第6話 二人きりの夜。
「はぁ…水では足りないな…コーヒーでも飲もうか。」
今夜は家に先輩がいるから眠れなかった、女子と二人きりの夜を過ごすのは初めてだから不安になる…夜明かしするか。
暖かいコーヒーを用意して居間のソファーに座った俺は静かな夜を照らすテレビをつけた。
アナウンサー
「はい、まだ高山県警察は2年前の銀行強盗事件の手がかりを見つけられなかったそうです…」
アナウンサー
「あの時の事件は高山県の人々が本当に驚いた大事件なので…2億円強盗事件は…」
夜のニュースにはいつもの犯罪事件の配信をしていた。確かに高山で銀行強盗事件が起こるのは珍しい事だった。
都会でもない小さい街からそんな大金を盗んでどこに使うのか気になる。
そしてアナウンサーが見せてくれた犯人の写真を見て今まで忘れた何かに触れた気分だった。
2億円…強盗事件…?
ソファーでニュースの内容に疑問を抱く時、先輩が眠い目を揉みながら部屋から出てきた。
「うん…」
「あ、先輩。眠れないですか?」
「部屋が暑いから眠れない…」
そう言って俺のそばに座った。
「冷房でもつけた方がよかったかもですね。」
「うん…ね、春木…」
「はい。」
「今、何時?」
俺は顔を上げてテレビ上の時計を見た。それと共に目を閉じたまま話している先輩の顔も見えた。
肩に寄りかかる先輩は力のない声であくびをした。
「9時半ですね。」
「そうか…春木は寝ないの?」
「今、コーヒーを飲んだばっかりだから眠気はないですね。」
「そ…うか…」
「先輩、眠そうなら部屋に入ったらどうですか?でもその前には制服は脱いでくださ…」
話が終わってないのにびっくりした顔で言う先輩。
「え!それは下着だけで寝るってことなの?春木はそんなのが好き…?女の子が男子の部屋に半裸で寝ること…」
「いやいやいやいや、違う!部屋の床に寝衣を用意したんじゃないですか!」
「フッ。冗談よ〜」
「勘弁してください…」
「春木は寝ない?一緒に寝よ!」
この人はマジで自覚ってものがないのか、そう言っても眠そうで体をゆらゆらしていた。先輩は立ってはすぐ
「はいはい、部屋に連れて行きますからもう寝てください。」
部屋のベッドに座らせて先輩の脚の上に寝衣を乗せてあげた。
「寝衣に着替えてお休みなさい。」
「脱がせて靴下…」
「…自分でやること〜」
「はるき!」
「はいはい…分かりました。」
この歳になって靴下まで脱がせないといけないのか、俺ちょっと可哀想な…
先輩の足を一つずつ持ち上げて左と右の靴下を脱がした。スッキリしたのか、そのままベッドで横にして俺を見ていた。
「春木…」
「はいはい、もう寝てください。」
「うん…おやすみ。春木。」
ドアを閉じて俺も寝る時間になった。
時計の針はもう11時半を示していた。あの人にどれくらい時間を取られたのか、考えるのも疲れたから居間で寝床を作った。
ここは自分の部屋よりいい場所だ、枕に頭をつけたらすぐに眠気が襲う夜。
「おやすみ。」
俺は一言を呟いて目を閉じた。
深夜、みんなが寝ている静かな家で涼しい風が吹いてきた。その時、部屋からこそこそ出る春日。居間で寝ている春木のことを見つめて腕で抱きしめた枕を彼の隣に落とした。
寝衣に着替えた彼女は彼のそばで横にした。体を回し、腕と足を使って彼を抱きしめたまま頭を肩に乗せてこう言った。
「春木といるとポカポカする…おやすみなさい…はるき…」
そうして二人きりの一日が過ぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます