第10話 なぜか部活の内容が変わった。−3

「面白そうね。私もその恋話に混ぜてくれよ〜」


 …面倒臭い人がひとり増えた。

 先輩は武藤と佐々木先輩の相談に乗るため、早速生徒会室からカバンを取って俺たちの部室に入った。

 そして俺はさっき届いたもう一つの不在着信を確認した。


 画面

 不在着信、「康二」


 康二も電話をしたのか、本当になにか起こったか気になる俺は4階の階段に座って康二に電話を掛け直した。

 というか待っていても長い接続音だけが続いた。


「電話に出ないな…康二のやつ。」


 ……

 用事があって今は電話出来ない状況か、仕方ないから詳しいことはまた今度にして電話を切た。

 部室に戻るために立ち上がった俺は、康二の方からかけてきた電話に気づいた。


「もしもし、春木かい?」

「今忙しいか、康二…」

「うん、今ちょっとね。」

「後でしてもいいけど。」

「今やってもいいさ。」

「何かあった?」

「それは…まぁー」


 俺は壁によって康二に聞いた。


「なんだ、言えないものなのか?」

「あのさ、春木。」

「ん。」

「武藤春日、先輩と仲良いかね?」


 先輩と仲良い…か…


「まあまあだな、武藤先輩になんの用があるのか?」


 この流れはまさか…

 いや、そんなわけないな…だけどもしも部室に俺の声が聞こえるかもしれないから少しずつ階段を下りた。


「あの武藤先輩って好きな人いるのかい?」

「武藤先輩の…す、好きな人か。」


 なぜ嫌な予感はいつも当たるのか、康二…告白でもするつもりか。


「春木?」

「あーごめん。それはよく分からないな、聞いたこともないから。」

「それもそうね、知ってるか春木。」

「何を?」

「前からずっと武藤先輩が好きだった、僕は。」

「…そうだったのか、全然知らなかった。」

「そりゃそうさ、春木はその頃入院していたからね。」


 俺が入院していた時期なら先輩と一緒にいた時期になるけど…なんかすまないな康二、先輩のことが好きだったのか…珍しいなこんな話をするのは初めてだ。

 長い付き合いだったが康二が好きな人は今日知った。


 あー待って。

 こうなると、佐々木先輩の件は言えなくなるどうするんだ。


「春木?聞いてるのかい?」

「あ、うん。武藤先輩のことが好きってことだな…」

「そうそう、だから手伝ってほしいんだ春木。」


 さっきと違う雰囲気の声だ、康二が本気で言ってるのは声だけでも充分感じられる。

 こうなったらどうやって手伝えばいいか、正直分からなかった。


「どうやって?」

「先輩に今好きな人がいるのか、それから調べてくれ!」

「そうか…分かった。それと今日、生徒会に入ったと聞いたぞ康二。」

「それはね、どうしても先輩に会いたくて…つい!」

「そうか、じゃ分かった。時間があったら武藤先輩に聞いて見るけど…」


 もっと言う話があるはずだったが、俺から直接に聞いて見る勇気は出なかった。


「ありがとうよ、春木。お前が友達でよかった。」

「そうか、じゃ切るぞ。」

「うん、頼む。」


 そして電話を切った。

 なんとなく康二と約束見たいなことをしてしまった、これを先輩にどうやって聞くのか俺には自信がなかった。

 軽く康二に佐々木先輩のことを聞くつもりだったが状況がややこしくなってしまった。

 思わずため息が出た。

 

「さてと…」


 まず部室に戻ろう。

 尻の埃を払って階段を上がる途中、4階で立っている人影が映っていた。


「通話が長いよ、春木。」

「せ、先輩?」


 まじか、なぜそこにいますか先輩。俺と康二の電話内容が聞こえたのかもっと注意すべきだった。

 しれっと階段を上がって先輩に話しかけた。


「先輩、なぜ部室から出ていますか?」

「春木こそ、通話長すぎじゃないの?」

「すみません。」

「いいよ、入ろっか?」

「はい。」


 二人きりの時に聞くべきだったが、ごめん康二なぜか聞けない。


「先輩!いけますよ!」

「そうです!私も応援しますから!」


 部室にまた入った時はもう告白するのを決めた佐々木先輩がいた。状況がさらに悪化している、俺が…この状況で何ができる。

 木上は完全に盛り上がっているし、武藤も佐々木先輩に励ましていた。二人を見ているだけで頭が真白になってしまう。

 俺が先輩に好きな人を聞いたら、佐々木先輩は確実に失恋する。逆に何もしないと佐々木先輩は失恋して俺は友達との約束を破れたことになる。

 どっちを選んでも佐々木先輩は失恋になるのか、恋愛経験ゼロの俺にこんな状況は厳しすぎだ。

 考えるのをやめよう、どうせ佐々木先輩を手伝うのは出来ないから。


(やはりこの人生いらないかも…)


 そうしてまた自分に傷つける言葉を吐く俺がいた。

 やはり人と関わるのは苦手だ。


「ごめん、ちょっと俺用事があって先に帰る。佐々木先輩も頑張ってください…」

「そうか、うん!私頑張るから!」


「はい、加藤さん、またあし…。」

「バイバイ〜」

「春木、バイバ…」


 俺は椅子に置いているカバンを持ってすぐに部室から出た。


「行っちゃった…」

「…」

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