ブラック企業で勤める社畜の俺は限界を迎えるが、突然幼馴染JDに養われることになり、甘やかされ生活が始まった!
第10話 チョコレートって店によっては一粒何千円もするような物があったりする。自分が想像してたのは一粒二十円ぐらいの物だったはずなのに、そういう高級チョコレートが用意されていたような、そんな気分。
第10話 チョコレートって店によっては一粒何千円もするような物があったりする。自分が想像してたのは一粒二十円ぐらいの物だったはずなのに、そういう高級チョコレートが用意されていたような、そんな気分。
まともに面接にも行けないまま、一月もの時間が経過していた。
お金は来月分の給料が振り込まれるから後一月はなんとかなるが……その後どうする?
俺は果てしない不安を覚え、頭を抱えて悩んでいた。
しかし悩んだところで問題が解決するわけもない。
ただただ時間が進んで行くだけだ。
携帯の着信音が鳴る。
携帯を確認すると――凛からの連絡であった。
「もしもし……?」
『直くん? 元気してる?』
「ま、まぁ……なんとか」
『でももうギリギリでしょ? お金も心も』
「全部筒抜けみたいだな……」
『だって直くんの情報は――』
「逐一収集してるんだろ」
どこで情報仕入れてるんだよ、たくっ。
俺は少しの寒気を覚えながら凛との会話を続けた。
「それで、なんの話?」
『もうギリギリだろうなって思ったから連絡したの。一度凛の家においでよ。晩御飯食べさせてあげるぐらいはいいでしょ?』
「まぁ……悪くはないかな?」
正直ありがたい。
一度の食事でも食べさせてもらえたら、食費がそのまま浮くしな。
俺は心の中で凛に感謝しながら、彼女の家に向かうことにした。
「……やっぱりデカいな」
凛のマンションのエントランス。
高そうなソファがあり、煌びやかな空間。
二階に続く螺旋階段があり、コンシェルいるし。
もうこれ、ホテルだろ。
少し緊張しながら奥へ進み、エレベーターに乗ってホッと一息。
友達の家に来るだけでなんでこんな緊張しなきゃならなんだよ。
なんて心の中でぼやいている間に、エレベーターは俺を最上階まで運んでくれる。
エレベーターを降りて一番奥の部屋。
チャイムを押すと凛が笑顔で出迎えてくれる。
「おかえりなさい」
「お、おかえり? いらっしゃいじゃないの、そこは?」
「んふふ。おかえりでいいんだよ」
おかえりでいいのか……?
いや、やっぱりおかしいよな。
ここはいらっしゃいのはずだ。
俺はおかしくなんてないはずだぞ。
凛にリビングへと通されると、そこには樹がいた。
ソファに座って大きなテレビで映画を見ている。
「よお。俺も食事に誘われてさ。妹からの誘いを断るお兄ちゃんなんて、この世にいるわけないよな」
「いるだろ。沢山いるだろ。逆に断る方が多いぐらいじゃないか?」
実際のところは知らないけど。
でも普通の兄妹だったら、断るところの方が多いと思う。
だって仲悪い兄妹って多いしね。
「直くん、コーヒーでいい?」
「え、ああ。ありがとう」
凛はニコニコしながらコーヒーを淹れてくれる。
「俺も淹れてほしいとこなんだけどな」
「お兄ちゃんの分も淹れてるよ」
「お、珍しいな……いつもは淹れてくれないってのに」
「直くんのついでだよ、ついで」
お兄ちゃんに対しては冷たくもないが優しくもない凛。
昔からこんな感じだな、二人は。
樹の一方的な情熱に興味無さそうな凛。
鬱陶しがったりはしないが、樹に優しく接しているところは見たことがない。
「で、これからどうするの、直くん」
「ん? んん……どうしようかな」
「素直に凛の世話になったらいいじゃない。世間体なんて気にする必要なんてないよ。だって凛と直くん二人の問題だし」
「そうだそうだ。凛に甘えとけばいいんだよ。凛に任せておけば万事解決だ」
凛に甘えていたら、ダメ人間まっしぐらな予感がするんだが……
このままヒモみたいな生活が始まって……
ダメだ。想像するだけで寒気がする。
「やっぱりダメだ。自分でなんとかしないと」
「自分でなんとかってどうするつもり? 働けないんだったらどうしようもないんじゃない?」
「うっ……」
「ダメな時は他人を頼ったらいいんだよ。特に直くんは、世界中の人がフォローすべきだと思うんだよ」
「なんでだよ。そんなわけないだろ」
「凛がそう言うなら皆でフォローすべきだな!」
「お前も乗っかかるな!」
妹愛が過ぎる樹。
凛が絡んだ会話はちょっと面倒くさい。
良い奴ではあるのだけど。
「凛やお兄ちゃんみたいにさ、直くんもやりたいことやるべきだよ。凛はそのために直くんのサポートをしたいんだ」
「サポート?」
「うん。ただ社会復帰するのなら簡単だろうけど……まぁ今の直くんにはちょっと難しいかも知れないけどさ」
「…………」
その通り過ぎてぐうの音も出ない。
面接に行けないなんてもう病気だよな。
「だからさ、直くんがやりたいことが見つかるまで凛が直くんの生活の面倒見てあげる。きっとそれが直くんが一番幸せになれる近道だと思うし。それに直くんが幸せなら凛も幸せだしぃ」
本当に心の底から嬉しそうに話す凛。
幸せになれる近道……
正直、その言葉に俺は惹かれていた。
すると樹がニヤッと笑い、口をはさむ。
「いいから凛に甘えとけって。借りが嫌ならさ、いずれ返せばいいじゃん。人生、持ちつ持たれつだぜ」
「直くんの分は全部持ってあげるつもりだけどね」
「いや、全部持ってもらうのはあれだけど……」
凛に頼るのは少し恥ずかしいし情けなさも感じなくもない。
だけど、現状一人で生きていける自信はゼロ。
このままだったら来月には飢え死にだ。
だったら樹の言う通り、今は凛に甘えて将来返せばいいか……
「分かった。当分の間世話になってもいいか?」
「当分どころか、一生お世話してあげるけど?」
「それは御免だ」
俺は嘆息しつつも、凛に頭を下げる。
「悪いけど、これからよろしく頼むよ」
「直くん、頭を上げて。直くんは頭を下げる必要なんてなんだから」
笑顔でそう言ってくれる凛。
俺は頭を上げて苦笑いをする。
「じゃあ話も決まったところで、お肉でも食べようか。直くん、焼肉好きだよね?」
「な、なんで知ってんだよ……」
「お兄ちゃんに聞いたし、給料入ったら焼肉行ってるでしょ?」
だからその情報はどこで仕入れて来るんだよ!?
なんて思いながらも、焼肉を提供してもらえることに俺はワクワクしていた。
「店で食べるのも当然良いけど、家焼肉ってのも悪くないよな……」
「でしょ? 直くんに喜んでもらおうと奮発したんだから、楽しみにしててよね」
家のホットプレートで食べる焼肉。
これがまた美味い。
俺は凛が焼肉を用意してくれるのをソワソワして待っていたが……一向に用意する気配はない。
何してんの?
「ご用意できました」
「はっ?」
ルーフバルコニーから冗談みたいに長いコック帽をかぶった男性が顔を出す。
服装は見るからにシェフ。
「え? 何この人?」
「え? 焼肉屋さんだよ」
「……いやいやいやいや! なんで焼肉屋さんがこんなところにいるんだよ!」
「えー、だって直くんに中途半端な焼肉なんて食べさせられないじゃない? だったら一流のシェフを呼んで作ってもらおうって結論が出たのよ」
「俺がいつも食べてるのは食べ放題だよ? 高級焼肉なんて食べたことねえよ!」
こうして、不本意ながらも俺は凛の世話になることとなった。
一番最初に食べさせてもらったのは焼肉。
その焼肉は今まで食べたことない、恐ろしい程美味い肉だった。
正直また食べたいです、はい。
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