第73話 勘違いのセレナーデ3

数日前。

とあるSNSアカウントでの出来事。


----


大輔@禿 @tigers_winner

返信先: @shinya_0909さん

目線隠しててもわかる。

彼女さんめっちゃ可愛いでしょ?


柚姫 @yuzuyuzu_love

返信先: @shinya_0909さん

なんか仲良さそう(´▽`)

良いなー(´▽`)


謙太 @kennta_1218

返信先: @shinya_0909さん

馴れ初め詳しく。


オシリス @osiris2009

返信先: @shinya_0909さん

ハメ撮りちゃうんかーい。

頼むぜ、兄貴。


無残な住人 @neet_samurai

返信先: @shinya_0909さん

はいはい、勝ち組アピール。


木田隊長 @commanderkida

返信先: @shinya_0909さん

俺も恋してえええええええええええええええ


----


投稿した写真。

効果はテキメンだった。

皆が羨ましがっている。


まぁ俺はそこら辺のアホとは違うからな。

ちゃんと目線にボカシも入れた。

光ちゃんはそれでもわかるほどの可愛さだから問題ないだろう。


今現在彼女ではないが、まぁこのアカウントでつぶやく分には問題ない。

どうせバレない。

それに近い将来そう言う関係になるわけだから良いはずだ。


----


そう思っていたのが数日前。

この写真をアップしてからは結構な日数が経過したが、進展がない。

進展がないだけならまだいいが、この所yarnの返事すらない。


あり得ない。

吉田とは同棲しているにもかかわらず、俺に返事が無い。

吉田が上手いことてごめにしたんだろうか?


だが『客観的』に考えた場合、吉田よりも俺を選ぶべきだろう。

吉田が勝っている部分など無いわけだから。


万が一、そういう間違いが起こっているなら正さなければならない。

何故なら、やはり俺の方が優れているのだから、だ。

吉田よりも俺を選ぶべきだと『わからせる』必要がある。

・・・多少強引な手を使っても。


そう、世の中は優秀な男に女が群がるべきだ。

いや、男女問わず群がってくるだろう。

辻本マネージャー然り、大学の頃の克己や唯志もそうだ。

優秀な人間には自然と人間が集まってくる。

そして、今まさに俺がその優秀な人間になっているはずだ。


この前会った吉田は変わっていなかった。

大学の頃のままだ。

なら自然現象として選ばれるのは俺のはずだ。


いわば俺は自然の摂理を正すだけだ。


--そうだ。

次の休みだ。

決行はそこにしよう。


----


シンヤ@勝ち組ですまん @shinya_0909

今度の水曜日は休みだし彼女にサプライズをしようw

ビックリさせて、親密度アップ!

夜は寝れなくなりそうだ( ̄ー ̄)ニヤリ


----


SNSで決意表明とも言えるつぶやきを投稿した。

また『負け組ども』の羨ましがる返信が連打されるだろう。


場合によっては画像をおすそわけしても良いな。

負け組どもにも多少は餌をやるのが勝ち組の務めだからな。


さて、そうと決まれば水曜日の為の計画を練るか。

まぁ普通に考えて、吉田より俺の方がいかに優れているかを話せば終わるだろうな。

その後はお楽しみなだけだ。


--もしわからない様なら、『わからせればいい』。

俺はその辺のアホとは違う。

弱みもわかっている。


優しくしてダメなら、力ずくいけば良い。

俺についてくる方が幸せなはずだから何も問題は無い。


------


宮田の妄想はエスカレートしていた。

妄想の中で自分>>>拓哉が成立し、光は自分にこそ相応しいと思い込んでいた。

そして、ライバルは拓哉だから楽勝だと思っている。


なのにこの所yarnの返事が無い。

(唯志の指示によるものだが。)


この事が宮田の妄想を更にエスカレートさせ、暴走気味になっていた。


ストーカーとはこういう心理で生まれるのだろうか。

今の宮田はストーカーと同じような考えに至っている。

正直なところ危ない兆候だ。

この状況を唯志は想定出来ているのだろうか。


------


宮田は考えた。


こういう時こそ冷静に考えるのが勝ち組ってもんだ。


既読は付く。

と言うことは意図的に『無視』している。

今までの光ちゃんの反応から、急に返事をしなくなるってのは考えづらい。

俺の好感度も高くなっていたはずだ。


と言うことは--


『誰かが入れ知恵をしている可能性がある。』


間違っても俺が嫌がられて無視されているということは無いはずだ。

なら必然的にそうなる。


つまり、『吉田』だろう。


同居しているとなると、同居人のyarnの頻度くらいわかるはず。

覗き見る機会も必然的に起こり得るだろう。


そして、居候と言う弱い立場を利用して返事をしないように指示した。

こんなところか。


なに、それでも計画は変わらない。


光ちゃんに『わからせて』、こっちのものにすれば良い。

必要であれば吉田のやつもついでに『わからせて』やる。


結局のところやることは変わらない。


やはり決行は次の休み、明後日の『水曜日』だ。


------


宮田の自分勝手な考えはさらに加速し、危険水域に達している。

明らかに冷静ではなく、明らかに妄想の世界に憑りつかれている。


標的はあくまで光だが、拓哉のことも邪魔をする奴くらいの認識になっていた。


現在は月曜日。

宮田が『何かを決行』するのが水曜日。


誰しもが考えていたよりも宮田の暴発は早く訪れることになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る