第7話 ピーチツリー
冬休み最後のアルバイト出勤日を前にして、前日の夜私は最高に
浮かれていた。
明日になれば大金が手に入る。欲しいものぜーんぶ買う!
前夜祭という事で、前のアルバイトの時に買った「ピーチツリーフィズ」という
割って飲む酒を盛大に飲んだ。
高校生のくせに。でも
鼻からたばこの煙を出すよりいいじゃない?
当時このお酒はCMを沢山流していた。
フェアチャイルドのYOUさんが可愛らしく宣伝をしていて
すりガラスのボトルに入った淡いピンクのそのお酒は私を引き付けた。
当時は高校生がお酒を買ったってあまり気にされることもなかった。
自販機でお酒が売っていたくらいだからね。
次の日私は二日酔いになった。
頭は痛いしふらつくのである。
でも給料は手渡しだったので、根性でふらつく足のバランスを取りながら
何とか最寄りの駅までついた。
駅の階段の3分の2を降りたところで私は下に転げ落ちた。
両ひざから血が流れたが生きていた。
私はお金のために立ち上がった。血まみれの上に欲まみれである。
そんなこんなで手にした大金、今では何に使ったのかまったく覚えていない。
金とは何ぞや?
物は物でしかない。
今はわかる。
でも、このアルバイトで得た経験は大きかった。
最初は 掃き溜めなんて言っていたこの場所、
自分の居場所やいる意味を守ろうと一生懸命生きているおばちゃん達。
親切で人を思いやりにあふれた非社会的勢力の社長さん夫婦。
おかっぱちゃんの乙女心、おばちゃんになって腐ってガスが出てなんて
ことは無い。
皆頑張って生きてるなぁ。
そう思うと 嫌な奴も愛おしく、 私ももうちょっと頑張ってみよう。
そう思うのであります。
あの日に帰りたいとは思わないけれど、
時々あの日の皆にまた会いたくなってしまう。
その思いをここに書き残す。
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