第2話 何故か、家にいる件について

「え、えっと・・・だから、私を矢吹くんの妹にしてほしいの!!」


「・・・・・・・はい?」


「いいの、矢吹くん!?まさか私、即答してくれるなんて夢にも思わなかったわ!!」


先輩は、まるで、子供が欲しいおもちゃを買ってもらったかのように純粋に喜んでいた・・・。いつもの先輩とはまるで違い、冷静さの欠片も感じれないような性格が露呈していた。俺の中で何も理解できていないのにだ・・・。


「ちょっちょっちょっと待って!!待って!!待って!!」


「どうしたの?」


「なに勢いで終わらせようとしてるんですか!?」


「え、でも今、はい!って・・・」


「違いますよ!!ていうか、はいの後ろの符号も全然違うし!!」


「??」


先輩はなにを言っているかわからないと言いたげな顔で首をかしげていた。


「てか、なんで妹なんですか!?」


「お兄ちゃんが欲しいから!!」


「・・・即答ですね、先輩。それに、普通はこ、恋人とかじゃないんですか?」


「恋人はいらないわ。」


「・・・・即答、ですか・・・」


なぜ、そこだけ冷静なのか・・・いらぬことを聞き、心に壮絶なダメージを受けた気がした・・・。


「でも、さっきなんでも受け入れるって・・・」


「・・・・・受け入れるなんて言ってませんよ!?」


一瞬、言ったけ?と考えてしまったがやはり言ってはない。


「ダメ、なの?」


目を潤め、上目遣いで見てくる先輩に対してなぜか罪悪感が襲ってきた。


うっ!?・・・てか、なんで俺が悪いみたいになってるんだ!?こ、ここははっきりと断らないと!!


「・・・ダメです」


「そ、そうか。・・・・すまない。矢吹くんを困らせることを言った。忘れてくれ・・・」


最初こそは落ち込んでいたが、二言目にはもう、いつもの冷静な先輩が戻っていた。


「それでは、お疲れさま、矢吹くん。」


「は、はい。お疲れ、さまでした・・・」


な、なんだこの罪悪感・・・。まるで、女子からのを断ったような罪悪感は!?


・・・帰ろう・・・


それから、家に帰るまで、罪悪感に心をむしばまれながらも重い足取りで帰宅した。


「・・・・・ただいまー。」


「おかえり、矢吹くんっ」


・ ・ ・ ・ ・バタンっ!!


な、なんで先輩が!!帰ったはずじゃ!?・・・そう、玄関を開けた先にいたのは先輩だった・・・。正座をし、こちらに笑顔を向けていつも、おかえりと言っているかのように家に溶け込んでいる!!


勢いよく玄関を閉め、今の現状を頭の中で整理したが、理解が追いつかない。表札を確認してみても表札にはちゃんと”矢吹”と書かれているので間違いはない・・・。


一つだけ思い当たるとすれば・・・さっきから先輩に対する罪悪感が凄すぎて幻覚を見たのか・・・


も、もう一度、玄関を開けてみよう・・・見間違いかもしれないしな・・・。


恐る恐る玄関を開けるとそこには―――――――――――――――誰もいなかった。


ふぅーーーー、やっぱり見間違いだったか。嬉しいような、嬉しくないような感情が罪悪感の上に押し乗せてくるのを感じた・・・。


「あの、うちに何か用ですか?」


「うわっ!!!!」


後ろのほうから先輩の声が聞こえびっくりし振り返るとそこには・・・・顔や声は先輩に似ているが明らかに雰囲気が違う先輩がそこにいた。え・・・先輩が二人!?


「いや、待ってください!?ここはうちの家ですよ、先輩!?」


「先輩?私、若くは見られるけどあなたのような若い後輩はいないわよ?」


「え・・・・・」


先輩に似た女性に諭され冷静になり、女性の顔をよく見てみると確かに先輩に似ていた。だが、よくよく見ると、先輩よりは年老いて・・・・・


「おい」


「すみませんでした!!」


まさにヤンキーの如き視線の鋭さに一瞬で怯んでしまった。こ、怖ぇーー!!怖ぇーよこの人!!し、しかも心読まれたし!?


「・・・・あら、あなたもしかして、陽斗君!?」


「あ、はい。そうですけど・・・」


「やっぱり!!さぁ、中に入って!!」


「え、はい。お、お邪魔します・・・」


鋭い視線は何処へやら・・・すっかりとさっきまでの穏やかな雰囲気に変わっている・・・。あれ、なんで俺、自分の家なのに接待されてるんだ?しかも、この強引さ、先輩にそっくりだ・・・。まさか・・・・・・・


「おう!おかえり、陽斗!!」


「なにしてたの、矢吹くん?」


見慣れた廊下を歩き、リビングに行くと・・・・リビングにはごっつい大柄な男とさっきまで玄関にいたはずの先輩が座っていた。


幻覚じゃなかった・・・・。


薄々、気づいていたが、この女性って・・・・


「あ、お母さんも一緒だったんだね~。おかえり~」


「蘭さんもおかえりなさい」


「ただいま~、皐月ちゃん、わたるさん」


やっぱり、先輩のお母さんか・・・・どおりで似ているはずだ・・・。


「陽斗も帰ってきてみんな揃ったことだし、発表しますか!!蘭さん」


「そうね~」


「コホンッ!!えーー、わたくし矢吹渡やぶきわたると・・・・」


わたし白金蘭しろかねらんは・・・・」


「「結婚しました!!!!!!」」


「おめでとう~~~!!!」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」


本日、何回目かのびっくりです。











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