第24話 初めて行く先輩の家。−2

 やはりお金持ち、マンションの中もすごい高級感が溢れていた。初めて見ることであちこち見回した。


「なんかキラキラする…」


 7階だったよな…エレベーターを乗らないと、先輩が待っている。でも不思議だ、俺が他人の家に行くなんて考えたこともなかった。

 エレベーターが上がる時、先輩の家はどんな風になっているかな…と想像する。

 チーンの音がして7階に着いた。エレベーターの扉が開いて、目の前に先輩が立っていた。

 白くて大きいTシャツと黒いレギンスを着て俺を待っていたそうだ。


「春木!」

「先輩、おはようございます…」


 A M9:37。

 朝早く先輩の家に到着した。


「でも…普通の恋人もこんな時間には会わないですよ。」

「普通…?」

「普通…」

「し〜らないよ〜」


 ほほ笑む先輩が俺の手首を掴めて家に連れて行く。


「うわー」

「何が、うわーなの?」


 思わず口に出しちゃった。

 高級マンションってこんなもんだな、天井の蛍光灯から光る暖かい電球色が家の全体的の雰囲気を作っていた。

 その中で一番目にかかったのは一つのランプだった。誰かと一緒に撮ったような写真なんだけど、その写真には顔の部分だけが焦げて見えなくなった。

 けっこ子供の頃に撮った写真かも…他人の家は目新しい、先輩の家を夢中に見回した。


「春木ー!」


 台所から先輩の声が聞こえた。


「はい。」

「朝ご飯は?食べたの?」

「え…まだですけど。」

「じゃー一緒に食べようか?」

「ご飯…ありがとうございます。あ!後、これはえ…チーズケーキなんですけどよかったら…」

「チーズケーキ?私、チーズケーキ好きだと言ったことはなかったよね…?どうして分かったの?」

「え…なんとなく…」


 ケーキをもらった先輩が笑顔を見せて言った。


「嬉しい。」

「ご、ご飯を食べましょう…」

「うん。食卓で待っててー」


 先輩が台所から何かを作り始めた。


「春木、スパゲッティ好き?」

「はい。」

「分かった!」


 なんか今日の先輩は気分がよさそうに見える。


「先輩。」

「うん?」

「なんで今日、誘ったんですか?日曜日だったら家族とか…友達とか一緒に遊んだ方がいいじゃないですか?」


 先輩は少しの間、静かにゆでるスパゲッティの麺を確認した。


「うん…でもさっき恵ちゃんが来たし…別に用事ないから。」

「うん?一緒に住んでいると思ったんですけど。」

「恵ちゃんは…親と一緒に住んでるよ。」

「先輩だけ一人暮らしってことですか?」

「うん。できた!食べよう!」


 先輩が両手でスパゲティを乗せた皿を持ってきた。


「食器は俺が持ちます。」

「いいよ〜座って。」


 そのまま座って先輩を待っていた。


「はいはい〜ナポリタン!完成!」

「い、いただきます。」

「いただきます!」


 皿を俺の前に置いてから隣に座る先輩。


「てか先輩…前に座ってもいいじゃないですか…」

「もう、隣でいいじゃん〜」

「た、食べる時に不便です…」

「うんー?」


 話を聞いた先輩がもっと俺に近づいた。


「え…なんで近づいてくるんですか…」

「これがいい、春木と触れること…」


 先輩はとても積極的で、他人にも優しい。こんなにいい人がなぜ俺の隣にいるのだろう。

 不思議だ…


「何考えているの?」

「え?なんでもないです。」

「美味しい〜」

「そうですね。」


 スパゲッティを食べながら先輩の顔をちらっと見ていた。先輩の細い体と長いまつげ、座っている時の小さい先輩が可愛く見えた。

 先輩の体が俺に近づいて二人の肩が触れている。

 そうだ。いつも隣にいてくれて、たまには好きとか恥ずかしい言葉も出してるけど本当にいい先輩だ。

 武藤先輩は…


 でもなんでだろう、先輩と一緒にいると頭の中からあの子が浮かび上がる。同じでもないのに…いや、変な雑念はやめとこう。


「ねぇー私、日曜日だから映画が見たい!」

「先輩も映画とか好きですか?」

「うん、好きよ。ホラー映画とかね〜」

「…え、ホラーですか。ご、ごちそうさまでした!」


 急いで片付けようとする俺の手首を掴んで話した。


「見よう!」

「それは…つまり…」

「スパゲッティ食べてから見る!」

「は、はい…」


 ホラー映画か…普段は見ないけど好きだった記憶はない、食べ終わった先輩が皿を片付けて家のカーテンを閉める。

 これがホラー映画の下準備ってことですか…


「ふふー」

「なんか嬉しそうに見えますけど…」

「うん、日曜日に春木といるから!」

「えっ…普通に友達と遊んでると思いました。」

「普段は家にいるよ。やるべきこともいるから。」


 てっきり外で遊びまくるイメージだったけど、先輩って意外に勉強とか頑張ってたのか…


「武藤はけっこ来ますね?」

「全然?」

「へー、そうですか。」


 部屋が暗くなった。

 居間で見る予定だったけどカーテンを閉めても明るい居間が気に入らなかったそうだ。もっと怖い雰囲気で見たかった先輩が自分の部屋に連れてきた。


 部屋が真っ黒だ。まだ11時なのにまるで夜みたいな…


「はい!を見よう!」

「それ…最近出たホラー映画ですね…」

「春木、分かるんだ。興味あるの?」


 先輩から目を逸らした。


「べ、別に…」


 悪魔に呪われた屋敷で住む人たちが次々と殺される映画だったな…

 テレビでなんとなく予告編を見ただけで、絶対見ないと決めた俺は何故か先輩の家で見ることになった。

 助けて…

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