第133話 ブリーフィング2
十月二十七日。
おおよそ十九時。
参加者の全員が拓哉たちの部屋、或いはskypo上で集まった。
今回の参加者はこれまで光の件で動いていた人たち、
ビデオ通話を開始すると、画面上に全員が映し出された。
「おおー、みんなお疲れー。」
開始と同時、いの一番に挨拶をしてきたのは恵だった。
佐藤の横からひょっこりと顔を出している。
恵は佐藤の事務所で、佐藤のskypoから参加している。
「恵ちゃんお疲れ様。他のみんなも、ここにいるみんなも。今日は私の為にありがとうございます。」
光が丁寧に挨拶とお礼を述べた。
「気にしなくて良いよ。平日だし、さっそく本題に入ろうか。そちら側、人数が多くて見えないが、唯志君はいるのかい?」
唯志は画面外になる部屋の壁にもたれかかっていた。
どうしてもスペースの都合上、PC前のスペースには人が入りきらない。
女性陣と拓哉が椅子に座って、画面に映し出されている状況だった。
「ええ、いますよ。狭いんで、必要時に画面に映るようにします。」
「おーけー。他の人も・・・良さそうだね。」
間宮が他の人の画面を確認してそう言った。
「人数多いからな。それぞれが勝手に話し始めると収拾がつかない。まずは光ちゃんの話を聞こうか。」
佐藤がそう言って、光に話を促した。
「え、あ、はい!えっと・・・。」
光は緊張して、何から話していいか悩んでいた。
「とりあえず、未来を変えるためにどう動くつもりなのか。何か方針は決まった?」
困っていた光に、横から唯志がフォローを入れた。
「あ、うん。須々木さんを説得して、研究を止めてもらう・・・。それしかないかなって思ってます。」
唯志に促された光は、唯志と画面を交互に見ながらそう答えた。
女性陣は先日の女子会で、拓哉には昨日、この方針は伝えてあったので、その他の人向けの説明だった。
ただ、唯志と間宮はこの展開は予想していたし、佐藤も恵から聞いているだろう。
同じく野村も拓哉から聞いている。
要するにここまでは、全員が何らかの形で知っていた。
問題はその次だった。
「それで、その手段だが・・・。どうするつもりだ?」
佐藤がその続きを光に促す。
「えっと、それなんですが・・・。須々木さんに会う方法がわからなくて・・・。」
(ま、予想通りだな。)
唯志は少し離れた場所で聞きながら思っていた。
間宮も似たようなことを思っていただろう。
「まずはそれを相談したいです。」
そして、光がそう締めくくった。
「あの・・・、どなたか何か良い方法、思いつきませんか?」
そして次に光は全員に意見を募った。
「光、はっきり言った方がええで。ぶっちゃけると、間宮に頼むしかないと思っとると。」
御子が横から口を出した。
「う・・・。その、間宮さん何とかなりませんか?」
光も御子に言われ、申し訳なさそうに間宮にお願いした。
そして、全員が画面上の間宮に注目した。
「ははは。まぁそう来るかなって予想はしてたけど。・・・唯志君、良いかな?」
間宮はそう言うと、唯志の意見を求めた。
「唯志君?」
光はぽかんとしながら、唯志の方を見た。
いや、光以外の部屋にいる全員が唯志に注目した。
「はぁ・・・。ええ、良いですよ。と言うか資料こっちから出します。」
唯志はそう言うと、拓哉にUSBメモリを渡した。
「これ差して。あとパソコンの操作変わって。画面共有する。」
「え、うん。」
拓哉は唯志の指示を受け、USBメモリを差すと、場所を譲った。
「えっと、唯志君?どういうこと?」
光はキョトンとしながら唯志に質問した。
「唯志君に頼まれてね。須々木に関する情報は、既に担当してた記者から集めておいたよ。」
光の問いには間宮が答えた。
「え!?・・・唯志君。」
光はウルウルしたような、恍惚したような表情で唯志を見つめた。
「こうなるのは予想できたし、時間的に猶予もなかったから勝手に動いた。悪いね。」
唯志はPCを操作しながらそう答えた。
「ううん!悪くないよ!ありがとう唯志君。」
光はそう言って唯志を見つめていた。
相変わらずうっとりしたように。
「ちょっとみんなこの画面見てくれ。」
唯志がそう言うと、画面上に資料が映し出された。
skypoで画面も共有し、全員が同じ画面を見ている。
「間宮さんに貰った情報を基に、俺が勝手に調べて纏めた資料だ。まずは間宮さんの情報を簡単に--」
そう言って唯志は間宮から貰った取材資料を基にした説明を始めた。
主に須々木と接触するための情報を。
須々木の勤務地に侵入は難しい事。
須々木の勤務状態も不規則で予想が出来ないこと。
但し、木曜日だけは必ず十八時に帰り、いつも同じ喫茶店で夕食を食べていること。
そこまで説明すると、今度は画面上に地図が映し出された。
「これが須々木の勤務地。それで、目的の喫茶店は・・・ここ。」
まるでプレゼンのように、画面上の地図にマークなどが入っていく。
「おお!じゃあここで待ち伏せして、捕まえたらええんや!」
「ほんとだ!すごいすごい!」
御子と光がはしゃいでいた。
見えないが、画面の先で恵がはしゃいでいる声も聞こえる。
主に女性陣がなんとかなりそうと言う希望に沸き立つ中、拓也は一人黙って考えていた。
(これなら・・・やれるかもしれない。)
そして、やれてしまった先のことを考え、俯いた。
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