
お願いだからお手柔らかにお願いします。
「もし私がお金を稼いだらさ……一緒に住む?」
「なんで?」
「だって年下に生活の面倒見てもらうよりは、同い年から見てもらった方がよくないかしら?」
いや、どちらもよくないと思いますが。
とはハッキリ言えない俺。
だって現に俺は凛に生活の面倒を見てもらっているから。
悲しいが、そのどちらも否定する権利はないのだ。
「えー、でもお母さんの面倒も見なきゃダメなんだでしょ? 大変だから止めておけばぁ?」
「……私、覚悟が決まったわ。今から勉強して、もっといい会社に移る。それで母親も木更津くんも両方面倒見れるぐらいお金を稼ぐわ」
「あの……養われるの前提で話を進めるのは止めてくれませんか?」
睨み合う凛と一尺八寸。
一触即発と言った様子で、バチバチと二人の間に電気が走る。
「人が努力するのは全然いいと思う。今よりより良い環境に羽ばたこうとするのは応援するわ。でも直くんを養うのはちょっと違うじゃないかなぁ?」
「年下のあなたに任せておけないわ。木更津くんのことは私に任せておいて頂戴」
「だからー、直くんを養わなくたっていいんだって。凛は金持ちだから負担でもなんでもないから、気にしてもらわなくてもいいわよ」
「あなたを気にするわけないじゃない。私が気にしてるのは木更津くんのこと。恋人でもなんでもない人と一緒に暮らして、変な噂が立つのは可哀想でしょ?」
とうとう額をぶつけ合う二人。
俺は二人の様子が怖くなり、後ずさりする。
「あんたと暮らしても変な噂立つでしょう?」
「わ、私は別にいいのよ……そうなったら事実にすればいいだけなんだから」
急に照れ始める一尺八寸。
凛はさらに怒りを覚えたのか、手元にあったナイフを手に取り出した。
いや、ちょっと怖いから! それはやり過ぎだから!
「おい凛! それはダメだ……ナイフは置こうじゃないか」
「ええ? でもこの人、ちょっと痛い目に遭わないと色々と理解できないみたいだから……」
笑顔のままで黒いオーラを放つ凛。
こいつはちょっと本気怖い。
ブルッと背筋を震わせながら、俺は凛からナイフを取り上げた。
「と、兎に角、ナイフはダメ! 話し合いは口でしましょう」
「……まぁいいわ。とりあえず今回は直くんの顔を立てるために力を貸したけど、あんたを助けたわけじゃないんだからね」
一尺八寸は凛の言葉に声を詰まらせる。
そのまま一歩引き、マヨネーズまみれのほうれん草を口にした。
「……片山さんの件は感謝してます。ありがとう」
「いいえ。どういたしまして。感謝してるというのなら、これから一生、直くんの前に顔を出さないでいただけます?」
「……それとこれとは話は別。これからも私は木更津くんとお付き合いしていきたいと考えていますから」
「…………」
また睨み合いを見せる二人。
ピリピリした空気に、俺はお腹に痛みを感じ始めていた。
お願いですから仲良くしてくれませんかね……
なんてどこにも届かない願いを胸に抱きながら、俺は二人の激しい言い合いを凝然として見続けていた。
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