第58話 時妻村2

間宮が呼び鈴を押すと、すぐに応答があった。

「はい、西条でございます。」

「大阪から来ました記者の間宮です。御当主の西条御子様に面会でアポイントを取っています。」

「どうぞ、お入りください。」

そう言うと、大きな門が開いた。


中に入ると使用人らしき人が待ち受けていた。

「こちらへどうぞ」と言われ、拓哉たちは案内されるがまま入口まで歩いた。


大きな玄関から入ると、中には西条御子が待ち受けていた。

今回は最初からギャルっぽい格好だ。

「よくきた!待っておったぞ!さぁ入れ!客間に案内するのじゃ!」

御子が使用人に指示をすると、今度は屋敷内の使用人が拓哉たちを客間に案内した。


前に来たときはハラハラしていたので感じなかったが、門から客間まで歩くだけでも十分ほどかかる。

どんだけ広いんだよ、この屋敷は。


客間で腰かけると、前回同様高級そうな洋菓子と冷たい飲み物が出てきた。

全然話は変わるけど、ノムさんの実家もこんな感じなんだろうか?

流石にここまでの金持ちではないと思うが・・・


しばらくすると御子が現れ、六人が座る正面に腰掛けた。

初対面もいるので自己紹介をした。

「莉緒に恵に唯志か。覚えたで。」

(・・・どうでも良いが、俺は吉田で、岡村君は唯志呼びなのか?)

「で、今回は大所帯で何の話や?前みたいに話を聞きたいだけか?」

と御子が間宮に質問した。

その辺りは詳しく話さずにアポイントを取っていたらしい。


「僕個人としては霊能力のことをもっと詳しく聞きたいけど・・・」

「あかんな。それは光の秘密と交換じゃ。」

間宮は苦笑いをしていた。

「と言うことだよ、唯志君。どうする?」

と、間宮は唯志に話を振った。


「そうですね。西条さん、俺から話をしても良いですか?」

と、珍しく唯志が年下にフランクな敬語で話している。

「ええで。あと、歳も近そうだし御子でええで。敬語も要らんし。他の人らも。」

(いや、女性をいきなり下の名前で呼び捨て出来ないって!)

と拓哉は要らぬ突っ込みをしていた。

「んじゃ、御子。俺から聞きたいのは山田ってやつを保護していた時の詳細。それと霊能力の詳細。」

唯志は平気で呼び捨てにしていた。

「じゃから、霊能力は・・・ん?」

そう言うと御子は唯志をじーっと見つめた。


「ふむ」

続けて、莉緒と恵も見つめる。

前に拓哉たちにしたことと同じだ。


「なるほど。唯志と莉緒は付き合ってるんやな?」

御子がそう言うと、全員がギョッとした。

正確には唯志以外が。

「へぇ。見ただけでわかるの?」

唯志は平然と聞き返していた。

これにも全員が驚いた。

「せや。莉緒と恵。あんたらは『普通』やな。特に面白くなさそうや。」

これには莉緒と恵がそれぞれぶーぶー言っていた。

「ただ、唯志。あんたちょっと面白そうやな。」

御子はそう言うと不敵な笑みを浮かべた。


「ん?俺には特に特殊な生い立ちも能力も無いぞ。見間違いじゃね?」

と唯志が言うが、

「そうやな。光のとは違う。『存在』が面白そうなんじゃなくて、あんたの『生き方』が面白そうって思ったんじゃ。」

何を言っているか、唯志を除く全員が意味不明だった。

「・・・それも『色』ってやつを見てわかったのか?」

「せやで。」

ますます意味不明だった。

誰かわかるやつがいたらここにこい。そして代われ。


「ふーん。じゃあ俺が何かしら『話せば』、霊能力とやらを教えてくれる?」

「いや、話す必要はない。見ただけでわかった。それにあんたは話しても『信じない』やろ?」

そう言って御子がまたも不敵に笑った。

そして唯志も同じく不敵に笑った。

こいつらの中で何かが通じ合ったのか?


「おもろいな。こんな複雑な『色』の人間もおるんか。唯志は観察しがいがありそうじゃ。ええで、霊能力について教えたる。」

御子の中で何に納得して話す気になったのかわからない。

でも、どうやら前進したようだ。

唯志はここまで計算していたのだろうか。


「あー、それだけど。そもそも霊能力ってなに?その色を見るってやつがそう?」

「色が見えるのは別やな。まぁうちの能力のついでの様なものじゃ。」

ついでの能力ってなんだ?と拓哉は思った。


「それって共感覚とは違うのか?」

と唯志は聞いた。

「あー、共感覚!確かにそれっぽい!」

恵が思わず声を出した。

間宮や莉緒も何か納得したような表情をしていた。

「共感覚・・・?」

光は頭にはてなが出ていた。


「いろんなものに色がついて見えるって能力のことだよ。稀にそう言う人がいるらしい。人を見たらその人が色で見えて、色々わかるとかなんとか・・・」

拓哉が光に説明した。

「あー、なるほど!それっぽいね!」


「まあ、近いんやけど、ちょっとちゃうかな。」

御子はあっさり否定した。

「うちのはもっと複雑に色々見える。その人の性格や生い立ち、考えてることも全部色に出る。でも複雑すぎて細かくはわからへんけど。」

「なるほどね。だから考えてることや、俺と莉緒が付き合ってるとかも見ただけでわかったわけね。」

「そうじゃ。お主が何か企んでそうなのも筒抜けだぞ。」

そう言って御子はまたも不敵に笑っていた。

唯志は平然としているが。


「でもそれじゃあ霊能力とは言えないよね。本命の能力はやはり霊が見えたり、祓えたりするのかい?」

間宮が興味津々で食いついてきた。

「いや、それは無いでしょう。霊なんていないんですし。」

何故か唯志が否定した。

「ちょっ、お前!」

拓哉はこの物言いは流石にまずいと思い、唯志の発言を制止しようとした。


「いや、唯志の言う通りじゃ。霊なんていないぞ。」

しかし、唯志を肯定したのは他でもない御子だった。

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