第153話 デートプラン
十二月五日、月曜日。
拓也たちは夕食も食べ終え、リビングで三人、話し合いを行っていた。
「やっぱりイルミネーションやろ!」
御子がドヤ顔で言った。
「どこかでディナーとかじゃないの?」
そんな御子に拓哉が意見を言う。
「えー、おうちでご飯食べるとかじゃダメかな?」
光もおずおずと意見する。
「良いんじゃない?」
拓哉はその意見を肯定した。
「まぁ悪くはないけどな。でもイルミネーションも見たいやろ?」
そう言って御子は雑誌のイルミネーションの特集記事を開いて見せた。
そこには煌びやかなイルミネーションたちの名所が色々と載っていた。
「うわー、凄いね。花火みたい。」
光は目を輝かせた。
「未来ってこういうの無かったの?」
拓哉は素朴な疑問を口にした。
「未来じゃこういうイベントは、オンライン上がメインだったから。」
(あー、なるほど。)
拓哉はなんとなく納得して、一人悟ったような顔をしていた。
「そんなん、どうでもええねん!今は光のデートプランや!」
こんな調子で、今日は三人で光のクリスマスデートプランを考えていた。
というのも――
――――
「で、ひかりん当日は何がしたいとか、どこか行きたいとかあるの?」
唯志は光に当日の予定を聞いてみた。
「あ、えーっと・・・。」
光は困った。
誘うことで頭がいっぱいで、誘った後のことは全然考えてなかった。
当然当日の予定など、まったくもってノープランだ。
「まさかとは思うけど、何も考えてなかった?」
唯志は困っている光を見て思わず笑いだした。
「あ、笑った!だって、誘うので必死だったんだもん!」
光は笑われたのでぷんぷん怒っていた。
「あー、はいはい。じゃあなんか考えとくから。」
唯志はくつくつ笑いながら光をなだめた。
「え、でも私から誘ったのに。」
「じゃあ、ひかりんも何かしたいこと無いか考えといて。」
「わかった!頑張るねー!」
――――
そして今に至る。
頑張ると宣言したものの、元々何も考えていなかったので何も思いつかない。
そのことを拓哉たちに相談したところ、急遽この会議が開かれることとなった。
「吉田も黙ってないで、何か良い意見出してや!」
御子は黙って考え込んでいる拓哉に噛みついた。
「そもそもさ、俺たち全員がクリスマスデートなんて未経験だし・・・。」
拓哉は残酷な現実を口に出してしまった。
「だからなんや!?」
拓哉の言葉に御子はヒートアップしている。
「え、いや、良い意見なんて出せるのかなーって。」
御子の剣幕に、拓哉はたじろいだ。
「あー、確かに。」
光は何か腑に落ちたといった様子で感心していた。
「むぅ。そう言われたらそうなんやが・・・。」
これには御子も渋々同意した。
「あはは、困ったね~。」
言葉とは裏腹に、光はニコニコしていた。
「光、笑いごとちゃうで。」
御子はため息をつきながら言った。
「でも実際、縁遠かった人とそもそも完全に初めての人じゃ、意見にも限界があるって。」
拓哉は珍しく冷静に分析した。
その内容は後ろ向きだが。
「確かになぁ。なら、
御子の言葉に、二人は首を傾げていた。
――
「それで私が呼ばれたの?」
拓哉のノートパソコンの画面上で莉緒が笑っている。
「笑いごとちゃうねん。三人もおって、全員が未経験なんやから。」
御子は深刻そうな顔をしている。
(そんな深刻になることか・・・?)
とか考えていた拓哉は、案の定御子に睨まれた。
「莉緒ちゃんは、クリスマスにデートとかしたことあるの?」
「まぁ人並みには。それにほら、去年は唯志と・・・ね。」
言っておきながら莉緒は苦笑いしていた。
(よくよく考えたら・・・。これ、人選間違ってない?)
拓哉はそう思った。
当然だが莉緒は去年の今頃、唯志と付き合っていた。
冷静に考えたら、
普通の感覚なら複雑な状況、と言うよりまずあり得ない状況だ。
だが、裏を返せばこれ以上ないほど適任でもあった。
「普通そういうの
莉緒は言いながらくすくす笑っていた。
「ええやん、莉緒は気にせえへんやろ?ならこの方が手っ取り早いやろ。」
御子は全く動じていなかった。
多分色でも見て、気にしているか、していないかわかっているんだろう。
実際、莉緒を見る限り全然気になっていない様に見える。
「まぁひかりんの為だ。ひと肌脱いじゃおうかな!」
多分画面の先で胸を張っているだろうことが窺えた。
「ありがとう、莉緒ちゃん。」
光は嬉しそうだ。
ただ一人、拓哉だけ複雑な心境だった。
「つっても、相手唯志でしょ?ほっといたら考えてくれると思うけど。」
ひと肌脱いだ割に、ざっくりした助言だった。
いや、助言ですらない。
唯志に丸投げだ。
「ええ?そんなので良いの?」
光は驚きながら返事をした。
御子や拓哉はあれやこれやと大騒ぎしたのに対して、莉緒の答えはずいぶんとあっさりしたものだったからだ。
「良いんじゃない?去年は唯志に任せっきりだったよー。」
「そういうもんなんか?」
御子も拍子抜けと言った様子だった。
「そういうもんだよ。それに、どうせなら男の人にエスコートして欲しくない?」
莉緒がそう言うと、女性陣二人は目から鱗が落ちた様子だった。
ちなみに拓哉は耳が痛いので、聞こえないふりをしていた。
「まぁひかりんがどうしてもしたいことがあった時だけ伝えたら良いんじゃない?」
三人で大騒ぎして考えたが、何のことはなく簡単な結論へと辿り着いてしまった。
通話が終わった三人は、拍子抜けしすぎてしばらくの間無言だった。
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