第3話 結婚話の件について
「おめでとう~~~!!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
てか、先輩、受け入れるの早くないか!?まさか・・・・最初から知ってた!?
まぁ、それは百歩譲っていいとしても・・・・
「ちょっと待てよ、そんなこと一回も話したことなかっただろ!この脳筋ゴリラっ!!」
「そりゃ、驚かせようとしたからな。ね~~、蘭さん」
「ね~~」
父さんの共犯者である先輩のお母さん、もとい蘭さんもニコニコと笑顔でこちらを見ていた。
ダメだ・・・・この二人・・・いや三人、か・・・
「ハァーーー、今日は驚かされてばっかりだ・・・。」
「そんなに驚いてくれたのか、嬉しい限りだ!!」
「黙れ。」
「おーー、辛辣。てか、俺たちそんな何回も驚かせた覚えはないぞ?」
「嘘つけ!!先輩が家にいたことや蘭さんが後ろから声をかけてきたこと、いきなりの再婚宣言!!さらに、今日一番驚いたのは先輩が――――――――ひゃあっ!!」
脇腹のあたりを隣に座っている先輩にくすぐられ言いたいことを言えず、口から出たのは男が出すような声とは程遠い女性の悲鳴みたいな声だった・・・。
くすぐってきた先輩を見ると少し引き気味になっていた。蘭さんは、驚いた顔でこちらに目をやり、父さんなんてドン引きした顔でこちらを見てきやがった。
「引くな!引くな!自分の息子だぞ!?しかも、なんで先輩も先輩で少し引いてるんですか!?先輩のせいで変な声が出たんですよ!?」
「いや~、そんな声出るとは思わなくって・・・」
「俺も息子がそんな声出すことに驚きを隠せくってな・・・。」
「・・・・・・」
「男の子もそんな声出すのね~」
「・・・・今のは・・・聞かなかったことにしてください。」
「そんなことよりも、二人ってどこで会ったの?」
そんなことって・・・・辱めを受けた屈辱として先輩を睨んでみたが、先輩は俺を無視し、二人の馴れ初めに興味を示してしまった。
「えー、恥ずかしいな~」
俺よりも恥ずかしいことなんてないだろ!!と思いつつも俺も興味をひかれていたためか耳をいつの間にかそちらに向けていた。
「渡さんと出会ったのは、半年前くらいに駅で出会ったわ。そのときはね~ひどい通勤ラッシュだったの。みんなが我先にって急いでた。そんな中で私、ちょっとつまずいちゃってね~。その場にいた人、ほとんどが無視していったわ。ひどい人なんて邪魔だ!!とまで言われたわ。まぁ、転んだ私が悪いんだけどね~。でも、そんな中にも手を差し伸べてくれる人がいた。それが―――――」
「父さんか・・・・」
「えぇ、渡さんは、自分も急いでいるのに私に手を差し伸べて助けてくれた。そんな姿に私は一目惚れをしちゃったの・・・・・」
「へぇ~、いい人見つけたね。お母さん!」
「脳が筋肉のくせにいいことするじゃん」
「いや、俺はただ当たり前のことをしたまでで・・・・・」
俺たちの誉め言葉や改めて蘭さんからの言葉に父さんの顔はだらしないほどに照れ照れになっていた。
・・・・するといきなり先ほどまで、照れまくってた顔がいきなり真剣な顔立ちになっていた。そして次の瞬間、父さんは、俺たちに向かって頭を下げてきた。
「陽斗、皐月ちゃん、いきなりの結婚で混乱させてしまって申し訳ない。二人はまだ思春期真っ只中で知らない人と一緒に暮らしていくことに抵抗感があると思う。でも蘭ちゃん、陽斗は男としてあまり頼りないかもしれないけど、陽斗はやると決めたら必ずやる、半端なことは絶対にしない男だ。だから・・・・皐月ちゃん、陽斗の姉になってやってくれ!!」
「はい、分かりました。それに、私は、この話を聞いた時から嫌という思いなんて一ミリも感じてません。むしろ、お母さんが幸せになれるならそれが一番優先するべきことだと思っています。ですから、これからは二人の娘として、矢吹・・陽斗くんの姉として家族になっていけたらいいなと思っています。」
先輩は一切考えるそぶりも見せず、即答だった。
「陽斗くんは?」
「俺は・・・・最初は驚いたけど、こうしてしっかりと説明してくれたから納得したよ。父さんが真剣だってことが伝わったよ。・・・・それに、俺だって父さんの幸せを優先したい・・・・。」
「陽斗っ!?」
俺からそんなことが聞けると思っていなかったのか脳筋の父さんも涙目になっていた。
「・・・二人とも・・・ありがとう」
「二人とも、親思な子に育ったわね~・・・ありがとう。皐月ちゃん、陽斗君。」
蘭さんも俺たちの頭を下げお礼を言うと父さんに体を向けた。
「渡さん・・・これからよろしくね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
真面目な話で緊張していた空気が解けたかのように軽くなっていくのを肌で感じた。
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