第7話 二人きりの朝。

 なんか暑いな…

 普段は涼しいはずだけど、今朝は暑い気がした。窓の外から聞こえるスズメの鳴き声に目覚める朝、眩しい日差しが居間にさし込んでいた。


 隣から重い何かに押された気分がして、頭を左に回したら先輩の顔がすぐ目の前にいた。

 とても近い距離、先輩の長い茶色髪の毛は俺のところまで届いていた。スヤスヤしている先輩はまだ夢の中にいるみたいだ。

 ふと、見える先輩の赤い唇に緊張した。


「また…こんなに無防備…」


 起きたいけど先輩が腕と足を使って俺を抱き枕のように抱きしめていた。ここで起こすのはひとまずやめた、まだ時間が早いから少し先輩を見つめていた。

 先輩の寝相を見るのも久しぶりだった。なぜこの人が俺のことを好きになるのか理解できなかった。

 こんなに偉い人にはもっと相応しい人がいるはずだけど…


 時間は朝6時22分、先輩は20分以上同じ姿勢で寝ていた。


「寝ている時だけは…まぁーかわいいな…」

「本当に?」


 .....?

 ひとり言で返事が来た。


「おはよう…春木。」


 目覚めた先輩と目が合った、もっと体を密着して入り込んむ先輩は赤ちゃん見たいに俺を抱きしめた。


「私の寝相を見ていたの?春木エロい…」


 クソ、半分は否定できない。

 俺は胸に入り込んだ先輩を押し出して言った。


「いや、先輩これはちょっと早すぎでは…?」

「何言ってるの…寝る前、私の制服も脱がせたくせに…これくらいはいいじゃん〜」

「…」

「私の肌、見たよね…?春木…」


 やはり学校で死んだ方が良かったかも…


「それは自分で着替えました。先輩。」

「でも、ほら。靴下も脱がせてくれたじゃん〜その後はよく覚えてないけど…私が無防備で寝ているうちに色んなこと…ギャー春木エッチ!」


 少し考えた俺はこの場で決めた。


「…もうこの人生いらないので捨ててきます。待ってください。」

!!!」


 外に体を投げようとする俺を止める先輩。


「もう〜冗談も通じないね。春木。」

「いや、それは冗談で聞こえない…」

「でも、一緒に寝たことは否定できないよね?」

「…病院でもずっと一緒だったんじゃないんですか。」

「そう…私たち二人で寝るの慣れたね…」


 顔を赤める先輩が恥じらい声を出していた。


「やはり俺、この人生いらないので捨ててきます…」

「分かった、分かった。イタズラはやめる!」

「先輩は学校に行く準備をしてください。朝ご飯は適当に作りますから。」

「はい〜」

 

 朝ご飯はいつものサンドイッチを作っている。簡単で何よりパンと野菜がたっぷり入っているから健康にいいものだ。

 台所でパンの耳を切って、その中身を用意した野菜とつぶしたゆで卵を合わせた。そうして簡単に2人分を作った後、洗ったイチゴとバナナを持って食卓に置いた。

 その間、顔を洗って制服に着替えた先輩が台所まで来た。


「朝はこれにしましょう。」

「うん!」


 二人は食卓で朝ご飯を食べていた。

 

「なんで隣で食べますか…?前にも席あります。」

「こっちがいいよ〜美味しい!」

「子供じゃあるまいし…」


 気づいたら、先輩は最近ずっと俺のそばにいたな…

 朝ご飯を食べているうちに誰かの電話が鳴いてたのか、携帯の振動音が聞こえた。サンドイッチを置いて振動が聞こえる俺の部屋に向かったら先輩の携帯が鳴いていた。


「先輩、電話です。」

「うん!ありがとう!」


 覗いた画面では恵ちゃんと書いていた、多分妹からの電話だろう。


「うん!恵〜!」


 なぜか先輩はスピーカーモードで電話をしていた。片手でサンドイッチを食べながら俺を見て少し笑っている。


「お姉さん!昨日どこで寝たんですか?」

「うん〜外〜?」

「心配してました、次は家に連絡をください…」

「はいはい〜」

「そして、あの…」

「うん。」

「加藤さんは大丈夫ですか?」

「え?なんでそんなの聞く?」

「運転手さんから聞いたんです。」


 なんで俺の心配をするのか…

 今、声を出したら一緒にいたことがバレるから腕で丸を作った。

 頷く先輩。


「そうかね〜もう春木は大丈夫から心配しないでね。」

「そうですか…」

「うん!じゃ切るね〜」


 そろそろ食べ終わったから学校に行く準備をした。

 居間では先輩が両腕で伸びしていた。窓の外を眺めている間、俺も準備を済ませた。


「先輩、先にいってください。俺は片付けてから行きます。」

「じゃ待ってるから。」

「先輩を待たせるなんて…」

「いいよ〜」


 昨日の先輩の寝衣と寝床…そして皿の洗い…

 一人で住んでいるから今やっておかないと、帰った時にもっとやりたくないから早く済ませて先輩のところに行った。


「春木〜こっちよ〜」

「すみません、時間がかかりました。」

「いいよ。」


 頭を横に振りながら俺の前に立ち止まって言った。


「行こ、春木。」

「はい。」


 一晩寝て、一緒に学校に行くのか。

 慣れない状況なんだけど先輩だったからこれが普通だと思ってしまう。


 でも先輩のおかげで少しは俺も生き生きしたかな…

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