第129話 唯志の考え
時は同じく十月二十四日。
この日、唯志は自室で色々と作業をしていた。
今は通販サイトで
「とりあえず
唯志は一仕事終えたようで、ふぅと一息ついたところだった。
そこにskypoが着信を知らせる。
「間宮さんか。早いな。」
そう呟いて、すぐに着信に応答した。
「やあ、唯志君。こんばんわ。例の件だけど、得られるだけの情報と資料を集めたよ。」
間宮は早速とばかりに経過を報告した。
「ありがとうございます。資料はデータで貰えますか?」
「もちろん。今送るよ。」
間宮がそう言うと、唯志のskypoに電子データが送られてきた。
唯志はその内容をサラッと一読する。
「なるほど・・・。結構しっかり調べてるもんですね。雑誌に載ってない情報も満載だ。」
唯志が感心したように呟いた。
「ははは。僕たちも結構頑張って調べてるんだよ。」
間宮がそう言って笑っているが、唯志は相変わらず資料とにらめっこしていた。
「で、唯志君、どう思う?」
唯志が資料に目を通すのを待って間宮が質問した。
「ひかりんがもし本気で未来を変えたいなら、行き詰まるのは須々木と会う方法かと思います。」
唯志は一通り見終わった資料を、再度念入りにチェックしながら話している。
「だろうね。そこがネックになると僕も思う。」
間宮も同意する。
「この資料で行くと、その可能性があるのは十一月四日。これが最初で最後のチャンスだ。」
唯志は資料の中から、須々木と会える可能性を探し出したようだ。
「・・・だろうね。僕もそう思ったよ。」
これにも間宮は同意する。
十一月四日木曜日。
須々木は木曜日だけは仕事を切り上げる時間を決めていた。
そして必ず同じ喫茶店で夕食を食べる。
これをルーチンワークとしている様だった。
接触を図れるとしたら
「翌週の木曜日。ここが研究成果の発表と記者会見なら、この日しかない。」
唯志は他の資料にも目を通しながら続けたが、結局結論はそれのようだ。
正確に言えば、十月二十八日の木曜日もあるのだが・・・
「作戦会議が十月二十七日・・・。なら、翌日は無理でしょうし、やっぱりワンチャンスだ。」
光が全員に改めて招集をかけたのは、全員の都合を考え十月二十七日だった。
故に翌日の二十八日はノーチャンスだと言う意味なんだろう。
「逆に言えば、十一月四日を逃せばチャンスは無くなる。どうする?」
間宮が真剣な表情で唯志を見つめた。
間宮が言いたいのは、あえて情報を
「・・・いえ。今度の作戦会議の時に話してあげた方が良いでしょう。」
唯志は少し悩んだが、はっきりとそう答えた。
「良いのかい?正直良い予感はしないけどね。」
間宮は光の行動に不安を感じてるようだった。
「出来ることなら、手遅れになって有耶無耶・・・ってのが平和とも思うよ。」
間宮は率直な意見を述べた。
「いや、ひかりんの意思は固そうでした。何も手段が無くて、玉砕覚悟の特攻でもされたらそっちの方が危ない。なら、情報を教えて動き易くした方が、まだ安全だと思います。」
「確かにそういう考え方もあるね。」
間宮は顎に手を当てて考え込んだ。
「とりあえず情報は助かりました。資料を基に、俺も少し考えてみます。」
唯志は礼を言うと、話を切り上げようとした。
「そうだね。僕の方ももう少し何か調べてみるよ。・・・唯志君もあまり無理しないようにね。」
「ありがとうございます。それでは。」
そう言って唯志はskypoのビデオ通話を切断した。
「はぁ。」
通話が終わった唯志は、ため息をつきながら資料に目を通し始めた。
--
資料に一通り目を通し、必要そうな情報も調べ終わった頃には夜も遅くなっていた。
「これ、現場調べた方が良いな。」
恐らくXデーとなる、十一月四日。
その日の須々木の動向を予想しているところだったが、ネットから得られる情報だけではやはり不足が多い。
「作戦会議は水曜日・・・。時間が無いな。」
今日が日曜日。
とにかく圧倒的に時間が足りなかった。
「まぁ他にやることもないし、動けるうちに動くか。」
唯志はそう言うと、現場までの行き方や、周辺情報の情報収集へと移った。
「・・・イレギュラーがあるとしたら、
唯志の懸念は山田だった。
ここまで目立った動きが無い。
人知れず動いて、無残にも散っていたらそれで良いが・・・。
「そっちの対策は・・・、まぁこれが限界だな。」
そう言うと唯志は山田対策の資料などに目線を送った。
その時、唯志のスマホがメッセージの受信を伝えた。
見ると相手は光だった。
[唯志君、ちょっと私だけじゃ行き詰まってて・・・。明日とか相談できないかな?]
光から相談があるという内容だった。
[ごめん、明日はやることがある。急ぎ?]
唯志はすぐに返事をした。
[ううん、良いの。唯志君忙しいもんね。ごめんね。]
光からもすぐ返事が来た。
追い打ちが無いってことは急ぎではないんだろう。
[悪いね。水曜日に、でも良いか?]
唯志もすぐに返事をする。
[うん、大丈夫だよ!夜遅くにごめんね。おやすみ。]
[おやすみ、ひかりん。]
そう返事を送ると、以降返信はなかった。
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