第128話 女子会とか

日曜日の十月二十四日。

世間はハロウィンモード感が出始めている。

そんなある日の夕刻。

光の部屋では女子会が行われていた。


急遽呼び出されたのにもかかわらず、全員参加してくれたことに、光は感謝していた。

なお、この間拓哉はというと、自室に籠っていた。


お題は当然だが、未来を変える件について。

近く全員召集を行う予定だが、先駆けて女子たちの意見が欲しかったようだ。


--

「へぇ~、そんな面白い展開になってたんだ。」

莉緒が楽しそうに、うんうん話を聞いていた。

「て言うか莉緒ちゃん知らなかったの!?唯志君から聞いてないの?」

恵が莉緒の反応を不思議そうにしていた。


(しまった!)


光は瞬間的にまずいと思った。

その件について、触れないように話を進めるつもりだったのに詰めが甘かった。

今一番そこは触れちゃダメなのに、と。


しかし莉緒の反応はあっさりしたものだった。


「うん、聞いてないよー。てか私と唯志、別れたんだよね。だから会ってないし。」

莉緒は特に気にした様子もなく、笑顔で言っている。


「え?」「は?」

知らなかった恵と御子は、口をあんぐりと開いて驚いていた。

「あはは。良いリアクション。」

莉緒はくつくつと笑っている。

別れたことについて、全然気にしてないようだ。


「まぁそれはもう済んだ話だし。それに、ひかりん驚かないね~。知ってた?」

莉緒は意地悪そうな笑顔をしながら光をつついた。


「えっと、この前唯志君から聞いた。その、ごめんなさい。」

光は申し訳なさそうに頭を下げた。

「なんでひかりんが謝るのさ。」

莉緒は相変わらず笑いながら話していた。

「その、莉緒ちゃんから聞く前に聞いちゃってて。」

光は莉緒が言う前に知ってたことを気にしていたようだ。


「それ、謝ること~?」

莉緒はまったく気にしてないようで苦笑いしている。


「それよりも~。早くも唯志と遊んでるとは、やるね~ひかりん。」

莉緒は引き続き、光をつつきながら茶化していた。

「違うよ!そういうのじゃなくて!もう!」

光は慌てて否定した。


「そんな否定しなくてもいいのに。まぁそう言うわけだから。今唯志フリーだよ。早い者勝ち!」

と莉緒が囃し立てた。

「え?マジで!?もしかしてワンチャンある!?」

意外にも、その言葉に反応したのは恵だった。

「おー、あるある!なに?めぐみんも唯志狙い?」

莉緒は楽しそうに、笑って見せた。


「ひかりんも。のんびりしてると他の人に盗られるぞー?ああ見えて、あいつモテるからねー。」

そう言って莉緒は光を指さして微笑んだ。

「え、あの、その・・・。そうじゃなくて、今日はその話じゃないの!」

照れていた光は強引にに話を戻そうとした。


「その通りじゃ。その話は本題が終わってからにしとこ。」

黙って聞いてた御子だったが、光の意見に賛同し、話の続きを促した。

「終わってからもしないよ!?」

光は照れながらツッコんでいたが。


「って言ってもねー。正直そういうのは唯志じゃないからわからないなぁ。」

と莉緒は両手を広げてお手上げといったポーズをとった。

「私もー。佐藤さんに相談したら何か良い案出してくれるかもだけど。」

恵も同じく頭をかいている。


「うーん、そうだよね。須々木さんに会う方法・・・なんて言われてパッと思いつかないよね。」

光はこの無理難題をどうするか相談していた。

一昨日、拓哉・御子と話した時点で方針は決まった。

だが、方針が決まったことと実行できることは違う。

昨日一日頑張って考えてみたが、さっぱり良い方法が思いつかないのだ。


「現実的に、うちらが須々木に会うのは無理やろ。何のコネもないで。」

御子が誰もが思っていた現実を突きつけた。

「まぁそうだよね。」

これには莉緒も同意だった。

横でうんうん頷いている恵も同意見なんだろう。


「だよね・・・。となると、やっぱり間宮さんに頼んでみるしかないのかな。」

結局光は、光なりに考えて出した前日の結論に戻っていた。


「まぁ妥当なところだろうね。現状、会える可能性があるとしたら間宮さんくらいだろうし。」

莉緒の同意にそれぞれが頷いていた。


「で、それよりもひかりん~。唯志とはどうなの~?」

そのまま莉緒は、ニヤニヤしながら前の話に戻った。

「だから、そんなんじゃないんだってば!」

光は顔を真っ赤にしながら否定した。


「えー、でもほら、ちょうど良い相談材料もあるんだし、これを口実に誘っちゃえばー?」

莉緒は相変わらずニヤニヤしながら光を茶化している。

「もー!私は真剣なのにー!」


そして今日の話し合いは、そのまま女子トークの流れとなっていた。


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一方、自室に籠っている拓哉。

ほんの少し、女子たちのきゃっきゃっしている声が聞こえるが、話が聞き取れるほどではない。


拓哉はというと野村とオンラインゲームをしながらskypoで通話をしていた。


「って言う感じで、近いうちに集まれる人みんな集めて作戦会議するんだって。」

拓哉も野村に近況を話していた。

「へぇ~。いよいよ一般人にはついていけない話になってきたな。光ちゃん、映画とかの主人公みたいだね。」

「そう思うよね。」

拓哉は「はぁ」とため息をつきながら相槌を打った。


「で、どうするのお前。協力するんだろ?」

野村は拓哉の意向を伺った。

「もちろん出来ることは何でも。でも俺に出来ることあるのかな?」

「やってみないとわからないんじゃね?」

楽観的な野村らしい意見だった。


「・・・それとさ、気になってることがあって。」

拓哉は何か口が重そうに暗い声で話を続けた。

「気になってること?何?」

野村は特に心当たりが無い様で、そのまま聞き返した。


「もしさ、未来が変わったとしたら、光ちゃんってどうなるんだろ?」

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