第13話 第三者。−3

 雨が窓側に落ちる音が居間に響くほど、静かな午後だった。ソファーには甘える先輩と俺がくっついていた。

 頭を撫でながら見下ろした先輩の顔はぐっすり眠れたように寝言をしていた。

 長い髪の毛が俺の目の前に広がる、この髪の毛と先輩を見つめたら記憶の中で漂っているある少女のことを思い出す。

 3年前、俺を応援してくれたあの子…先輩と似ていた。また会えるかな…


「…うん」

「先輩…?」

「春木…」


 先輩が疲れたそうだ。雨にそれほど濡れたら当然かも…まだ時間あるから寝かせよう。

 次の問題は康二にどうやって伝えるのかだ。佐々木先輩はもう告白でもする気だったし止めるのは無理かもな…

 それと康二に先輩が好きな人の名前は言えずに「いる」って答えようと決めた。

 こんなことが上手くいけるわけないけど…どうせ他人の問題だし解決策は俺から出せない状況だ。

 これって読書部ではなくまるで恋愛相談部見たいだ。


 「ふん…」


 先輩マジで寝てますか…?そろそろどいてほしいけど俺のせいだからまた叱られるよな…

 ご飯でも食べさせて送ろう。

 先輩をソファーに置いてからこそこそ台所に行った。マートで買ったものを確認して冷蔵庫に入れた。

 

 人参、たまねぎ、しいたけ、豆腐…


「ベジテリアン…?」


 後ろからだしぬけに顔を出す先輩はビニル袋の中を見ていた。


「わぁー!びっくりした…」

「うん?」

「いや、なんでもないです。」


 肉だけあったらスキヤキができそうな野菜だった。


「ね、春木。スキヤキ食べない?」


 同じ考えをしていたのか先輩。

 そうね、濡れた制服も乾かさないと…


「俺、REON行ってきますから先輩は家で待ってください。制服も乾燥機に入れてから帰る時に取ってきます。」

「私も行くから…!待って。」

「いいです。先輩に合う服がないから…」

「そうか…」


 俺は家を出て大雨の中を歩いて行った。

 大雨は好きだ、雨が傘に落ちる音がとても気持ちいい、だから一人で出かけた。びしょ濡れになるのは嫌なんだけど、今降っている雨の音に心地よくなる。

 雨の中、先輩の制服を乾かした後REONマートの前に立った。


 先輩と一緒に食べる肉を…


 ……なんだ、あ…足がまた痺れる。


「クソ、なんで今だ…」


 REONの前で急に苦痛が感じられた。


「あ…もうだめか、今度の痛みは…」


 傘を落として痺れる足を掴んでいた。震える手と真白になった頭、雨に濡れた俺はREONの入り口までとにかく足を運んだ。


 こんな体をして、一体誰を…俺はやはりあの時…やめるべきだった。

 色んな考えが苦痛を忘れるために頭を過ぎった。


「心配したよ…春木。」


 先輩の声…

 大雨の中でかすかに先輩の姿が見えた。


「だから一緒に行くって言ったのよ。」

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