第76話 油断して風邪をひいてしまった。-3

「…かわいいよ、春日。」


 遠慮なく先輩の背中を持ち上げて外した。掴まっていた先輩の両手首を離した後、両手で脇から横腹までゆっくりと撫でてあげた。

 暖かい手の感触を感じる先輩は自分の右手で口を隠していた。特に手が横腹に下がってる時の震える体と我慢できない表情が見えて、先輩の耳元でこう囁いた。


「春日、横腹が弱いね…俺に弱いところを触られた気分はどう…?」


 そう言いながら先輩の横腹から手を離さなかった。


「…いい。」

「春日…気持ちいいことに弱いね…」

「恥ずかしいよ…ハル…」


 恥ずかしいのは俺も同じだった。

 くっついて反対側の首にキスマークをつける。俺を抱きしめて両足をジタジタする先輩が恥ずかしい声を出しながら耳を舐めた。


「うっ…」

「はあ…ハル…」

「ん。」

「好きって言って…」

「好きだよ、春日。」

「もう一回…」


 震える声でねだる先輩。


「好き、ずっと一緒だよ。」

「うん、ずっと…一緒…」


 口を離して、体を起こした俺はその下にいる先輩を見つめた。ベッドに広がる先輩の髪、恥ずかしがる赤い顔、そして首につけた赤いキスマークが見えた。


 今日は変だ。

 こんな気持ちは初めてだ。

 顔が真っ赤になっていて…先輩のことがすごく可愛く見えている…


「ハル…?」

「ん?」


 先輩が俺の上半身を触って両腕を広げた。


「こっち来て…」

「うん。」

「何を考えてたの?」

「春日がとても綺麗だよなーと思っていた。」

「頬にチューして…もっと、もっと…触って…」


 再びベッドで絡み合う二人、春木は春日の頬に軽く口をつけて左手をスカートに乗せた。徐々にスカートの中に手を入れて春日の内腿を触る、春木の手に触れていた春日はその肌触りを満喫していた。

 春日の小さい喘ぎ声が二人の耳元に残る。


「うん…」

「脱がせるから…いい?」

「…」


 どこまでやればいいのか分からない、ただ今は俺を好きになってくれる先輩の欲を満たしてあげたかった。と言いたかったけど…こうなった以上俺も平気にいられないな…

 どうしよう…なんでこんなに大胆なことを…

 そして何も言わない先輩を起こしてブラウスとブラ、スカートをゆっくりと脱がせた。


「…」


 電灯をつけてない暗い部屋だったけど月明かりのせいで先輩の肌がはっきり見えてきた。ベッドの上にはパンツと靴下だけ履いていた先輩が自分の両腕で胸を隠したまま背中を向けた。

 雰囲気の流れに乗ってこうなったけど…俺から先輩の服を全部脱がせたことは確実にあれ…だよな。

 あれ…


 あれって!

 あれ…あれ…やるのか、本当…?

 ちょ、ちょっと待って…雰囲気が今の状況を作ったんだよな。気づいたら俺はすごいことをやっちゃった気がして…どうすればいい…

 いけない、ここまで来て怖くなった。


「…恥ずかしい、ハル。」


 小さい声で言いながら背中を向ける先輩の後ろ姿が見られて思考が止まってしまった。そんな先輩を見つめた俺は後ろから先輩を抱きついてベッドに横たえた、肩を掴んで先輩の体を回して二人は目を合わせる。


「う…」

「自分から何かしてほしいって言ったくせにすごく照れてるね。春日。」

「し、知らないよ…」

「かわいい。」


 俺の前で胸を隠すその両腕を解いて先輩の胸を触る。


「こうしてもいい?」


 とか聞いてるし…俺…絶対に天罰を受ける。


「…はあ。」


 暖かくて柔らかいこの感触…

 触られる肌触りを感じている先輩が出す喘ぎ声が男の好奇心を刺激した。触るだけに止まらず先輩の胸を舐めてしまって後は積極的に右手で触りながら左で舐めた。

 

「春日…興奮した…?すごく聞こえるけど…喘ぎ声。」

「はあ…ちょっと…ね。」


 しかし、先輩もそうだ。何も言わずに俺から仕掛けること全部受け入れてくれるから止まらないだろう…

 本当に止まらない…

 

 理性が崩壊された俺はだんだんクズのように先輩の下まで手を出した。ゆっくりと下がる手がついたところには先輩の手が防いでいた。


「ここは…だめ…」

「…どうしても?」


 骨盤辺りを触りながら先輩に聞いた。


「うん…だめ…」


 そんなに震える声で話したらこっちの思考がダメになってしまう…

 頭を下げて目を逸らす先輩の前髪を上げたら隠れていた先輩の半泣き顔が見えた。やはりあれをするのは怖いよな…先輩の目から少しずつ流している涙が俺の心を揺らした。

 

 罪悪感100倍で心臓が激しく鼓動する。手が震えていてどこを見ても先輩の肌しか見えなかった俺は先輩が見えないように体を回した。

 やっと気がついた時には頭がぐるぐる回っていて、その後は気を失ってしまった。

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